一般社団法人 Tree Care Safety Association

樹木とともに働く人の、
安全を、文化に。

わたしたちは、規則を押しつけるのではなく、現場の実践者が自らの意思で安全を選び取れるように。国際基準(ISO・ANSI・EN)と日本の法令、そして現場の実情を橋渡しする、独立した安全基準づくりを担う協会です。

ガイドラインを採用頂いている組織 中部電力パワーグリッド JR東海 日本造園組合連合会 日本造園建設業協会 全国1級造園施工管理技士の会 アーボリストトレーニング研究所 主要インフラ事業者 自治体・林業事業体
わたしたちの規模の捉え方

会員数ではなく、
守られる人の数で。

多くの団体は、会員数をもって社会的な影響力を示します。しかしTCSAは、会員を募る団体ではありません。わたしたちの価値は、いくつの名前が連なったかではなく、わたしたちの基準によって何人の安全が守られているか──その一点にあります。

ひとつの組織がガイドラインを採用すれば、その従業員、そして現場をともにする下請事業者にまで、同じ安全基準が行き渡ります。さらに業界団体が採用すれば、傘下の会員企業と、そこで働く一人ひとりへと広がっていく。採用は、点ではなく面となって、人々の安全につながります。

だからこそわたしたちは、自らの規模を「会員数」ではなく「基準が関わる現場で働く人の数」で捉えます。それは、わたしたちがどれだけ大きいかではなく、どれだけ多くの人の安全に責任を負っているか、を意味します。

採用は「点」ではなく「面」で広がる

ひとつの採用が、層を越えて働く人の安全につながります。

1
ガイドラインの採用
起点となる、ひとつの組織・団体。
影響の広がり
2
採用組織で働く従業員
組織内のすべての働く人に、同じ基準が及びます。
3
現場をともにする下請事業者
元請の基準が、協力会社とその従業員にも共有されます。
4
業界団体の会員企業と従業員
団体が採用すれば、傘下の会員企業全体へと波及します。
わたしたちの活動

3つの柱で、業界の安全を支えます

基準づくりから、現場への定着、人材育成まで。樹木作業の安全を一気通貫で支える体制を整えています。

01

安全ガイドラインの策定

ワークポジショニングをはじめ、樹木作業に特化した安全基準を独自に策定。国際規格と国内法を踏まえた実用的な指針を提供します。

02

TCSA企業認定プログラム

安全管理規程やリスクアセスメント、救助計画の整備を支援し、企業としての安全管理体制を第三者として評価・認定。一人親方から事業者まで、現場に合わせた体制づくりに伴走します。

03

セミナー・講習の運営

搭乗設備や高所作業に関する実務セミナーを開催。ガイドラインを正しく運用するための知識と技術を、体系立てて学べます。

なぜ、独立した協会なのか

特定の企業に依らない、
中立の安全基準を。

安全基準は、誰かの都合で曲げられてはなりません。TCSAは独立した一般社団法人として基準を保有・管理し、インフラ事業者をはじめとする組織に採用いただいています。だからこそ、現場の人を第一に考えた基準を貫けます。

  • ✓米国の統計では、樹木作業を含む職種の死亡率は全産業平均の4〜5倍 ── この現実に正面から向き合います。
  • ✓ISO・ANSI・EN の国際枠組みを、日本の法令と現場に翻訳します。
  • ✓一人親方にも届く「理想」と「最低限」の二段階基準を示します。

出典:米国 Tree Care Industry Association(TCIA)の機関誌 Tree Care Industry Magazine(2023年4月号)掲載記事「Tree-Work Safety by the Numbers」。同記事によれば、全産業の死亡率が(フルタイム換算)10万人あたり通常3.4〜3.8であるのに対し、造園・樹木維持関連職種(樹木作業を含む)をまとめた推計では、年間約17に達し、全産業平均の4〜5倍とされています。米国の死亡率の統計であり、日本の統計(死傷年千人率)とは、対象・指標が異なります。

Our Principle

安全は、
守らされるものではなく、
選び取るもの。

外から課されるルールとしてではなく、現場の一人ひとりが「自分のために」選ぶ。そんな自発的な安全文化を育てることが、わたしたちの一貫した設計思想です。

安全体制づくり、ご相談ください。

基準の導入から現場への定着まで。貴社・貴団体の状況に合わせて、最適な進め方をご提案します。

About TCSA

樹木作業の現場に、
確かな安全基準を根づかせる。

一般社団法人 Tree Care Safety Association(樹木作業安全協会/TCSA)は、樹木を扱う高所作業の安全を専門に扱う、独立した基準策定団体です。安全ガイドラインの策定、企業コンサルティング、セミナー運営を通じて、業界全体の安全水準の底上げを目指しています。

「規則だから守る」ではなく、「自分の身を守るために選ぶ」。その文化を、現場とともに。
協会概要

団体について

名称
一般社団法人 Tree Care Safety Association(樹木作業安全協会/TCSA)
事業内容
安全ガイドラインの策定・管理/企業向け安全コンサルティング/セミナー・講習の運営
保有基準
ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン ほか
採用・連携
中部電力パワーグリッド、JR東海、一般社団法人日本造園組合連合会、一般社団法人日本造園建設業協会、全国1級造園施工管理技士の会、アーボリストトレーニング研究所 をはじめとするインフラ事業者・業界団体・自治体・林業事業体
所在地
岐阜県高山市 地内
設立目的
特定の企業に依らない中立的な立場から、樹木作業の安全基準を策定・普及し、自発的な安全文化を育てること。
Code of Ethics

倫理規程

倫理規程の対象者が共有すべき、基本的な価値観と行動規範。「安全は外部から押し付けられるコンプライアンスではなく、作業者一人ひとりが自分の安全のために自発的に内在化するもの」という理念を基盤に、前文と全9章34条で構成しています。

9つの章
  • ✓生命と安全の尊重(安全の最優先・作業停止権・危険の共有)
  • ✓専門性と技術の向上(継続的学習・科学的根拠に基づく実践)
  • ✓誠実な事業活動/元請・下請の関係/社会に対する責任
  • ✓TCSA認定企業の義務/違反と措置

協会の取り組みを、もっと詳しく。

ガイドラインの内容や、コンサルティング・セミナーについてご案内します。

Guidelines

現場で使える、
確かな安全ガイドライン。

TCSAは、樹木作業に特化した安全基準を独自に策定・保有しています。国際規格と日本の法令を統合し、現場の実情に即した実用的な指針として整備しています。

Flagship Guideline

ワークポジショニング
(樹上作業)ガイドライン

TCSAが著作権を保有する中核ガイドライン。ANSI Z133 の規定を取り入れつつ、高所作業の基準高さを日本の法令(2.0m)に合わせて整備。中部電力パワーグリッド、JR東海をはじめとする主要組織に採用されています。

特徴
  • ✓樹上作業に特化したガイドライン。
  • ✓感電防止のための離隔距離を、国内法・電力各社の推奨・ANSI Z133 と照合。
  • ✓「理想」と「最低限」の二段階で、一人親方も無理なく取り組める設計。
  • ✓自然物である樹木をアンカーとして使用する際の選定・点検。
Comprehensive Protocol

樹木作業における
安全プロトコル

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドラインを加えた、現地事前調査から緊急時対応、装備・点検・廃棄・保管、作業方法の選定、ロープクライミング、高所作業車、ハシゴ、電気の危険認識まで——樹木作業の全工程を一つに体系化した、全14章の総合プロトコルです。

構成
  • ✓事前調査・緊急対応・ジョブブリーフィング・事前準備。
  • ✓必要装備、点検・廃棄基準、保管管理。
  • ✓作業方法選定、ロープクライミング、高所作業車、ハシゴ。
  • ✓電気の危険認識(MAD・通電線レベル区分・感電対応)。
Specialized Guideline

移動式クレーンによる
専用の搭乗設備使用
(樹木作業)ガイドライン

移動式クレーンのつり具に専用の搭乗設備を設けて作業を行う場合の安全要件を定めたガイドライン。高所作業車では対応できない現場に向けた、専門性の高い基準です。

原則禁止 事業者は、移動式クレーンにより労働者を運搬し、又はつり上げて作業させてはならないことが原則です。本ガイドラインは、やむを得ない場合に有識者の判断のもとで例外的に行う際の安全要件を示すものです。

本ガイドラインに基づく「移動式クレーンによる専用の搭乗設備使用(樹木作業)セミナー」を開催しています。適用条件の判断から具体的な防止措置まで、実務に即して体系的に学べます。セミナーの詳細はこちら →

適用の前提
  • ✓適用は「やむを得ない場合・安全な作業の遂行上必要な場合」に限定。
  • ✓適用条件は、樹木と搭乗設備に通じた有識者が判断。
  • ✓バックアップ措置・重量制限・離隔距離など19項目の防止措置を規定。
  • ✓クレーン等安全規則・ANSI Z133-2017 を参照。
Equipment Guideline

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足樹上作業における
頭部保護具

樹上作業における頭部の傷害を防止するため、着用すべきヘルメット等の要件を「推奨・標準・最低」の三層で定めたガイドライン。側面衝撃やあごひも保持力、夏季の通気性まで踏み込んでいます。策定の根拠を整理した解説も併せて掲載しています。

利用届不要 このガイドラインの使用は自由です。利用届の提出は必要なく、会社・団体・個人を問わず、どなたでもそのままご活用いただけます。
三層の要求水準
  • ✓推奨 ── あごひも保持力・側面衝撃まで含めた、登攀作業に最適化された保護性能(EN 12492 / ANSI Z89.1)。
  • ✓標準 ── 樹木作業の一般的な場面で求められる十分な保護性能(ANSI Z133-2017 / JIS T 8131)。
  • ✓最低 ── 法令上、最低限満たすべき産業用ヘルメットの要件(型式検定合格品)。
  • ✓策定の根拠(規格体系・固有リスク・国際規格比較)を解説として収録。
Equipment Guideline

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足樹上作業における
ポジショニング用
ランヤード

作業位置を保持するポジショニング用ランヤードの長さ・構造・運用要件を定めた補足ガイドライン。樹幹の周長が JIS の3,000mm制限を超えやすい実態を踏まえ、長さの一律上限を設けず、自由落下距離60cm以下で管理する考え方を示します。

利用届不要 このガイドラインの使用は自由です。利用届の提出は必要なく、会社・団体・個人を問わず、どなたでもそのままご活用いただけます。
要点
  • ✓長さの一律上限を設けない ── 樹幹の周長・作業位置に応じ、常に支持される範囲で必要最小限に調整。
  • ✓自由落下距離は60cm以下 ── ANSI Z133-2017 と整合。墜落時の衝撃荷重を抑制。
  • ✓末端の抜け止め・伸縮調節器・コネクタの強度(JIS T 8165:2018)を要件化。
  • ✓ダブルプロテクションの原則 ── 単独使用せず、別系統のクライミングシステムを併用。
Equipment Guideline

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足版高所作業車のバケット内作業における
レストレイント(接近防止)保護具

高所作業車のバケット内作業で、墜落そのものを起こさないレストレイント(接近防止)が、フォールアレスト単独運用より安全であることを、安衛則第百九十四条の二十二の趣旨に即して整理した補足版。許容される保護具を安全性の序列で示します。

利用届不要 このガイドラインの使用は自由です。利用届の提出は必要なく、会社・団体・個人を問わず、どなたでもそのままご活用いただけます。
要点
  • ✓レストレイントを優先 ── 墜落そのものを起こさないため、フォールアレスト単独運用より安全。
  • ✓FA単独運用の4リスク ── 地面激突・中吊り(サスペンショントラウマ)・感電・スイングバックを根本から低減。
  • ✓保護具の序列 ── 第一順位フルハーネス(胸・背アタッチメント)、第二順位WP用保護具。
  • ✓成立条件を明示 ── 命綱長・アンカー位置・22.2kN強度等。条件を欠く場合はFA構成へ。
Equipment Guideline

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足樹上作業における
ワークポジショニング用保護具

作業位置を保持するワークポジショニング用保護具(胴ベルト・ランヤード・伸縮調節器・コネクタ等)の選定と性能要件を定めた補足。墜落制止用器具を予定しない理由を整理し、JIS・EN・ANSI Z133 を比較したうえで TCSA 推奨の最低基準を示します。

利用届不要 このガイドラインの使用は自由です。利用届の提出は必要なく、会社・団体・個人を問わず、どなたでもそのままご活用いただけます。
要点
  • ✓安定姿勢が目的 ── 作業位置の保持用であり、墜落制止には使用しない。
  • ✓墜落制止を予定しない理由 ── ISO 22846はアーボリカルチャー適用外、生立木は ISO 14567 の強度証明ができない。
  • ✓規格比較表 ── JIS・EN・ANSI Z133 を部位別に比較し、TCSA推奨の最低基準を提示。
  • ✓海外製品の取扱い ── EN358/ANSI Z133適合品は措置義務の枠内・国内同等以上の性能で採用可。
Equipment Guideline

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足SRS(Stationary
Rope System)
ベストプラクティス

SRS(ステーショナリーロープシステム)に固有の事故を防ぐためのベストプラクティス。「システムを設計する → 切断・無確保・救助に備える → チームで守る」の3章構成です。SRSでは、アンカーとする木の健全性の見極めが、とりわけ重要になります。「木を読む」評価の内容は、共通の安全プロトコル第2章に定めています。SRSに取り組む前に、必ずご確認ください。

利用届不要 このガイドラインの使用は自由です。利用届の提出は必要なく、会社・団体・個人を問わず、どなたでもそのままご活用いただけます。
要点
  • ✓SRS固有の力学 ── 荷重の合力方向、衝撃荷重の増大、動力式システムの使用条件。
  • ✓切断・無確保・救助 ── 2本とも命綱、回収側とクライミング側の峻別、「先に付けてから外す」、全員が降下操作できること。
  • ✓チームで守る ── グラウンドワーカーの「第三の目」、独立チェック、コマンド&レスポンス。
関連文書・制度

ガイドラインを支える仕組み

以下の活動によってガイドラインを皆さんの安全へと繋げます。

01
利用届制度 提出はこちら →
著作権者であるTCSAと、ガイドラインを採用する組織との関係を明確にする届出制度。会社・団体での利用時は提出が必要です(個人は不要・届出料無料)。
制度
02
ガイドラインに基づく安全作業のための各種セミナー開催
移動式クレーンによる専用の搭乗設備使用(樹木作業)セミナー、ワークポジショニング基礎講習、樹木評価モジュール(一次スクリーニング)セミナー、電気危険認識セミナー
講習
03
TCSA企業認定プログラム 2028年運用予定
ガイドラインを、樹木安全作業へ繋げられている企業認定です。TCSA企業認定プログラムは2028年から運用予定です。関心をお持ちの方は、お問い合わせよりご連絡ください。
認定
04
樹木に関する安全教育への参加
樹木に関する安全教育へ伺っております。
教育

ガイドラインの導入をご検討ですか?

会社・団体でのご利用には利用届の提出が必要です(個人は不要・届出料無料)。運用方法のご相談も承ります。

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Full Text / 2026年9月改訂版

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン

本ガイドラインは、国内法令上の明確な規定が存在しない樹冠内作業(ワークポジショニング)について、現場の安全水準を自主的・実質的に向上させることを目的として作成・改訂されたものである。

(一社)Tree Care Safety Association((一社)樹木作業安全協会)

第1 趣旨

高さ2メートル以上の箇所で作業を行う場合には、作業床を設け、その作業床の端や開口部等には囲い、手すり、覆い等を設けて墜落自体を防止することが原則であるが、こうした措置が困難なときは、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等、墜落による労働者の危険を防止するための措置を講ずることが事業者に義務付けられている。

平成28年1月1日から施行された「ロープ高所作業における危険防止を図るための労働安全衛生規則の一部を改正」、平成31年2月1日から施行された「墜落による労働災害の防止を図るための労働安全衛生規則の一部を改正」と相まって、U字つりで行うワークポジショニング作業における一層の安全対策の推進を図るため、重要なものを一体的に示すことを目的とし作成したものである。

本ガイドラインは法的拘束力を持つものではないが、ISO22846、ANSI Z133、JIS T 8165等の知見を踏まえ、現場における自主的安全管理の基準として機能することを意図している。

事業者は、本ガイドラインに記載された事項を的確に実施することに加え、より現場の実態に即した安全対策を講ずるよう努めるものとする。

第2 適用範囲

本ガイドラインは、ワークポジショニング用器具を使用して行う樹木に関する作業について適用する。

第3 用語

1 ワークポジショニングシステム

ロープ等の張力により、U字つり状態等で安定姿勢を保ち、両手を自由に使用して作業を行うことを可能とするための機構。樹冠内作業の主たる作業形態。

2 ロープアクセスシステム

吊られた状態で作業箇所に移動するための機構。「ロープ高所作業」が含まれ、労働安全衛生規則上の特別教育義務が課される。樹木作業(樹冠内作業)はロープアクセス技術を使用するが、ロープアクセスシステムには該当しない(ISO22846)。

3 レストレイントシステム

墜落の危険のある個所に接近しないように移動範囲を制限するための機構。

4 フォールアレストシステム

墜落する作業者を捕捉し墜落距離を制限するための機構。自然物アンカーへの衝撃荷重の問題から、樹木作業では原則として選択しない。

5 樹木に関する作業を構成する部品

  1. ワークポジショニング用器具(通称:アーボリストサドル、ツリーケアハーネス)── ワークポジショニング作業に使用される身体保持用の器具。腰部及び腿部等において身体の作業位置を保持する構造器具で構成される。胴ベルト型は含まない。
  2. ワークポジショニング用ロープ(通称:ポジショニングランヤード)── 幹や枝等に回しがけするロープ等で、伸縮調節器を用いて調整したロープ等の張力によってU字つり状態で身体の作業位置を保持するためのもの。
  3. 伸縮調節器 ── ワークポジショニング用ロープの長さを調節するための器具。
  4. 補助ロープ(通称:バックアップロープ)── ロープを掛け替える際、また、安定姿勢の確保や墜落防止に使用するロープ。
  5. 移動ロープ(通称:メインロープ、クライミングライン)── 樹上作業で使用される、幹・枝等に設置されたロープ。MRS(Moving Rope System)とSRS(Stationary Rope System)に大別される。
  6. カラビナ ── 器具とロープ等を接続するための環状の接続器具。
  7. スナップ ── ワークポジショニング用ロープをワークポジショニング用器具の側部アタッチメントに接続するための接続器具。

第4 作業システムの分類・選択

1 基本的な考え方

作業システムは、最も安全性の高いシステムを選択もしくは併用すること。木の股等の自然物をアンカーポイントとして使用する場合、強度保証が困難であるため自由落下距離を限りなくゼロにする(潜在的な墜落距離を抑える)システムが有効である。アンカーポイントに衝撃荷重が加わるシステムは原則として選択しない。

2 作業システム別分類・使用保護具一覧

作業システム主な適用場面使用保護具衝撃荷重特別教育(安衛則)
ワークポジショニングシステム樹冠内作業、崖の樹木作業ワークポジショニング用器具加わらない(原則)不要(規定なし)
ロープアクセスシステム壁面緑化作業、崖の樹木作業(ロープ高所作業)要求性能墜落制止用器具(フルボディハーネス)加わる可能性あり必要
レストレイントシステム高所作業車使用時等レストレイント用機能付保護具加わらない(原則)不要
フォールアレストシステム足場周辺の移動時等(樹木作業では原則不選択)要求性能墜落制止用器具(フルボディハーネス)加わる必要

樹冠内作業はISO22846の定義においてロープアクセスシステムとは区別される。そのため、現行の労働安全衛生規則上の「ロープ高所作業特別教育」の対象外となる。樹木作業におけるワークポジショニング(幹・枝を主要支持、ロープは補助や墜落防止)とは技術的前提が異なる。ただし骨格原則は、樹木作業にも横展開可能な普遍性を持っているため、「ロープ高所作業特別教育」の受講とともに、本ガイドラインに基づく自主教育の実施を強く推奨する。

3 選択の原則

  1. 最も墜落距離が小さくなるシステムを優先的に選択すること。
  2. 複数のシステムを組み合わせ(併用)、リスクを多重に管理すること。
  3. 作業時は、ロープ切断リスクを考慮した補助ロープを必ず追加すること。
  4. 地上2.0m以上の作業では第二の樹上作業者(または訓練を受けた作業者)を視覚・音声の届く範囲に必ず配置すること(労働安全衛生規則・ANSI Z133準拠)。単独作業は高さにかかわらず推奨しない。
  5. アンカーポイントは毎作業前に目視および荷重点検を行い、疑義がある場合は作業を中止すること。
  6. 作業前のリスクアセスメントを書面で実施し、リスク低減措置を全員で共有すること。

第5 作業開始前の確認義務・ジョブブリーフィング

作業者等が作業範囲内に入る・樹木に登る・作業を開始するいかなる前においても、担当者は樹木および周辺環境の危険を確認しなければならない。これは義務的要件であり、本ガイドラインもこれに準じる。

1 作業前樹木・現場確認

作業者等が作業範囲内に入る・樹木に登る・作業を開始する前に、以下を必ず実施すること。

  1. 樹木全体の構造的欠陥や危険因子(腐朽・空洞・亀裂・懸垂枝・枯れ枝・傾斜等)を地上から目視で確認すること。樹木及び力学に関する知見を有する者が現場で行う簡易評価(一次スクリーニング)を実施すること。
  2. 周辺環境の危険(架空線・隣接建物・傾斜地・軟弱地盤・第三者立入等)を確認すること。
  3. 樹木の状態に疑問・懸念がある場合は、より詳細な評価(樹木医診断等)が完了するまで作業を開始してはならない。専門家へのエスカレーション要否を判断すること。
  4. 確認結果はジョブブリーフィング(第2項)で全作業員に共有すること。

2 ジョブブリーフィング(作業前ミーティング)

作業開始前に、担当者は全作業員を集めてジョブブリーフィングを実施し、情報の共有、伝達をしなければならない。ブリーフィングの内容は書面に記録・保管することを推奨する。

必須項目内容・留意点
現場の既知の危険情報樹木確認で把握した構造的欠陥・周辺危険の全員共有。「知っていたが伝えなかった」は許容されない。
作業手順・役割分担各作業員の担当範囲・順序・合図方法を明確にすること。
使用器具・PPEの確認全員の器具装着状態・点検完了を相互確認すること。
緊急時対応手順救助手順・緊急連絡先・退避経路を全員が把握していること。
作業中止基準風速・降雨・気温・樹木の異常や、作業手順からの逸脱、作業員の健康状態等、作業を中止する判断基準を事前合意しておくこと。

PPE(Personal Protective Equipment):個人用保護具

3 第二樹上作業者(バディ)配置要件

日本の労働安全衛生規則では地上2.0m以上を高所作業と定めており、本ガイドラインはこれを基準とする。地上2.0m以上の高さで作業を行う場合、第二の樹上作業者または訓練を受けた作業者が、視覚または音声で連絡が取れる範囲に配置されていなければならない。

  1. 高さ2.0m以上の作業:第二の樹上作業者(または訓練を受けた作業者)を視覚・音声の届く範囲に必ず配置すること。
  2. 第二樹上作業者は、作業者の状態を常時把握し、異常を認知した場合は即座に救助・緊急対応を開始できる状態にあること。
  3. 第二樹上作業者は、地上の安全管理(立入禁止区域の確保・第三者への対応)も担うこと。
  4. 視覚・音声での連絡が困難な状況(樹冠の繁茂・騒音等)では、無線機等の通信手段を補助的に使用すること。
  5. 単独作業は、地上2.0m未満であっても原則として推奨しない。

第6 ワークポジショニング作業に使用される器具の基本的な考え方・使用

1 基本的な考え方

  1. ワークポジショニング用器具は側部アタッチメント(D環)と腹部アタッチメントの両方を備えたものを使用すること。胴ベルト型は身体保持性能・墜落時の負荷分散の観点から不適であり、使用してはならない。
  2. フルボディハーネス型の要求性能墜落制止用器具がワークポジショニング機能を備える場合は本ガイドラインに準じて使用できる。ただし、「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン(基発0622第2号)」の適用対象外となる。
  3. ワークポジショニング用器具は墜落防止効果を有するが、墜落時に身体への衝撃が大きい。常にバックアップを取り付け、墜落が生じない運用を維持すること。
  4. MRS(Moving Rope System)とSRS(Stationary Rope System)の特性を理解し、作業内容・樹形・リスクに応じて適切な形態を選択すること。
  5. 常時1本以上のロープに張力をかけた状態を維持すること。移動時・ロープ掛け替え時も最低1本のロープで身体を保持し続けること。

2 ワークポジショニング用器具の使用

(1)装着

  1. 取扱説明書を確認し、安全上必要な部品がすべて揃っていることを確認すること。
  2. 腰骨の近くで安定姿勢が確保できるよう、緩みなく確実に装着すること。
  3. バックルは正しく使用し、ベルト端をベルト通しに確実に通すこと。誤装着防止のためワンタッチバックル等の採用を推奨する。
  4. 伸縮調節器を側部・腹部アタッチメントに正しく装着し、外れ止め装置の動作を確認すること。
  5. 装着後、地上で体重をかけ各部の異常を点検すること。
  6. ロープが垂れ下がらないよう、スナップを側部アタッチメントに掛けるか収納袋に収めること。

(2)アンカーポイントの選定・点検

樹木の自然物アンカーは強度保証が困難なため、以下の基準で慎重に選定・点検すること。

  1. 樹木力学の知見を有する者が目視および荷重点検を実施すること。樹木及び力学に関する知見を有する者が現場で行う簡易評価(一次スクリーニング)を実施すること。
  2. 枯れ枝・腐朽部・空洞部・亀裂のある箇所はアンカーとして使用しないこと。
  3. 直径の目安として、ポジショニング用アンカーは幹・枝直径10㎝以上を基準とする(樹種・状態により要判断)。枝の向き、荷重がかかる方向により幹・枝直径が10㎝以下もあり得ること。
  4. 登攀を開始前に、アンカーポイントにレスキューを想定した荷重がかかった場合でもアンカーポイントが損傷しないことを確認すること。
  5. 強度に疑いがある場合は足場等の堅固な設置箇所を設けること。
  6. 摩擦による損傷リスクがある場合は、プロテクター(樹皮保護・ロープ保護兼用)を使用すること。
  7. 作業中に異常(きしみ・変形・振動等)を感じた場合は即座に退避し、アンカーを再選定すること。

(3)ロープ等の使用方法

  1. 常時1本以上のロープに張力をかけた状態で使用すること。
  2. 原則としてワークポジショニング用器具の取付けアタッチメントより高い位置に設置すること(スイング抑制・落下距離低減)。
  3. 伸縮調節器でロープを必要最小限の長さに調節すること。
  4. 設置の都度、よじれ・枝幹との意図しない干渉がないこと、カラビナが正しく装着されていること、外れ止め装置が機能することを確認すること。
  5. 刃物(チェーンソー・剪定鋸等)使用時は、ロープ切断リスクを考慮した補助ロープを必ず追加使用すること。
  6. 移動時・ロープ掛け替え時は最低1本のロープを維持し、ロープは必要最小限の長さに調節すること。
  7. ロープが炎・高熱・薬品・燃料に触れた場合は即座に使用を中止し廃棄すること。

(4)カラビナ等の使用方法

カラビナは曲げ荷重・外れ止め装置への外力に対して脆弱であることを理解した上で使用すること。外れ止め装置の向きに注意し、ロープが装置に接触しないよう管理すること。

第7 通電導体からの離隔距離・措置

1 通電導体からの離隔距離

電線を含むあらゆる通電導体から安全な離隔距離を保たなければならない。

作業員の身体・ロープ類・ポールソウを含むギア類は、充電電路の充電部との離隔距離を、昭和50年12月17日基発第759号通達に定める値(低圧:1m以上、高圧:1.2m以上、特別高圧:2m以上+電圧加算分)以上とすること。ただし電力会社の管理目標値が別途定められている場合はそれに従うこと。

2 通電導体からの離隔距離確保のための措置

目測上の誤差等により離隔距離内に入ることを防止するために、作業員の行動範囲を規制するためのテープ類の設置や、ロープの移動を制限するため措置を設けることが望ましいが、樹木作業ではこうした物理的な接近防止措置が困難なケースが多いため、電力会社推奨値を実務上の最低基準とすることが望ましい。加えて、樹上作業員が不意に通電導体に接近しないよう電子ホイッスル等を用いた緊急通達体制を保つ等、感電防止措置を徹底すること。

第8 緊急時対応・救助

樹上作業における事故・負傷・意識消失等の緊急事態においては、速やかな通報と現場での適切な初動対応が傷病者の生死を左右する。以下の体制を事前に整備すること。

1 緊急通報(第一義)

緊急事態が発生した場合、消防・救急への速やかな通報を最優先とする。現場での救助活動の可否にかかわらず、まず119番通報を行うこと。

最優先事項事故発生時はただちに119番通報すること。「自分たちで対応できる」と判断して通報を遅らせることは、傷病者の救命率を著しく低下させる危険がある。通報は救助活動と並行して行うこと。
  1. 事故発生後、直ちに119番に通報すること。通報内容:場所・事故の状況・傷病者の人数・意識の有無・作業の高さ。
  2. 通報と並行して、現場でできる応急対応の準備を整えること(救助器具の準備、傷病者への声かけ、地上への誘導準備等)。
  3. 救急隊員が到着するまでの間、傷病者の状態を観察し続け、意識・呼吸の変化を通報担当者に随時伝えること。
  4. 作業現場の住所・目標物を事前に確認し、通報時に正確に伝えられるよう準備しておくこと。

2 現場救助対応

通報と並行して、現場の状況と自己の能力の範囲内で以下の初動対応を行うこと。

  1. 救助手順書(レスキュープラン)を書面で作成し、現場全員が内容を把握していること。
  2. 救助用器具(降下器・プーリー・補助ロープ等)を現場に常備すること。地上まで降下するためのロープセッティングを含む準備がされていることが望ましい。
  3. AEDの設置場所および使用方法を全員があらかじめ確認しておくこと。
  4. 救助訓練を定期的(年1回以上)に実施すること。
  5. 現場の第二樹上作業者は、地上から常時作業者を監視し、異常を認知した場合は即座に救助が開始できるよう準備すること。
  6. 要救助者に意識がある時は、救助について要救助者本人の意向に従うこと。

3 単独作業の理想基準と現実的最低基準(一人親方等への対応)

樹上作業には、救助能力を持つ第二者の同行が推奨される。これが理想基準である。

【理想基準】樹上作業には、救助能力を持つ第二者(第二樹上作業者)の同行が推奨される。第2者は、緊急時に速やかに119番通報および現場救助を実施できる能力を備えていることが望ましい。

ただし、一人親方等、やむを得ず単独で樹上作業を行わざるを得ない場合は、以下のすべての条件を満たした上で作業を行うこと。これは理想基準を代替するものではなく、単独作業に伴うリスクを最小限に抑えるための現実的最低基準である。

現実的最低基準単独で樹上作業を行う場合は、以下の条件をすべて満たすこと。一つでも欠ける場合は作業を開始してはならない。
  1. 【作業開始の告知】地上にいる第三者(施主・隣人・通行人等)に対し、作業開始・作業場所・作業内容・予定終了時刻を告知し、異常が生じた場合に119番通報を依頼しておくこと。
  2. 【緊急連絡手段の確保】携帯電話等により、樹上から直接119番通報が可能な緊急連絡手段を常時携行すること。電波状況を事前に確認し、通話が困難な場合は作業を中止すること。
  3. 【自己救助手段の携行】セルフレスキュー装備(自己脱出・降下用器具)を携行し、その使用方法を習得していること。樹上で意識を失う前に自力で地上に降下できる手段を確保すること。
  4. 【作業前の健康確認】めまい・疲労・体調不良・睡眠不足・飲酒等、判断力・身体能力を低下させる要因がないことを自己確認すること。少しでも不安がある場合は作業を中止すること。

一人親方問題について:日本の樹木作業現場では、単独で作業を行う一人親方が多数存在する。本ガイドラインは、現実を無視した理想論を押しつけるものではなく、現場の実態を踏まえた上で、一人でも多くの従事者が安全に帰宅できることを最優先に考え、現実的最低基準を明示した。従事者は自らの命を守る権利と責任を持つことを認識されたい。

第9 教育・訓練

国内法令上、樹冠内ワークポジショニング作業に係る特別教育の規定は現時点で存在しないが、安全水準の維持・向上のため、事業者は以下の自主教育を実施することを強く推奨する。

教育区分対象主な内容推奨頻度
基礎安全教育新規従事者作業システムの分類と選択、器具の種類・使用方法、法令基礎知識就業前
実技訓練全従事者器具の装着・点検、ロープワーク、アンカー設定、緊急降下・救助年1回以上
リスクアセスメント教育作業責任者危険予知活動、リスクアセスメント書式の作成・活用年1回以上
救助訓練全従事者樹上からの救助手順、緊急降下操作、119番通報手順、AED・応急手当年1回以上
セルフレスキュー訓練単独作業者自己脱出・降下操作の習熟、単独作業時の緊急対応手順年1回以上
器具・技術アップデート教育全従事者新器具・新技術の習得、国内外ガイドラインの改訂内容共有改訂時都度

第10 点検・保守・保管

1 点検

ワークポジショニング用器具等の点検・保守及び保管は、責任者を定める等により確実に行い、管理台帳等にそれらの結果や管理上必要な事項を記録しておくこと。

部位確認項目基準・留意点
ベルト類摩耗・傷・ねじれ・変色・硬化・溶解・紫外線劣化著しい変色・硬化は即時廃棄
縫糸摩耗・切断・ほつれ1本でもほつれがあれば使用停止して要検討
金具類摩耗・亀裂・変形・錆・腐食・コーティング劣化・回転部状態亀裂・変形は即時廃棄
ロープ類摩耗・素線切れ・傷・やけこげ・キンク・変形・変色1年以上使用品は短期間ごとに目視確認。U字つり使用品は特に注意
接続箇所(アイ加工部等)ロープ端末・スプライス部・金具接触部の損傷金具接触部は摩耗進行が早い。入念な点検が必要

2 保守

  1. ベルト・ロープ類の汚れはぬるま湯(必要時は中性洗剤)で洗い、直射日光を避けた風通しの良い場所で自然乾燥させること。
  2. 金具類が濡れた場合は乾いた布で拭き取り、同様に自然乾燥させること。
  3. 金具の回転部・摺動部はメーカー指定に従い注油すること。ベルト・ロープへの油脂付着に注意すること。
  4. U字つり用ロープや腹部アタッチメントのベルト・ロープは摩耗が激しいため、メーカー推奨の方法で交換すること。
  5. 交換部品はメーカーが推奨する仕様・強度が保証されたものを使用すること。

3 保管

次のような場所に保管すること。

  1. 直射日光に当たらないところ
  2. 風通しがよく、湿気のない所
  3. 火気、放熱体等が近くにない所
  4. 腐食性物質が近くにない所
  5. ほこりが散りにくい所
  6. 小動物等の入らない所
  7. 他の工具・資材と区別した専用の収納場所

第11 廃棄基準

  1. 一度でも落下時の衝撃がかかったものは、外観に異常がなくても使用しないこと。
  2. 点検の結果、異常があったもの、摩耗・傷等の劣化が激しいものは使用しないこと。
  3. メーカーが定める使用期限・使用回数を超えたものは廃棄すること。
  4. 化学物質(薬品・燃料・塗料等)に接触したものは、外観に異常がなくても使用しないこと。
  5. 誤使用防止のため使用できない状態(切断・破壊等)にした後、廃棄すること。

参考文献

  • 労働安全衛生規則(ロープ高所作業関連・平成28年改正、墜落防止関連・平成31年改正)
  • 墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン(平成30年6月22日付け基発0622第2号)
  • JIS T 8165:2018(墜落制止用器具)から一部引用
  • ISO 22846 Part 1・Part 2(個人用墜落防止装備 / ロープアクセスシステム)
  • ANSI Z133(Arboricultural Operations – Safety Requirements)参照
  • ISA Best Management Practices: Tree Risk Assessment
  • 資料3 個人用保護システムの分類例から一部引用

改訂履歴

改訂日内容
2019年2月1日初版
2021年10月1日改訂
2022年1月1日改訂
2022年8月1日改訂
2023年3月1日改訂
2024年10月1日改訂
2025年7月1日改訂
2026年4月1日第5(作業開始前の確認義務・ジョブブリーフィング)新設、第8(緊急時対応・救助)を独立章として新設(119番通報の第一義化・単独作業最低条件・一人親方対応を含む)、第9(教育・訓練)新設、アンカー基準・廃棄基準の強化、第二樹上作業者配置要件(2.0m以上)の明記
2026年9月28日改訂

特記事項

1 ガイドラインの準拠と免責

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドラインへの準拠は、すべての状況下における安全を保証するものではない。本ガイドライン作成者である(一社)Tree Care Safety Associationは、発生する可能性のある、いかなる事故においても責任を負わない。

2 著作・使用条件

本ガイドラインの著作は(一社)Tree Care Safety Associationに帰属する。使用は自由とするが、団体・会社での採用時はワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン利用届の提出を要する。内容変更時は事前許可が必要。

連絡先:tcsa-dendro@outlook.com

使用の際は「ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン:(一社)Tree Care Safety Association」を明記すること。

3 改訂

本ガイドラインは適宜改訂されるため、作業前に最新改訂版を確認すること。

補記

1 充電部との離隔距離(参考)

作業員の身体・ロープ類・ポールソウを含むギア類は、充電電路の充電部との離隔距離(参考):

  1. 低圧(100 V・200 V):2 m 以上(通達最低値1 m、電力会社推奨値2 m)
  2. 高圧(6,600 V):2 m 以上(通達最低値1.2 m、電力会社推奨値2 m)
  3. 特別高圧(22,000 V・66,000 V):3〜4 m 以上(電力会社推奨値に従うこと)
  4. 特別高圧(154,000 V 以上):5 m 以上(事前に電力会社と協議のうえ確認した値に従うこと)

なお、送電線の電圧が不明な場合は、作業前に電力会社・鉄道会社に必ず確認すること。懸垂がいしの個数を電圧判別の参考とすることができる。各離隔距離の数値が変わることがあるため、作業前に各自確認すること。

2 懸垂がいしの個数による現場での電圧判別(参考)

電圧懸垂がいし
(目安)
通達
最低値
電力会社
推奨値
備考
500,000V35個程度10.8m11.0m長幹がいしの場合も有。要電力会社確認
275,000V17〜24個6.4m7.0m—
154,000V10〜14個4.0m5.0m—
66,000V5〜8個2.2m4.0m鉄道用鉄塔では2個の場合有。要確認
22,000V2〜4個2.0m3.0m—
6,600V(高圧)ピンがいし1.2m2.0m一般電柱(電力会社配電線)の大半がこの電圧
100・200V(低圧)なし1.0m2.0m電柱最下段の引込線等

ガイドラインの導入をご検討ですか?

会社・団体でのご利用には利用届の提出が必要です(個人は不要・届出料無料)。運用方法のご相談も承ります。

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Full Text / 2026年9月改訂版

樹木作業における安全プロトコル

Safety Protocol for Arboricultural Operations

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドラインを加えた、現地事前調査・緊急時対応から、装備・点検・廃棄・保管、作業方法の選定、ロープクライミング、高所作業車、ハシゴ、電気の危険認識まで、樹木作業の全工程を体系化した安全プロトコルです。「安全を自分ごととして捉え、言われなくても安全な行動を実践する」安全文化の定着を最終目標とします。

(一社)Tree Care Safety Association((一社)樹木作業安全協会)

第1章 はじめに

1.1 最終目標

作業者が「安全を自分ごととして捉え、言われなくても安全な行動を実践する」ことを目指す。外部から押し付けられたコンプライアンスではなく、作業者やその仲間が必要性を理解し、仲間を守るために実践する安全文化の定着を最終目標とする。

1.2 法的事項

労働安全衛生法第1章第3条には、事業者の責務及び仕事を請け負わせる者の責務が記載されている。また、第4条には労働者の責務が規定されている。加えて第4章第20条から第25条には事業者の責務、第26条には労働者の責務が記載されている。安全作業は事業者及び労働者の責務である。

1.3 作業者の責任と権限

すべての作業者は、自分自身の安全だけでなく、同僚や周囲の人々の安全にも責任を持つ。例えば樹上作業者の身に危険を発見・予測したら、直ちに作業を中止し必要な対策を講じる義務がある。この原則が機能するためには、「危険を指摘した人が不利益を受けない」という環境が不可欠である。安全のために声を上げることが賞賛される文化こそが、最終目標の土台である。作業チーム皆が、お互いの安全を思い、「皆今日も安全に家に帰ろう」という意識を育てることが大切である。

第2章 現地事前調査

樹上作業を行う場所の事前確認を実施し、その確認内容を記録する。

2.1 危険評価(ハザードアセスメント)

すべての樹木作業は、作業開始前の危険評価から始まる。これは「形式的なチェックリスト」ではなく、「今日、この現場で、何が自分や他人を傷つける可能性があるか」を真剣に考えるプロセスである。重要なのは、危険評価は作業開始前の一度きりではないということである。作業の進行に伴い、天候の変化、樹木の構造変化(枝を切ることでバランスが変わる)、新たな危険の発見などにより、継続的に再評価しなければならない。「最初に確認したから大丈夫」ではなく、「常に危険を感知し続ける」姿勢が求められる。評価結果は、現場の全作業者に共有されなければならない。一人だけが危険を認識していても、それが共有されていなければ、他の作業者がその危険によって被害を受ける。危険評価は「全員の安全のための全員の行動」である。

2.1.1 評価項目

ツリーインスペクション

  • 樹木の構造的健全性:腐朽、亀裂、枯れ枝、折れ枝、子実体、空洞、ツル絡み、根の切断痕、樹皮の滑落、異常な膨らみ、動植物の生育、樹高、幹周、枝張り、樹勢など

サイトインスペクション

  • 架空電線:位置、距離、種類など
  • 地盤の状況:傾斜、湧水、掘削痕、踏圧、盛土など
  • 周辺樹木:距離、密度、樹高、種類、所有者など
  • 構造物:距離、種類(住居、工場、歩道、車道、消火栓、地下埋設物の有無、庭石、壁、フェンス等)、所有者など
  • 交通状況:交通量、通学路、バスの運行、デイサービスなど
  • 気象状況:風、雷、降雨、降雪など

2.1.2 樹木評価の二段階 ― 現場簡易評価と専門精密診断

樹木作業前の樹木を評価する作業は、責任範囲と用いる手法によって二段階に分ける。樹木及び力学に関する知見を有する者が現場で行う「簡易評価(一次スクリーニング)」と、樹木医等の専門家が機器を用いて行う「精密診断」である。簡易評価はその日の作業可否を保守的に判断するためのものであり、精密な健全度の定量や内部欠陥の確定診断を代替するものではない。

樹木及び力学に関する知見を有する者には、樹木評価モジュール講習修了者などを含む。

項目段階1 現場簡易評価段階2 専門精密診断
実施者樹木及び力学に関する知見を有する者樹木医その他の有資格専門家
目的その日・その木で作業してよいかとアンカー選定を保守的に判断(go/no-go)内部欠陥・破断リスクを定量評価し、作業可否や対処方針を確定
主な手法目視・打診・突き刺し(プロービング)・子実体や食害痕の確認・バウンズテスト穿孔抵抗測定・音波樹木断層診断・引張(静的荷重)試験・t/R等の定量・根系調査
必要な機器特別な機器を要しない専用の診断機器・専門技術を要する
限界・責任健全性を保証しない。異常の発見と回避・エスカレーション(対応の引継ぎ)が役割定量評価と安全判断は専門家の責任範囲

段階1:樹木及び力学に関する知見を有する者が現場で行う簡易評価(一次スクリーニング)

目的:その日・その木で登攀作業を行ってよいか、どこにアンカーを取るべきか/取るべきでないかを保守的に判断する。go/no-go と「専門家へのエスカレーション要否」の振り分け。

実施者:樹木及び力学に関する知見を有する者。

用いる手法(特別な機器を要しない):

  • 地上からの目視(全体の傾き・偏心・枯枝・樹冠の異常・滲出物)。
  • 登攀経路・アンカー候補の近接目視(内包樹皮・共優勢幹、亀裂、こぶ・隆起)。
  • 打診(濁った音・空洞音)。
  • 突き刺し・プロービング(軟化・空洞の簡易確認)。
  • 子実体(キノコ)の有無。
  • フラス・穿孔痕・樹皮の浮き等の昆虫被害の痕跡。
  • 基部・根系・根上がり・地盤の簡易確認。
  • バウンズテストによる動的確認。

判断基準:

  • 健全と判断できる部位にのみアンカーを取る。
  • 欠陥の疑いがある部位は使わない(疑わしきは使わず)。
  • 簡易評価で判断がつかない/重大な欠陥が疑われる場合は、作業を保留し段階2へエスカレーションする。

限界の明示:簡易評価は内部腐朽の範囲・残存壁厚・破断強度を定量できない。「異常の兆候を見つけて回避・エスカレーションする」ためのものであり、「健全であることを保証する」ものではない。

段階2:専門家による精密診断

目的:簡易評価で懸念が示された木、または高リスク・高価値・反復作業対象の木について、内部欠陥や破断リスクを定量的に評価し、登攀・作業の可否や対処方針を判断する。

実施者:樹木医その他の有資格専門家。

用いる手法(機器・専門技術を要する):

  • 穿孔抵抗測定(レジストグラフ等)による内部腐朽・空洞の検出。
  • 音波樹木断層診断(ソニックトモグラフ)による断面の健全度マッピング。
  • 引張試験(静的荷重試験)による根系・幹の安定性評価。
  • 残存壁厚 t/R 等の定量評価。
  • 根系調査。

評価・提言:定量的な健全度評価、登攀・作業可否の判断、必要な処置(剪定・支柱・使用制限・伐採等)の提言。

責任範囲:精密診断とその結論に基づく安全性の判断は専門家の責任範囲であり、クライマーの簡易評価とは区別される。

エスカレーションの基準(段階1 → 段階2)

次のいずれかに該当する場合は、現場判断で作業を進めず、専門家の精密診断を求める。

  • 子実体・大きな空洞・進行した腐朽が疑われる。
  • 基部・根系・地盤に異常が疑われる(木ごと倒れるリスク)。
  • 重要木・大径木・公共空間等、失敗時の影響が大きい。
  • 簡易評価では健全性を判断できない。
  • 反復的・長期的にアンカーとして使用する木。

2.2 作業計画(ジョブプランニング)

危険評価の結果に基づき、具体的な作業計画を策定する。作業計画は、専門家だけが作るものではない。すべての作業者が計画の内容を理解し、自分の役割と、万が一の時に何をするかを把握していなければならない。「親方が決めたことに従う」ではなく、「全員が計画を内在化する」ことが目標である。計画は、作業の進行や状況の変化に応じて柔軟に修正されるべきものである。

2.2.1 作業計画の内容

  • 作業内容と採用する工法(クライミング、ハシゴ、高所作業車、クレーンなど)
  • 識別された危険とその対策
  • コミュニケーション手段(合図の確認)
  • 必要な装備のリストアップ、点検
  • 作業員の役割分担と位置
  • 落下区域の設定
  • 交通規制の必要性
  • 緊急行動計画(最寄りの病院、連絡先)
  • 必要なPPEの確認など

2.3 記録と報告

作業の記録(作業内容、電線の状態、異常の有無、ヒヤリハットの報告)を作成・保管する。記録は、安全の継続的改善のためのデータであり、事故発生時の原因究明にも不可欠である。「危なかった」体験(ニアミス)も報告し、将来の事故防止に活かす。

第3章 緊急時の対応計画

3.1 緊急行動計画(Emergency Action Plan)

すべての作業現場には、事故や緊急事態が発生した場合の緊急対応手順を、全作業者が理解しておかなければならない。感電者の救助は、自分が感電しない方法で行う。電線が落下した場合は、周囲の人を避難させ、電力会社に通報する。CPR(心配蘇生法)とAED(自動体外除細動器)の使用能力が特に重要である。

「事故は起きないだろう」という楽観が、緊急行動計画の策定を後回しにさせる最大の原因である。しかし、樹木作業は常に重大事故のリスクを伴う。事故が発生してから「どうしよう」と考えるのでは遅い。緊急行動計画は、パニック状態での判断ではなく、事前に決めた行動を実行するためのものである。

3.1.1 緊急行動計画の項目

  • 最寄りの病院の場所と連絡先
  • 救急車の呼び方
  • 現場へのアクセス経路の説明
  • 応急処置の担当者
  • 応急用品の配置場所など

3.2 樹上レスキュー計画

樹上作業(クライミング、高所作業車など)を行うすべての現場には、空中レスキュー計画を策定しなければならない。これは、樹上で作業者が負傷したり意識を失った場合に、安全に地上まで降ろすための具体的な手順である。レスキュー計画がなければ、意識を失った作業者はハーネスに宙吊りの状態となり、短時間でサスペンショントラウマ(宙吊りによる血流障害)を起こし、生命の危機に至る可能性がある。「レスキュー計画のない樹上作業は、安全な作業とは言えない」という原則は、この現実に基づいている。

3.2.1 レスキューが必要になる状況

  • 墜落による負傷
  • チェンソーによる裂傷
  • 枝の落下による打撲
  • 電気による感電
  • 蛇刺されによるアナフィラキシーショック
  • 熱中症
  • その他の医療緊急事態など

3.3 レスキュー能力を有する人員の配置

樹上作業を行う際には、樹上レスキューを実施できる能力を有する別の作業者が、現場に少なくとも一人存在しなければならない。この規定は、事実上単独での樹上作業を禁止している。「樹上レスキュー能力を有する」とは、単に現場にいるだけではなく、実際に樹上に登り、負傷者を安全に降ろす技術と装備を持っていることを意味する。119番に電話するだけでは不十分である。消防隊が到着するまでの時間、消防隊が樹上レスキューの訓練を受けているかどうか、その間に患者の状態が悪化するリスクを考えれば、現場での即応能力が不可欠であることがわかる。これは日本の一人親方の樹上作業者にとって最も大きな課題であるが、「一人ではレスキューできない」という事実は変えられない。本項が示すのは、単独での樹上作業を認めない理想基準である。やむを得ず単独で作業を行わざるを得ない場合の現実的な対応は、3.4に定める。3.4に定める対応は、本項の理想基準を代替するものではない。

3.3.1 「樹上レスキュー能力を有する」者が実際にレスキューを行ってよいか

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン(以下「WPガイドライン」という。)では、「消防署への通報が第一、並行して即座にレスキューが開始できるよう準備すること」として、実際のレスキューには言及していない。被災者当人の意向、状態を含めた消防署との密な連絡と、それによる消防署からの指示に従う必要がある。

3.4 単独で樹上作業を行う場合の対応

樹上作業には、救助能力を持つ第二者の同行が推奨される。これが理想基準である。ただし、一人親方等、やむを得ず単独で樹上作業を行わざるを得ない場合は、以下のすべての条件を満たした上で作業を行うこと。家族、友人のために、安全に仕事を終えて家に帰ることを第一に考えてください。

3.4.1 作業開始の告知

地上にいる第三者(施主・隣人・通行人等)に対し、作業開始・作業場所・作業内容・予定終了時刻を告知し、異常が生じた場合に119番通報を依頼しておくこと。

3.4.2 緊急連絡手段の確保

携帯電話等により、樹上から直接119番通報が可能な緊急連絡手段を常時携行すること。電波状況を事前に確認し、通話が困難な場合は作業を中止すること。

3.4.3 自己救助手段の携行

セルフレスキュー装備(自己脱出・降下用器具)を携行し、その使用方法を習得していること。樹上で意識を失う前に自力で地上に降下できる手段を確保すること。

3.4.4 作業前の健康確認

めまい・疲労・体調不良・睡眠不足・飲酒等、判断力・身体能力を低下させる要因がないことを自己確認すること。少しでも不安がある場合は作業を中止すること。

3.5 応急処置とCPRの訓練

作業員は、有効な応急処置およびCPR(心肺蘇生法)の訓練を受け、その有効期限を保っていなければならない。樹木作業では、重篤な裂傷(チェンソー)、骨折(墜落)、感電、アナフィラキシー、出血など、即座に応急処置が必要な事態が発生し得る。救急車が到着するまでの数分間の応急処置が、生死を分けることがある。特にチェンソーによる大腿動脈裂傷では、出血制御の最初の数分が決定的である。感電では心臓の停止があり得るため、CPRとAEDの使用能力が求められる。「誰かがやってくれるだろう」ではなく、「自分ができなければ他に誰もいない」という意識が必要である。

3.6 レスキュー訓練の定期実施

レスキュー計画は、策定しただけでは不十分であり、定期的に実践訓練を行わなければならない。緊急時には、考える時間がない。訓練で体に染み込んだ手順だけが、実際の緊急時に実行できる。レスキュー訓練は、少なくとも年に1回、できれば半年に1回実施することが推奨される。訓練には、実際に樹上に登り、ダミー(人形)またはパートナーを実際に降ろす実技訓練を含む。加えてレスキューの多くはセルフレスキューが多いことから、事故発生時の初期対応とセルフレスキューの訓練が推奨される。「知っている」と「できる」は全く異なる。レスキュー技術を「できる」状態に保つことが、全員の命を守る最後の砦である。

第4章 作業前ミーティング(ジョブブリーフィング)

すべての作業は、作業開始前の作業前ミーティング(ジョブブリーフィング)から始まる。これは形式的な朝礼ではなく、現場の危険、作業計画、役割分担、コミュニケーション手段、緊急時の行動を全員が共有するための重要な安全プロセスである。ブリーフィングは「説明」ではなく「共有」である。ブリーフィングなしに作業を開始することは、「全員が同じ絵を見ていない状態で動き始める」ことであり、事故の温床となる。

4.1 ブリーフィングの内容

ブリーフィングでは、作業計画の内容を全員で共有する。

  • 作業内容と採用する工法(クライミング、リギング、高所作業車、クレーンなど)
  • 識別された危険とその対策
  • コミュニケーション手段(合図の確認)
  • 必要な装備のリストアップ、点検
  • 作業員の役割分担と位置
  • 落下区域の設定
  • 交通規制の必要性
  • 緊急行動計画(最寄りの病院、連絡先)
  • 必要なPPEの確認など

第5章 事前準備

5.1 作業範囲の設定

作業現場の周囲に、明確な作業区域を設定し、無関係の人員の立ち入りを禁止(防止)する。バリケード、コーン、標識、監視員の配置など、現場の状況に応じた手段を講じる。少なくとも、落下物が到達し得る範囲を超えた区域を確保する。加えて作業範囲を退避箇所(セーフティーゾーン)、作業箇所(ワークゾーン)、降下箇所(ドロップゾーン)に区画化(ゾーニング)し、作業箇所の内容を明確化する。特に降下箇所(ドロップゾーン)の明示を推奨。区画化は作業の進行によって変化するため、その都度作業員全員による共有が大切である。狭い道路や隣接した建物のために十分な区域確保が難しい場合があるが、その場合は監視員の配置や吊り下ろす枝幹の大きさの検討など、代替手段で補う。

5.2 交通規制

樹木作業は、道路に隣接した場所、歩道上、または車道の一部を占有して行われることが多い。交通規制の目的は二つある。一つは作業者を車両から守ること。もう一つは通行人や車両を作業に伴う危険(落下物、飛散物、機械の移動)から守ることである。交通規制を伴った樹木作業は、作業者と第三者の両方にとって危険である。「短時間だから大丈夫」という判断が、交通事故の引き金となる。

5.2.1 交通規制の計画

交通規制は作業開始前に計画し、道路の種類、交通量、速度、視界条件、作業の性質に応じた規制方法を選定する。交通量が少ない住宅地内の道路と、幹線道路では必要な規制の規模が大きく異なる。日本では道路使用許可や道路占用許可が必要な場合があり、事前の申請が必要となる。計画段階で法的要件を確認し、必要な許可を取得する。また、交通規制に関係する周辺住民への周知に加え、バスの運行経路や、デイサービスの送迎等も考慮する必要がある。

5.2.2 標識と警告装置

作業現場の存在を接近するドライバーに事前に知らせるための標識を設置する。先行警告標識は、ドライバーが安全に減速・停止できる十分な距離に設置する。コーンやバリケードで作業区域を明確に示す。夜間作業や低視界時には、反射材、回転灯、照明を併用する。標識は「立ててあればいい」のではなく、ドライバーから実際に見える位置に、十分な大きさで設置されなければ意味がない。

5.2.3 誘導員(フラッガー)の配置

交通量が多い場所や、視界が制限される場所、片側交互通行が必要な場所では、誘導員(フラッガー)を配置する。誘導員は、交通規制の訓練を受け、高視認性安全服を着用し、明確な信号手段(旗、パドルなど)を用いる。誘導員は交通規制に専念し、他の作業と兼務してはならない。「枝の片付けをしながら交通も見る」という作業の兼務は、両方の安全を損なう。誘導員の安全自体も確保しなければならない。誘導員は交通の流れに最も近い場所に立つため、車両に接触されるリスクがある。

5.2.4 作業車両の配置と視認性

作業現場に配置する車両(トラック、クレーン、高所作業車など)は、交通の流れに対して視認性が高く、作業者の保護にもなるように配置する。回転灯、ハザードランプ、反射テープなどを活用する。車両自体が「移動式バリケード」の役割を果たすことがある。ただし、作業車両自体が交通の妨げとならないよう、配置と角度を計画する。狭い住宅地内道路では、車両配置だけで道路の大部分を占有してしまうことがあり、住民への配慮と安全のバランスが必要である。

5.3 識別された危険とその対策

5.3.1 電線の確認

現場到着後、最初に確認すべき項目の一つが架空電線の位置である。樹木と電線の関係(電線が樹冠内を通過しているか、枝が電線に接触しているか、作業中に電線に接近する可能性があるか)を評価する。電線の存在は、作業工法、使用装備、落下区域の設定すべてに影響する。「電線があることに気づかなかった」という事態は、現場評価の失敗である。そのため、事前確認における作業計画(ジョブプランニング)において、電線からの必要離隔距離、電線への保護カバーの設置の必要性の有無や設置費用、電力会社との協議までの事前準備が必要となる。

5.3.2 樹木の点検(ツリーインスペクション)

事前確認における作業計画(ジョブプランニング)において確認されたリスクについて、リスクに変化がないか、新たなリスクが発生していないか再度確認する。樹木の点検は登攀を行った際にも再度行い、地上では発見できなかった新たなリスクが見つかった場合、作業計画の変更と作業員全員による共有が必要である。

5.3.3 周辺環境の点検(サイトインスペクション)

樹木の周囲にある構造物(建物、フェンス、車両、庭石、壁など)に加え水道管、排水管、メーター設備などの地下埋設物の位置を確認し、落下する枝やリギングの荷重がこれらに影響を与えないよう計画する。「どこに何があるか」を事前に把握することで、落下方向の計画、リギングの必要性の判断、作業工法の選択が可能になる。密集住宅地では、ターゲット(保護すべき対象)が非常に近接していることが多く、この評価が特に重要である。また、樹木近くの構造物が根の伸長を妨げている場合は、一定方向に倒木しやすい状況にあることが予想されるため、木にかかる荷重の変化には注意を要する。

作業現場の地盤状況を評価する。傾斜、湿潤、不安定な地面、地下埋設物(水道管、排水管、メーター設備など)の有無、足元の障害物(石、穴、根)、土地境界線を確認する。車両や重機の配置に影響する地盤の耐力も評価する。雨天後のときは地盤状況が悪化している可能性がある。足元の安全は、すべての作業の安全の出発点である。

5.3.4 気象条件の評価

作業開始前および作業中、気象条件を継続的に監視する。強風は落下物の軌道を変え、リギング(枝幹の吊り降ろし)の制御を難しくする。加えてアンカーを設置した枝ごと折れて落下するリスクも大きい。根株腐朽が進行した樹木は根返りのリスクも考慮する必要がある。雷は樹木への落雷リスクがあり、雷鳴が聞こえたり雷光が確認されたら直ちに空中作業を中止する。降雨はロープや樹皮を滑りやすくし、クライミングの安全性を低下させる。また気温が高い日は熱中症のリスクがある。「今日はやめる」という判断ができることも、プロフェッショナルの資質である。

5.3.5 作業中の再評価

作業の進行に伴い、状況は常に変化する。枝を切れば樹木のバランスが変わる。風向きが変われば落下区域が変わる。新たな危険(隠れていた腐朽、予想外の電線、通行人の出現、照度の変化など)が発見されることもある。ブリーフィングは作業開始前の一度きりではなく、状況が変化した際には作業を中断し、再ブリーフィングを行う。「最初の計画に固執する」のではなく、「常に現実に合わせて計画を更新する」柔軟性が求められる。

5.3.6 作業完了時の現場確認

作業完了時に現場を安全な状態に戻す。現場の安全確認と清掃を行わなければならない。切断により弱体化した枝や、完全に切り離されていない「かかり枝」が樹上に残っていないことを確認する。かかり枝は後日落下する極めて危険な状態である。地上の木の破片、木くず、おがくずは、通行人がつまずきや転倒するリスクがあるため、速やかに除去する。交通規制が解除できる状態か、装備がすべて回収されているか(作業前後の数量が同じであるか)を確認する。現場を安全に戻すことは、プロフェッショナルとしての認識であると同時に、地域社会への責任でもある。

第6章 必要な装備

6.1 Personal Protective Equipment (PPE)

PPE(個人用保護具)は、米国のOSHA(Occupational Safety and Health Administration)に定義があり、「作業中に発生する危険や有害要因から、作業者の身体を保護するために着用する装備」である。PPEは、危険を排除できない場合の「最後の防護線」である。安全の階層としては、まず危険源の排除、次に代替法の検討、工学的対策、管理的対策、そして最後にPPEという順序(Hierarchy of Controls(危険源対策の階層))がある。しかし樹木作業では、危険を完全に排除できない場面が多く、PPEは常に不可欠である。PPEは事故を防ぐものではなく、事故が起きたときに被害を軽減するものである。「事故が起きなければPPEは不要」という論理は、「事故は必ず起きる」という現実の前では通用しない。

6.1.1 PPEの種類

頭部の保護(保護帽、墜落用、電気用、飛来落下用など)

樹木作業中は常に適切なヘルメットを着用する。樹上作業者は墜落時の頭部保護と落下物からの保護、電気からの保護が必要であり、チンストラップ(あご紐)付きのアーボリストヘルメットが推奨される。地上作業者も、落下する枝、工具、木片から頭部を保護するためヘルメットが必要である。ヘルメットは衝撃を受けた後は交換しなければならない。外観に損傷がなくても、衝撃吸収材が損傷している可能性がある。

その他の情報は、「ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足―頭部保護具―」参照

眼・顔面保護(保護メガネ、ゴーグル、バイザーなど)

木片、おがくず、樹液、粉塵、農薬などから目を保護するため、安全基準を満たす保護メガネまたはフェイスシールドを着用する。チェンソー、チッパーの操作時は特に飛散物のリスクが高い。目の負傷は永久的な視力の損失につながる可能性があり、その影響はキャリア全体に及ぶ。「見えなくなったら仕事ができない」という当たり前の事実を、保護メガネ一つで防げる。樹上作業ではJIS T 8147やANSI Z87+やCE EN166または同等以上の耐衝撃性能を有する保護メガネを使用する。

聴覚保護(耳栓、イヤマフなど)

チェンソー、チッパーなどの動力工具は騒音を発生させる。厚生労働省の騒音障害防止ガイドラインでは、85dB(A)以上は管理対象、90dB(A)以上は聴力保護対策が必要とされている。長期間の暴露は不可逆の聴力損失を引き起こす。聴力の低下は徐々に進行するため、本人が気づいたときには取り返しがつかない。聴覚保護具は、作業中の警告音声や合図が聞こえる程度のものを選択する。過度の遮音はコミュニケーションの妨げとなり、別の危険を生むため、インカムの使用等、遮音とコミュニケーションの両立が可能な方法の検討が必要である。「少しの間だから」という油断の積み重ねが、生涯にわたる聴力損失を招く。

手の保護(作業手袋、耐切創手袋、絶縁手袋、防振手袋など)

作業内容に応じた適切な手袋を着用する。ロープ作業、リギング、枝の取扱いには摩擦や切り傷からの保護が必要である。ただし、回転部のある機械(チッパーの投入口付近など)では、手袋が巻き込まれるリスクも考慮する。農薬取扱い時は化学防護手袋を使用する。手は樹木作業における最も重要な「工具」であり、その保護はキャリア全体を守ることにつながる。

脚の保護(チェンソーパンツ、チャップスなど)

チェンソーを使用する際は、地上作業、樹上作業を問わず下肢の切創を防止するための保護衣(チェンソーパンツ、チャップス)の着用が求められており、現在はJIS T 8125シリーズやISO 11393に適合した製品が使用されている。ただし樹上作業においては、チャップスは枝等の引っ掛かりによりズレが起こりやすいため、チェンソーパンツの着用を推奨する。チェンソーによる下肢の裂傷は、大腿動脈を損傷し数分で致命的な出血に至る。下肢の切創を防止するための保護衣はチェーン接触時に繊維が引き出されスプロケットを詰まらせてチェーンを停止させる。「暑いけど着ないよりずっと安全」である。命と快適さの天秤は比較にならない。

足の保護(チェンソーブーツ、クライミングブーツなど)

樹木作業には、足首を保護し、滑りにくいソールを持つ適切な履物を着用する。チェンソー使用時にはチェンソー防護機能付きのブーツ(チェンソーブーツ)の着用が推奨される。不安定な地面、湿った木材、傾斜地での作業が多い樹木作業では、足元の安定性がすべての安全の基盤となる。サンダルやスニーカーでの樹木作業は、言うまでもなく論外である。

全身の保護(高視認性安全服)

高視認性安全服とは、作業者の存在を周囲に目立たせ、車両や重機の運転者などに早期に認識してもらうための保護衣である。路上や交通の近くで作業する場合は、高視認性被服(蛍光ベストなど)を着用しなければならない。樹木作業は路上や歩道に隣接した場所で行われることが多く、ドライバーからの視認性が作業者の安全に直結する。また、樹上、地上と人員が3次元に配置されることが多い樹木作業では、樹上作業者から地上作業者の位置が確認しやすいため、視認性の高さは安全作業にとって重要である。加えて早朝、夕方、曇天時は視認性が低下するため、高視認性安全服の重要性が増す。現在広く採用されている規格は、ISO 20471、JIS T 8127である。

6.1.2 PPEの点検・整備・交換

PPEは使用前に毎回点検し、損傷や劣化が見られた場合は直ちに交換する。PPEには寿命がある。ヘルメットは製造者の推奨する交換時期に従う。下肢の切創を防止するための保護衣は一度でもチェンソーに接触したら交換する。「まだ使えそう」ではなく、基準に基づいた廃棄が必要である。PPEは消耗品であり、その費用は安全への投資である。

6.1.3 PPEの適合性と規格

使用するPPEは、認められた規格(日本では主にJIS、国際的にはEN、ANSIなど)に適合した製品でなければならない。安価な未認証製品は、必要な保護性能を持たない可能性がある。PPEは作業者の体格に合ったサイズを選び、製造者の指示に従って正しく着用する。サイズが合わないPPEは、保護性能が低下するだけでなく、作業性を妨げ、着用を敬遠する原因ともなる。「自分に合った良いPPE」を選ぶことが、継続的な着用の鍵である。

6.2 ワークポジショニング用器具

樹木作業において、作業者が身体の作業位置を保持するために使用する保護具は、ワークポジショニング用保護具(以下「ワークポジショニング用器具、通称:アーボリストサドル、ツリーケアハーネス」という。)とする。ワークポジショニング作業に使用される身体保持用の器具。腰部及び腿部等において身体の作業位置を保持する構造器具で構成される。これは、枝幹に回し掛けしたロープ等の張力によって身体を支え、両手を用いた作業を可能にするための器具であり、胴ベルト、ワークポジショニング用ロープ(ランヤード)、伸縮調節器及びコネクタ等で構成される。

ワークポジショニング用器具は、身体の作業位置を保持することを目的とするものであって、墜落を制止することを目的とするものではない。このため、ワークポジショニング用器具を墜落の制止を目的として使用してはならない。

その他の情報は、「ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足―ワークポジショニング保護具―」参照

6.3 その他、道具類

6.3.1 ロープに関する総則

樹木作業に使用するすべてのロープは、その用途に応じた仕様を満たさなければならない。人命を支えるクライミングラインと、荷重を支えるリギングロープでは求められる性能が異なる。ロープは「ただの紐」ではなく、命を預ける安全装備である。用途ごとの適切なロープを選定し、人命保護(Life)とそれ以外(Non-Life)の峻別が必要。

6.3.2 クライミングライン(クライミングロープ)

クライミングラインは人命保護(ライフセーフティ)用、樹木作業用として販売されたものでなければならない。最低破断強度、直径、構造(編み方)に明確な基準がある。ロープの細さはフリクションデバイスとの適合性にも影響し、細すぎるロープは摩擦力が不足して制動不良を起こす。「ロープの選定はシステム全体の安全性を左右する」という認識が必要である。樹木作業においては、破断強度はレスキュー等も考慮し22.24kN以上、ロープ末端にアイ加工部があるものに関してはアイ加工部19.0kN以上の破断強度を推奨。ロープの末端はほつれ防止処理を行うこと。

6.3.3 ランヤード(ワークポジショニング用ロープ)

ワークポジショニングランヤードは、幹や枝等に回しがけするロープ等で、伸縮調節器を用いて調整したロープ等の張力によってU字つり状態で身体の作業位置を保持するためのもの。ランヤードは適切な長さに調整し、使用中にスリップ(落下60cm内)しないように措置を講じなければならない。

伸縮調節器を通ってランヤードの自由端が抜け進んでしまうことを防ぐための終端処理(ストッパーノット、エンドノット)を設けなければならない。ランヤードはクライミングラインとの併用(二重確保)が推奨される。

ワイヤコアランヤード(鋼線芯ランヤード)は、電気設備、電線付近での使用は禁止である。加えて、レスキューにおいてランヤードをカットすること(カットレスキュー)が困難であるためカットアウェイストラップの併用を推奨する。

その他の情報は、「ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足―ワークポジショニング用ロープ―」参照

6.3.4 その他のロープ類

プルージックコード、スプリットテール、スリング(Life)等、ロープ項目と同じ。最小破断強度は、使用状態(単線、複線)において22.24kN以上を推奨する。

6.3.5 カラビナ、スナップ

クライミングシステムに使用するカラビナやスナップは、自動ロック機構を備えたものに限る。ゲートが意図せず開放することを防止するためである。カラビナについては自動2重ロック以上の機構を備えたものとする。破断強度はカラビナ22.24kN以上、スナップ16.01kN以上を推奨とし、製造者の仕様に従ったものを使用する。カラビナはゲートの開閉方向に荷重がかからない向きに装着する。トリプルアクション型など、不意の開放リスクが低いタイプが推奨される。カラビナ同士やスナップフックとの直接連結は禁止。

スナップは、ランヤード(ワークポジショニング用ロープ)の接続器具として使用する。

6.3.6 伸縮調節器

伸縮調節器は、クライミングライン上やワークポジショニングランヤードにおいての位置制御を可能にする装置である。ヒッチコード等のロープ類を巻き付けてその摩擦(フリクションヒッチ)を利用するタイプと、テコの原理により器具によってロープを挟み込む(フリクションデバイス)タイプに大きく分けられる。使用するロープの直径・構造との適合性が極めて重要である。不適合なロープとデバイスの組み合わせは、制動不良や急激な落下の原因となる。製造者が指定するロープ仕様の範囲内で使用し、使用前に動作確認を行う。デバイスの摩耗、亀裂、可動部の動作不良がないことを確認する。

6.3.7 アセンダーとディセンダー

メカニカルアセンダー(登はん補助器具)とディセンダー(降下制御器具)は、使用するロープの直径・構造との適合性が不可欠である。不適合な組み合わせは、ロープ上でのスリップ(制動失敗)に直結する。アセンダーはロープを傷つける可能性があるため、歯の状態とロープへの影響を常に意識する。ディセンダーは、自動で停止する「セルフブレーキ」機能があることに加え、パニック時にロープを握りしめても制御された降下が可能な「パニックストップ」機能双方を備えたディセンダーが推奨。

6.3.8 ツリースパイク(Tree Spikes)

ツリースパイクは、ギャフ(Gaffs)と呼ばれる針状の金具を樹皮に差し込んで足場とする器具である。ツリースパイクの重量は、材質(スチール、アルミ、チタン、カーボンファイバーなど)に影響される。また、スパイククライミングの快適さは、ツリースパイクの角度、スティラップ(あぶみ)の幅、パッドの大きさと厚さに影響される。対象となる樹木や作業によって、ギャフの長さや形状を選択できる。

6.3.9 リギング器具

リギング(枝や幹のセクションを制御して降ろす作業)に使用する装備は、予想される荷重に対して十分な強度を有しなければならない。リギングロープ、ブロック、スリング、プーリーのそれぞれがシステムの一部であり、最も弱い部分がシステム全体の強度を決定する。リギングロープとクライミングラインは絶対に兼用してはならない。リギングの衝撃荷重は静的荷重の数倍に達することがあり、装備の耐荷重を理解した運用が不可欠である。

6.3.10 スリング類

リギングや荷掛けに使用するスリングは、合成繊維またはワイヤーロープ製で、その用途に応じた強度を有しなければならない。スリングの吊り角度(チョークアングル)によって実効強度が大きく変化することを理解しなければならない。角度が広がるほど各レグへの荷重が増大し、破断リスクが高まる。

6.3.11 必要携帯品

  • ノコギリ(携帯時不意に刃が露出しない構造のもの)
  • 携帯電話
  • ホイッスル

第7章 器具の点検

器具の損傷、劣化、改造その他の異常を早期に発見し、器具の故障による事故及び災害を防止すること。すべての器具は、使用前、使用中及び使用後に点検を行うとともに、定期的に詳細点検を実施しなければならない。点検内容は製造者の取扱説明書及び基準を最優先とする。点検は器具の使用継続を正当化するためではなく、安全な使用を確認するために実施する。不安全な状態が疑われる場合は「使用可能」と判断せず、使用停止及び詳細確認を行う。「疑わしい場合は使用しない(When in doubt, retire it.)」を原則とする。

7.1 ロープの点検

ロープは使用前に毎回、目視および触診による点検を行わなければならない。点検項目には、外被の摩耗・切断・毛羽立ち、芯の露出、結び目の異常、化学物質や熱による損傷の痕跡、硬化や柔軟性の変化が含まれる。ロープの全長にわたり、手で滑らせながら確認する。「見落とし」が命取りになる。点検は省略できない工程である。ロープの点検の際は、ロープ末端にプルージックや、デバイスの抜け止めとなる終端処理(ストッパーノット、エンドノット)があるか確認する。

7.2 ワークポジショニング用器具の点検

樹上での体勢変換や横移動の連続的な動作が必要になる。そのため摩耗による損傷に注意を要する。ワークポジショニング用器具のDリング、バックル、ウェビング、縫製箇所を使用前に点検する。また、摩耗しやすい共通箇所に加え、製品ごとに特徴がある摩耗箇所も理解して点検を行う。ワークポジショニング用器具は作業者の体とロープシステムをつなぐ要であり、その信頼性はシステム全体の安全性に直結する。

7.3 ワイヤコアランヤード(鋼線芯ランヤード)の点検

ワイヤコアランヤード(鋼線芯ランヤード)の場合、外被の損傷から内部の状態を目視で確認できないため、外被の摩耗が確認された時点や、使用していなくても定期的な廃棄判断が必要である。

7.4 カラビナ、スナップの点検

使用前にゲートの動作、ロック機構の確実な作動をゆっくり動かして確認し、不適な摩擦、引っ掛かりがないか、数度の動作確認を行う。特に雨天時は作動が鈍くなることに注意が必要である。また、本体の亀裂や変形、ゲートにバリが発生し、ロープ類を傷つける要因になっていないか確認する。潤滑油を使用する場合は成分に注意し、ロープ類に支障がないことを確認する。

7.5 ツリースパイク(Tree Spikes)の点検・メンテナンス

パッドのへたり、ベルクロのへたり、ネジの緩みや、各部のがたつき・変形・摩耗・錆などの点検が必要である。特にシャンクの金属疲労による亀裂の有無には十分注意が必要。ギャフ(爪)の刃先の摩耗は、キックアウトを誘発するので砥ぎが必要。

7.6 リギング類

リギング作業では、予想を超える荷重がかかることがあるため、使用前、使用後の点検は重要である。損傷、変形、摩耗、腐食その他の異常が認められた場合は直ちに使用を中止し、管理責任者の判断を受けること。点検、保守および廃棄は製造者の指示を最優先とする。

第8章 器具の廃棄基準

器具は消耗品であり、永久に使えるものではない。点検で損傷、過度の摩耗、化学物質による汚染、熱損傷、固着などが確認された場合は、直ちに使用を中止し廃棄しなければならない。また、製造者が定める使用期限、耐用年数、点検基準、廃棄基準がある場合は、それを最優先とする。点検者は器具の使用可否を判断する権限を有する。安全性に疑義がある場合は、管理者の承認があっても使用してはならない。廃棄が決定したギアは、切断、破壊、マーキング等により再使用できない状態で廃棄(確実破棄)する。

第9章 器具の保管管理

器具は清潔で乾燥した状態で、直射日光、化学物質、高温、鋭利な物から隠れた場所に保管する。紫外線は合成繊維を劣化させ、強度を低下させる。ガソリン、溶剤、酸、アルカリなどの化学物質との接触を避ける。湿気はサビを発生させる。汚れたロープは清水で洗浄し、十分に乾燥させてから保管する。「保管の質が器具の寿命を決める」という認識が重要である。

第10章 作業方法選定基準

樹上作業の方法は、作業目的、作業環境、樹木の状態および作業者の安全を考慮して選定する。作業方法は、高所作業車、ハシゴ、ロープクライミング(スパイク含む)、足場設置、クレーン車などを状況に応じ、組み合わせて採用も含めて安全性及び実施可能性を評価し、より安全な方法が合理的に利用可能な場合はそれを優先する。「より危険性の低い方法を優先する」というHierarchy of Controls(危険源管理の優先順位)の考え方である。加えてロープクライミングにおいて、電動クライミングギアの使用やアセンダーの利用などの疲労軽減措置は安全作業において有効である。

第11章 ロープクライミング

11.1 安全教育の必要性

2.0mを超える樹木作業は、「ロープ高所作業特別教育」に該当しないが、「ロープ高所作業」に共通した高所の作業特性に加えて、刃物を使用する点、グラウンドワーカーとの連携作業の必要性、アンカーとして使用する樹木の理解、使用ギアの多様性、力学の理解など、多くの知識と技能に加えてリスク管理能力が必要である。加えて、高所作業車、足場、ハシゴ、クレーン車その他の作業方法を選択した場合であっても、樹冠内の作業が必要となることが想定される。現在は一般的ではないが、墜落を防止するための措置を行うにあたって、樹木作業にはロープクライミングの安全教育が極めて重要である。

11.2 作業システムの選択

作業システムは、動的な荷重(クライミング中の衝撃、スイング、ポジション変更)に対応し最も安全性の高いシステムを選択もしくは併用すること。木の股等の自然物をアンカーポイントとして使用する場合、強度保証が困難であるため自由落下距離を限りなくゼロにする(潜在的な墜落距離を抑える)システムが有効である。アンカーポイントに衝撃荷重が加わるシステムは原則として選択しない。選択した作業システムにより、使用する保護具(安全帯)を使用する。

11.3 クライミングシステムの選択

ワークポジショニングシステムを選択した場合、クライミングシステムは、MRS(Moving Rope System)とSRS(Stationary Rope System)に大別される。双方のシステムの利点、欠点を理解し単独採用、複合採用する。採用したシステムは作業員内で一番低いレベルの作業員に統一し、作業員全員が緊急時でも対応できること。レスキューを意識した作業システム、クライミングシステムの構築が大切である。

11.3.1 ワークポジショニングシステム

ロープ等の張力により、U字つり状態等で安定姿勢を保ち、両手を自由に使用して作業を行うことを可能とするための機構。樹冠内作業の主たる作業形態。

ワークポジショニングの基本姿勢の図。ロープの張力でU字つり状態となり、両手を自由に使って樹冠内で作業する様子。

11.3.2 ポジショニングランヤード(ワークポジショニング用ロープ)掛替

ポジショニングランヤード(黄ロープ)を掛け替える際は、墜落防止措置を講じる必要がある。代表的な墜落防止措置のバックアップロープ(補助ロープ)として、赤ロープもしくは青ロープを使った例を下に示す。赤ロープは上部に枝がある場合、青ロープは上部に適当な枝がない場合に用いられることが多い。

ポジショニングランヤードを適切に張った良い例(赤ロープ)。たるみがなく、ずり落ちが生じない状態。ポジショニングランヤードを適切に張った良い例(青ロープ)。たるみがなく、ずり落ちが生じない状態。

ポジショニングランヤード、バックアップロープの緩みや、ずり落ちを避けること。ワークポジショニングシステムでは少しの墜落も許さないという作業員全員の統一した意志が必要である。

ポジショニングランヤードが緩んだ不可の例(赤ロープ)。ロープが波打ってたるみ、赤い✖印が付いている。ポジショニングランヤードが緩んだ不可の例(青ロープ)。ロープが波打ってたるみ、赤い✖印が付いている。

11.3.3 MRS(ムービングロープシステム)とSRS(ステーショナリーロープシステム)

赤ロープ、青ロープともに、バックアップロープを高い箇所に設置した場合を示したのが、右図である。右図はともにバックアップロープであることに加え、登攀・降下にも使用できるためクライミングライン(移動用ロープ)としても使用される。この時、赤ロープは登攀・下降に伴い、ロープ設置箇所のロープが手前側や裏側に移動する。そのためMRSと呼び、青ロープは登攀・下降に伴い、ロープ設置箇所のロープが移動しない。そのためSRSと呼ぶ。

MRS(ムービングロープシステム)の図・左。赤ロープをバックアップとして使用する配置。バックアップとして使用MRS(ムービングロープシステム)の図・右。赤ロープをクライミングラインとして使用する配置。バックアップとして使用
クライミングラインとして使用

MRS(赤ロープ)

SRS(ステーショナリーロープシステム)の図・左。青ロープをバックアップとして使用する配置。バックアップとして使用SRS(ステーショナリーロープシステム)の図・右。青ロープをクライミングラインとして使用する配置。バックアップとして使用
クライミングラインとして使用

SRS(青ロープ)

11.3.4 SRS、キャノピーアンカー(CA)とベーサルアンカー(BA)

前で左図を紹介したが、右図のようにロープを設置しても、登攀・下降によってロープ設置個所のロープが移動しない。左図と右図を区別するために左図をキャノピーアンカー(CA)、右図をベーサルアンカー(BA)と呼ぶ。ベーサルアンカーは、設置位置によってボトムアンカーやトランクアンカーなどと呼ばれることがある。
同じSRSではあるが、ロープの設置方法の違いで木の股に掛かる荷重が異なることに注意が必要である。

キャノピーアンカー(CA)の図。ロープを樹冠の高所(木の股)に固定するSRSの設置方法。キャノピーアンカーベーサルアンカー(BA)の図。ロープを樹木の基部に固定するSRSの設置方法。ベーサルアンカー

【参考】MRS・SRS 比較表 — 支点・フリクション系の荷重およびアンカー方式による相違 —

MRS(Moving Rope System)とSRS(Stationary Rope System)について、タイインポイント(TIP)に作用する荷重を中心に整理する。SRSはアンカー方式(キャノピー/ベーサル)により力学および運用が変化するため、両方式を分けて並記する。荷重は登攀者の体重を W として表記する。

ロープの状態
MRSTIPを通って動く(折り返し)
SRS キャノピーアンカー樹上で固定し、単線を登る
SRS ベーサルアンカー基部で固定し、TIPを越えて単線を登る
単線の張力
MRS約 W/2(2脚で分担)
SRS キャノピーアンカー約 W(単線)
SRS ベーサルアンカー約 W(単線)
フリクション系の荷重
MRS約 W/2
SRS キャノピーアンカー約 W
SRS ベーサルアンカー約 W
TIP(支点)荷重
MRS約 1倍(≒ W)
SRS キャノピーアンカー約 1倍(≒ W)
SRS ベーサルアンカー約 2倍(≒ 2W)
TIP荷重の分散の容易さ(リダイレクト等)
MRS移動機能を阻害する可能性があるため、ダブルプーリーなど摩擦の軽減措置が必要
SRS キャノピーアンカー容易。固定アンカーのため、複数支点の荷重分散・リダイレクト構築が可能
SRS ベーサルアンカー容易。同上。基部側のため、地上からの調整も可能
荷重方向のコントロール(合力の鉛直成分)
MRS限定的。リダイレクトには摩擦軽減が必要となり、加えて複数のリダイレクトは枝幹との摩擦が増えるため、フリクションの操作が困難
SRS キャノピーアンカー可能。リダイレクトで上向き成分を加え、枝の鉛直(曲げ)荷重を抑える設計が可能
SRS ベーサルアンカー容易(自由度最大)。二脚を独立に方向づけられ、条件次第で鉛直成分を相殺しうる自由度が高い
ロープ使用量
MRS往復分(2倍手繰る)
SRS キャノピーアンカー回収式=往復分、非回収式=片道分
SRS ベーサルアンカー往復分。降下器具(ディッセンダー等)を介し、クライマーを地上まで降下させる目的でロープを設置した場合は3倍分
アンカー位置
MRS樹上
SRS キャノピーアンカー樹上
SRS ベーサルアンカー手元/樹上
点検対象
MRSTIPとスタンディング側のロープ
SRS キャノピーアンカーTIPと回収側ロープ
SRS ベーサルアンカーTIPとスタンディング側のロープ
グラウンドワーカーによる管理(地上ビレイ)
MRSMRSビレイで可能
SRS キャノピーアンカー不可
SRS ベーサルアンカーボトムアンカーにディッセンダーなどの降下器具を介してロープを設置した場合可能

※ 数値はいずれも静的・理想モデル(2脚が垂直平行、TIP摩擦を無視)における近似値である。実際には脚の開き角、TIPでの摩擦、および墜落・衝撃時の動的荷重によって値は変動し、特に動的ピーク荷重は上記の静的値を大きく上回る。本表は方式間の相対的な傾向を示す基準として用いること。

※ MRSのフリクション系(フリクションヒッチ・フリクションデバイス)にかかる荷重は、TIP(ロープのタイインポイント)での摩擦に加え、枝幹へのロープ接触による摩擦にも大きく影響される。これらの接触摩擦が左右の脚の張力配分を変えるため、実際の保持荷重は上記の理想値(約 W/2)から変動する。一般に接触摩擦は荷重の一部を分担してヒッチ側の張力を下げる一方、ロープの走行抵抗を増す。フリクションセーバー等の使用や枝幹の樹皮状態によって、その影響度は大きく異なる。

11.3.5 その他1(MRSとSRSの複合システム)

その他、MRSとSRSを複合的に組み入れたシステムがある。力学的、作業効率などに有利な方法も検討、選択は可能であるが、レスキュー計画を必ず入れた作業システムを選択してほしい。クライマー、グラウンドワーカーに依らず作業チーム皆の安全が最優先されるべきである。

その他の情報は、「ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足―SRSベストプラクティス―」参照

11.3.6 その他2(クライミングラインによるぶら下がり作業)

クライミングライン(移動用ロープ)による登攀、作業箇所までの移動、地上への降下以外で、クライミングラインとワークポジショニングランヤードによる安定姿勢確保等ができない場合、クライミングラインによるぶら下がり作業は、以下の5つの要件を満たすこと。

  • 再度、クライミングラインとワークポジショニングランヤードによる安定姿勢確保による作業や代替作業の可能性を検討し、それらが実際の作業において難しい場合。
  • クライミングラインにぶら下がって行う作業が短くなるような作業計画を作成する。
  • 1つの作業システム、2つの作業システムの併用(ダブルクロッチ)どちらの安全性が高いか精査し、安全性が高い方法を採用する。2つの作業システムの併用の場合、システム内の身体を保持する箇所にトゥース(刃)のついたバックアップシステムは使用しない。加えて、2つのシステムは緩みがない状態を保つこと。1つのシステムが失われた場合、木のタイインポイントに衝撃荷重が掛かってはならない。樹上作業者の大きなスイングが起ってはならない。
  • 使用するワークポジショニング用器具は、サスペンショントラウマを軽減するため、バットストラップが付いたものを使用する。もしくは後付けのバットストラップを使用すること。(大腿部の静脈を圧迫して血流障害を防止するための措置を行うこと。)
  • 作業中、足のしびれや身体の不調を随時確認し大腿部への荷重を時々抜くこと。

11.4 摩擦軽減措置など

樹上作業で、クライミングラインを使用する場合、クライミングラインと枝幹との摩擦が安全性に寄与する場合と、リスクとなる場合がある。リスクとなる例として、タイインポイントにおける木の股とロープの摩擦が、樹皮やロープの損傷につながる場合が挙げれらる。そのような場合、フォールスクロッチと呼ばれる器具を使用し樹皮やロープの損傷を防止する措置を講じること。

11.5 チーム人数の確保

2.0mを超える樹木作業において、地上に少なくとも一人の作業者(第二の樹上作業者または訓練を受けた作業者)は視覚・音声の届く範囲に配置され、明確なコミュニケーション手段を確立していること。この地上作業者は、作業者の状態を常時把握し、空中レスキューを実施できる能力を有するか、異常を認知した場合は即座に救助・緊急対応を開始できる状態にあること。加えて地上の安全管理(立入禁止区域の確保・第三者への対応)も担う。

加えてグラウンドワーカーは、クライマーの疲労軽減のため、樹上作業を優先して効率よく行えるように配慮し行動する。また、クライマーによる確認が困難な箇所(チェンソーによる切残し、ロープの干渉、切り離す枝幹の大きさ、予想される動きなど)のサポート、地上のロープを含むギア類の配置など仕事は多岐にわたり、役割は重要である。

11.6 タイインポイント(アンカー)の選択

クライマーやグラウンドワーカーが現場で行う簡易評価(一次スクリーニング)を実施し、構造的に健全で作業中に加わる荷重に耐えられるタイインポイントを選択し2名分の体重を掛けて安全性の精査を行わなければならない。タイインポイントは可能な限り作業箇所より上方に設定し、クライミングルート上方に折れ枝等の危険枝が存在してはいけない。可能であれば横移動を軽減する箇所(ストラックバイの可能性が少ない箇所)が望ましい。ポジショニング用アンカーは幹・枝直径10cm以上を基準とする(樹種・状態により要判断)。枝の向き、荷重がかかる方向により幹・枝直径が10cm以下もあり得ること。接合部の状態(内包樹皮の有無、亀裂)、樹種による強度特性を評価する。広範囲の横移動には複数のタイインポイントが必要になる場合がある。不適切な支持点の選択は、そのまま墜落リスクに直結する。「自分の命を預ける点を、自分で評価し、自分で選ぶ」という原則である。加えて樹上に到達したら作業前に、使用しているタイインポイントの健全性及び樹冠部分のインスペクションを再度行うこと。

11.7 分岐部が存在しないタイインポイント(アンカーポイント)

側枝の無い箇所で幹部に単に回しただけの方法は認められない。タイインポイントに設置したロープが張力の有無に関わらず、ずり落ちない措置を講ずること。加えてその措置は張力のかかる方向によって意図しない移動・回転が起こってはならない。

11.8 作業開始から地上へ降下まで

作業開始から作業を終え、地上に降下するまで、クライマーは常時タイインし、ロープの長さを短く調整し、張力をかけた状態で使用すること。

11.9 登攀中の確保

移動時、最低1本のロープで身体を保持し続け、もう一つの身体確保(落下防止を講じることができる)手段を保持していること。

11.10 安定姿勢の確保

樹上作業者は作業時、可能な限り、2つの独立した支持点に接続すること(二重確保)が推奨される。また、両手両足を枝幹に配置した3点支持による安定姿勢により、両手を自由に使用できる状態(安定姿勢)により作業を行う。一方のシステムが万一破損した場合でも、もう一方が作業者を支持する。これは冗長性(リダンダンシー)の原則であり、「一つの失敗で命を落とさない」ためのシステム設計思想である。「切る前に、自分の位置が安全かを確認する」ことが鉄則である。切断対象と支持点が同一の枝でないことを確認する。

11.11 タイインポイントの追加・変更

新しくタイインポイントを追加・変更する場合は、現在使用しているタイインポイントを解除する前に、新しいタイインポイントへ全体重を掛けて、枝の強度と、システムの安全性、枝の動き・音等の確認をその都度行うこと。

11.12 チェンソー使用時の確保

樹上においてチェンソーを使用するときは、クライミングラインに繋ぎ留められた状態において、これに加えて第二の確保手段(ワークポジショニング用ランヤード又は第二のクライミングライン)を使用しなければならない。(チェンソー使用時はダブルランヤードや、2in1ランヤードの両端使用は不可。)

チェンソーは作業者または樹木にバンジーコード等で固定しなければならない。但し、チェンソーバーが切り口に挟まり、切り落とす枝幹とチェンソーが共に落下することが予想される場合は、バンジーコード等を外す必要がある。片手操作は原則として禁止(特定の限定的な状況を除く)。切断時にはキックバック、プッシュバック、プルインの反力を予測し、体勢を整える。樹上でのチェンソー事故は重篤な結果をもたらすため、地上以上に慎重な操作が求められる。

チェンソー事故は切り始めと終わりに多く起こる。そのためエンジン始動前、ソーチェンのロックを確認することに加え安定姿勢を保つこと。切り終わりにガイドバーを引き出す際、ガイドバーの重さで安定姿勢が崩れることが多く、その際にソーチェンによってロープ類を損傷する。そのため、ガイドバーを木の中なら引き出す前にチェンソーのエンジンを停止するか、ソーチェンをロックすること。

11.13 ツリースパイク使用

ツリースパイクの使用は伐採する樹木にのみ使用し、保全する樹木には使用してはならない。ギャフ(爪)は樹皮と形成層を損傷し、樹木の健康に悪影響を与えるためである。ツリースパイクを使用する場合でも、適切なランヤードとの併用が必要である。ギャフ(爪)の状態を点検し、鋭利に保つ。鈍ったギャフは滑りの原因となり、危険である。分岐や枝などがない枝幹にランヤードの回し掛けは、落下の危険があるため不適。クライミングライン併用を推奨。

11.14 ギアの受け渡し

樹上での工具の受け渡しは、手渡しではなくロープによる吊り上げ・吊り下げで行う。工具の落下は地上作業者への重大な危険となる。使用しない工具は安全にワークポジショニング保護具に固定するか、地上に降ろす。刃物は鞘に入れた状態で昇降する。樹上で手を放したら落下する状態を作ってはならない。

11.15 地上への降下

地上へ降下する前に地上に降下するに足る長さのロープがあるか、障害物や絡まりがないことを確認すること。降下は制御された方法で行い、自由落下してはならない。MRSもしくはSRSを使用し、適切な速度で降下する。急速な降下はロープに熱損傷を与え、強度を低下させる可能性がある。クライミングラインの末端付近にストッパノットを作成すること。

第12章 高所作業車(キャタピラー式含む)使用

12.1 高所作業車の運転業務に関する法令

  • 運転資格:作業床10m未満の高所作業車の運転資格は、特別教育が必要。
  • 作業床:10m以上の高所作業車の運転資格は、技能講習が必要。
  • 点検・検査:作業開始前点検、定期自主検査(月1回)、特別自主検査(年1回)。
  • 悪天候時の作業禁止:事業者は、高さが2m以上の箇所で作業を行う場合において、強風、大雨、大雪等の悪天候のため、当該作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業に労働者を従事させてはならない。
    • 強風:10分間の平均風速が毎秒10m以上
    • 大雨:1回の降雨量が50mm以上
    • 大雪:1回の降雪量が25cm以上

12.2 高所作業車について

高所作業車は、安全に樹上へアクセスするための有効な車両であるが、適切に操作されなければ転倒、電線接触、墜落、挟まれなど重大な事故の原因となる。加えてバケットの大きさや、機体の進入箇所により作業範囲も限定される。非常時にブーム、バケットを含む操作(下部操作)が車体で行うことができる車両を推奨する。また下部操作方法は作業員全員周知の上で作業を開始する。

12.3 使用前点検

毎日点検を実施する。油圧系統の漏れ、ブーム動作、バケット状態、安全装置(過負荷防止、非常停止)の動作、アウトリガー、灯火類を確認する。

12.4 傾斜地での設置

高所作業車がキャビン付きの車両である場合、キャビンの設置方向について製造メーカーの仕様に基づく。また製造者の定める最大許容傾斜角度を確認し超えないように設置する。自動レベリング(水平調整)がある車両であっても水平確認は確実に行う。車両のタイヤには歯止めを設置する。

12.5 アウトリガー最大張出

アウトリガーを完全に展開し適切な敷板を使用して安定させる。片側だけの展開や不完全展開、設置場所の地盤がアウトリガー荷重を支えられるか評価する。舗装下の空洞、側溝蓋の耐力、軟弱地盤も注意する。地盤の沈下は転倒の原因となる。

12.6 作業範囲と負荷制限

作業範囲と許容荷重を厳守する。バケット定格荷重には作業者体重、ロープなどの器具が含まれる。樹上作業ではバケット内へ剪定枝を引き込む場合があるが、枝の重量も含めてバケット定格荷重を超えないように、できる限りバケット外に落下させるなどの注意が必要である。過負荷は転倒や高所作業車の破損の原因となる。

12.7 バケット内での墜落を防止するための措置

樹上作業におけるバケットからの落下により、スイングバック事故、電線へ落下、ショックアブソーバーの展開による地上への激突、一人作業時、ぶら下がった場合のレスキュー困難などの危険を考慮して、フォールアレストシステムを採用するか、レストレイントシステムを採用するか作業状況に応じて最も安全な方法を講じる必要がある。

単に要求性能墜落制止用器具(フルボディーハーネス)を着用すれば良いという考え、選択は慎むべきである。レストレイントシステムにより墜落自体を防止することも有効な選択の一つである。

その他の情報は、「ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足―高所作業車のバケット内作業におけるレストレイント保護具―」参照

12.8 バケットからの乗り移り・乗り出し

バケットから樹木への乗り移り、乗り出しは、不安定な体勢での移動中の墜落リスクが高いため、原則禁止。労働安全衛生規則では、高所作業車について「主たる用途以外に使用してはならない」と定めている。製造者(メーカー)の仕様で、樹木への乗り移りも用途に含まれるか否かを確認すること。樹木での作業が必須であって、地上から登攀するよりバケットから樹木への乗り移りの方が安全性な場合であって、かつ労働者に危険が及ばない場合は事業者の判断により限定的に可能とする。ただし以下の要件を満たすこと。

  • ロープクライミングの安全教育を受講していること。その内容を厳守すること。その際、クライミング時の各種確認はバケット内の作業床を地面と想定して行うこと。
  • 地上まで降下可能な長さがあるロープを使用すること。
  • バケットからの乗り出しは行わないこと。タイインポイントの安全性に加えシステムの有効性(動きの制御)を確認後、樹木のタイインポイントに体重を掛けた状態で、バケットを降下させること。

12.9 ブーム操作

旋回、伸縮、上下動はバケット内の作業者が安全な体勢にあることを確認してから行う。急激な操作はバケットの揺れを引き起こす。また、ブームの倒しや、ブームの伸長、旋回など、外側への荷重変位が発生する操作は控え、ブームの起こし、ブームの縮小を優先操作とする。

12.10 電線などの電気設備付近での操作

絶縁性能を持った高所作業車を使用する。すべての可動部分がMAD(Minimum Approach Distance:最小接近距離)を維持する。そのためにスポッター(Spotter:監視人)を配置する。特に樹木作業前のバケットの移動経路と作業終了後のバケットの移動経路が変化する場合は電線などへの注意が散漫とならないように注意が必要である。絶縁ブームでも過信しない。ブームの表面の汚れ、湿気、損傷は絶縁性能を低下させる。

12.11 倒木などへの下方からのアクセス禁止

倒木や折れ枝などの掛かり木の状態にある箇所へ接近する際は、その下方から接近してはならない。接近する際は不意に倒木、折れ枝等の落下が生じた場合であってもバケットに接触しないための離隔距離が必要である。それが不可能である場合、他の作業方法を選択する必要がある。

12.12 バケット内でのチェンソーの使用

チェンソーはバンジーストラップなどで固定し、不意の落下を防止する。また、ソーチェーンによるロープなどの損傷防止のため、ソーチェーンが露出しないようケースに収納すること。また切断した枝が電線、ブームやバケットに接触しないよう注意する。

12.13 走行時のブームの格納

移動時はブームを完全に格納する。展開したままの走行は転倒、電線接触、衝突の原因となる。加えて、作業員を搭乗させたままの車両の移動も原則禁止。

12.14 バケット内の整理整頓

余計な工具や材料を置かない。落下した工具は地上の作業者に重大な危険を及ぼす。

12.15 旋回範囲の管理

旋回範囲内に作業者が立ち入らないようスポッター(Spotter:監視人)を配置し管理する。ブームやバケットとの挟まれ事故を防止する。

12.16 樹木とブームの接触防止

ブーム操作中にブームが樹木に接触することを避ける。接触によりブーム破損や車両不安定化が生じる。

12.17 高所作業車からのレスキュー

バケット内の作業者が負傷した場合のレスキュー手順を事前に策定する。下部操作装置による降下を計画する。

12.18 使用後の措置

ブーム格納、アウトリガー収納、車両を安全な状態にし、作業後点検を行う。絶縁部の損傷が発見された場合は感電事故を誘発する恐れがあるため修理完了まで使用できないように車両の管理を行う。異常は記録し次の使用者に伝達する。

第13章 ハシゴ使用

樹木作業においてハシゴの使用は、樹冠への主要なアクセス手段として使用される場合と、樹冠作業のため、最初の下枝へのアクセスのための補助的手段として使用することが多い。

樹冠への主要なアクセス手段として使用される場合とは、ハシゴ上での作業も含まれる。ただしハシゴは作業床ではなく昇降設備であるため、「作業場所」として長時間使用することは本来望ましくない。

13.1 ハシゴ使用前の確認

13.1.1 樹木の強度確認

樹木自体が支えとして機能しない場合、ハシゴの設置は行わない。支えとして機能しないとは、枯損、細い枝、斜めの枝、腐朽、空洞、根返りの恐れがある木、強風時、積雪・凍結時などが挙げられる。

13.1.2 地面の確認

安定した水平な地面に設置する。軟弱地盤、ぬかるみ、砂利の浮いた地面、傾斜地、凍結面などの場合、敷板などでハシゴ下端の設置を水平及び安定にする。加えて敷板及びハシゴ下端の滑りには十分注意し、防止措置が必要である。

13.1.3 ハシゴの点検

使用前にハシゴを点検する。横桟の緩み、割れ、変形、側桁の損傷、滑り止めの状態を確認する。損傷したハシゴは「修理して使う」のではなく廃棄する。

13.2 ハシゴの種類

樹木作業では、電線付近で作業を行う場合は、電気絶縁性に優れているFRP製等のハシゴを使用すること。(金属製ハシゴを使用してはならない。)その他、長さ、耐荷重、収納性能等が作業に適しているかどうか確認する。また、運搬時ハシゴの上端下端を構造物や電線に接触させないよう注意して運ぶ。

13.3 設置の基本

ハシゴは安定した水平な地面に設置する。設置角度は約75度(4対1の比率:高さ4に対して足元の距離1)が基本である。突き出し長さは、到達面より60cm以上突出が原則である。樹木作業の場合、枝のしなり等を考慮して90cm以上突出を推奨する。

13.4 ハシゴの固定

ハシゴ使用時は、木等とハシゴ上端が必ず固定されている必要がある。ハシゴを固定するまではハシゴを昇る作業員とは別の作業員によるハシゴの保持が必要である。ハシゴの固定はランヤード設置後に行う。加えてハシゴ下端が滑らないようスパイクや滑り止めを使用する。ハシゴの横振れ等防止の追加措置としてハシゴ上両端それぞれをロープにより地面に向かってハの字に固定することも有効である。

13.5 ハシゴの昇降

ハシゴの昇降時には、3点支持を維持する。3点支持とは、通常、両手・両足の4点のうち3点により身体を支えることを指す。工具などを手に持ったまま昇降しない。工具などの上げ下ろしはロープなどを使用して行い、工具などには樹上からの落下防止のためのバンジーストラップなどを取り付けること。

13.6 ハシゴ上での作業

ハシゴは昇降設備であるため、作業箇所としての使用は望ましくない。加えて、ハシゴ上での身体の移動はハシゴの転位に繋がり転落の危険が大きい。しかし、樹木作業ではハシゴ上作業の代替措置が少なく、足場設置も使用時間面、経済面からも現実的でない場合が多い。ハシゴ上での作業は推奨しないが、やむを得ずハシゴ上での作業が必要な場合は、樹木健全性確認、地盤確認、75度設置、上端固定、下端滑り止め、60cm突出、3点支持、工具はロープで揚降、工具等の落下防止措置に加え、「クライミングラインとランヤード」の二重確保が必要である。ハシゴ上では、チェンソーの使用、リギング(枝幹の吊り降ろし)は原則禁止である。

13.7 ハシゴの保管

ハシゴはメーカーの仕様に従い保管を行い、保管中の転倒やつまずき事故が起きないよう保管する。直射日光や雨風から保護する。FRP製ハシゴは紫外線劣化に注意する。

第14章 電気の危険認識

多くの樹木の近くには電線が存在していて、樹木作業者は日常的に電気の危険にさらされる。感電は即死または重篤な火傷をもたらし、生存しても後遺症が残ることが多い。電気は目に見えず、音もなく、臭いもない。「見えない危険」であるのが特徴である。知識と規律でしか身を守れない。すべての電線は、配電停止が確認されるまで「通電している」とみなして扱わなければならない。電気災害を防ぐためには、技術よりも先に「危険を認識する力」が必要である。

14.1 電気とは何か

電気は、電位差によって流れるエネルギーである。難しい理論を理解する必要はない。樹木作業者として重要なのは、次の3点である。

  • 電気は流れる。電気は、流れる経路を探す。
  • 人体も導体になる。人間の体は電気を通す。特に、汗や雨で濡れている場合は危険である。
  • 地面へ流れようとする。電気は、地面へ流れる経路を作ろうとする。

14.1.1 樹木作業で注意すべき導体

  • クライミングロープ
  • リギングロープ
  • スローライン
  • ワイヤー
  • 濡れた枝
  • 金属工具
  • ノコギリ
  • チェンソー
  • 高所作業車
  • 人体

14.1.2 直接接触と間接接触

感電は、電流が人体を通って流れることで起こる。その経路によって、感電は次の2つに分けられる。いずれも重篤な負傷または死亡をもたらす。

  • 直接接触:充電部(電線など、通電している部分)に、人体が直接触れて感電すること。
  • 間接接触:本来は電気が流れていないはずの物(ロープ・枝・工具・機械の金属部など)が、充電部に接触・近接して通電し、それを介して人体が感電すること。

14.1.3 接触電圧(タッチポテンシャル)と歩行電圧(ステップポテンシャル)

地面に電流が流れ込むと、その周囲の地面に電位の差(電位勾配)が生じる。これにより、電線に直接触れていなくても、次の二つの感電が起こり得る。どちらも間接接触の形態である。

  • 接触電圧:充電された物体(電線・倒木・機械など)に触れた手と、立っている足の間に生じる電圧。物体に触れることで人体に電流が流れる。
  • 歩行電圧:電線が地面に落ちた地点の周囲では、地面に電位勾配が生じる。その上を歩くと、開いた両足の位置の電位差が脚の間にかかる。流れ込み地点に近いほど、また歩幅が大きいほど危険が増す。

想定される事例

高所作業車と充電電線の距離が意図せずMAD未満になった場合、地上の作業者は歩行電圧・接触電圧の危険から身を守るため、直ちに全員に警告し、高所作業車から離れなければならない。MADが再確立されるまで、車両と装備に接触してはならない。これは地上作業者が電線接触の「二次被害者」となることを防ぐ新たな規定である。

14.1.4 アーク放電

高電圧では、直接接触しなくても、十分に近接するだけで空気中を電気が飛ぶ(アーク放電)。アークフラッシュは、電圧が高いほど、また湿度が高いほど、より長い距離で発生する。MADが単なる「接触防止」ではなく「アーク放電防止」も含む距離である理由がここにある。「触れていないから安全」という認識は、高圧線の前では通用しない。

14.2 電線の種類の識別

現場に存在する電線の種類を識別できなければならない。送電線、高圧線、低圧線、通信線、ケーブルテレビ線、インターネット回線などがある。外見だけでは電圧を判断できない場合がある。判断がつかない場合は、最も危険な電線(最高電圧)とみなして対応する。「たぶん通信線だろう」という推測は、感電という命に関わる誤判断となり得る。また、通信線の切断は通信障害及び復旧費用の発生など影響が大きく、慎重な判断を要する。

日本の電圧区分は、電気設備に関する技術基準を定める省令により、次のように定められている。家庭や事業所で使う100V・200Vは、いずれも低圧である。

区分交流(AC)直流(DC)
低圧600V 以下750V 以下
高圧600V 超 〜 7,000V 以下750V 超 〜 7,000V 以下
特別高圧7,000V 超7,000V 超

※ 高圧6,600Vを柱上変圧器で100V・200Vに下げて使用する。契約電力50kW以上の事業所では、6,600Vの高圧を施設内のキュービクルで受電する。

電柱側面図。高圧線(配電線)6,600V、変圧器、低圧線(配電線)100V/200V、通信線、各種引き込み線の位置と、高圧線・高圧引き込み線・低圧引き込み線それぞれの離隔距離(行政通達値・電力会社推奨値)を注記した図。

図 電柱の電線の電圧層(上にあるほど高電圧。)

14.3 電波塔と高周波電磁波

感電とは別の電気的な危険として、電波塔や携帯電話基地局の近傍での作業がある。電波塔から発信され、携帯電話などで使われる電波は、高周波(高周波電磁波)に分類される。

  • 電波の強さは、アンテナからの距離の二乗に反比例して小さくなる。
  • 総務省の電波防護指針の基準では、電波塔から数十メートル離れれば、人体への影響は事実上ないレベルとされる。
  • ただし、大電力の放送塔等では、基準値を超える区域に柵が設けられていることがある。

電波塔の近傍で作業する場合は、事前に離隔距離、電磁波対策の有無、可能な作業時間などを検討する。

14.4 作業前の危険認識

14.4.1 有資格者によるリスク判断

作業の前に、有資格者が電気的危険のリスクの有無を点検・判断しなければならない。これは、現地調査の前提となる最初の手順である。これは、単なる「電線があるかないか」の確認ではなく、電線の種類、電圧、樹木との位置関係、必要なMADを専門的に評価することを意味する。

  • リスクの存在を見落とさないよう、有資格者が責任をもって点検する。
  • 判断が難しい場合は、自分で結論を出さず、電力会社に相談する。

14.4.2 現地調査における確認事項

  • 電線の有無
  • 高圧線標識
  • 引込線
  • 通信線
  • 支障木の状況
  • 作業機械の使用
  • 緊急時の避難経路

14.4.3 通電の兆候(焼損・炭化)

電線の接触やアークによって、焼けた枝・炭化した幹・焼損した樹皮が見られる場合は、その樹木は通電している可能性があると判断する。

14.4.4 自然災害時の取扱い

夜間や、台風・地震・大雪などの後の倒木処理や復旧作業は、視界の低下、滑りやすい足元、電気の危険性の増大により、平常時の前提が崩れリスクが大幅に高まる。特に台風後の緊急復旧作業では、時間的プレッシャーと危険の増大が同時に発生する。「急いでいるから」という理由で安全手順を省くことが、最も危険な判断である。次のような状態が起こり得る。

  • 停電しているはずの線が、自家発電機からの逆送電(バックフィード)や、電力会社の自動再閉路によって、再び充電される。
  • 高圧線が低圧線に接触(混触)し、低圧線に異常な高電圧が流れる。
  • 断線して地面に落ちた電線が、なお通電されている。
  • 並行する停電中の線に、誘導電圧が生じる。

災害時は、どの電線が・どの電圧で・通電しているかが、外見からは一切判断できない。

災害時・緊急時は、感電を含む被災のリスクが平常時より大きくなる。これらの作業には、専門の有資格者が対応する必要がある。

14.4.5 作業計画

通電線樹木作業の作業計画には、少なくとも次の事項を含める。

  • 電力線位置図
  • 監視人の名称・監視位置
  • 関係機関との連絡系統図
  • 安全要求事項
  • 管轄電力会社
  • 樹木管理会社
  • 通電線樹木作業員とそのレベル
  • 危険低減措置の選択(停電・検電・隔離・接地)

また、作業計画では、危険の特定・危険の共有・危険低減措置の実施を行う。

14.4.6 電線近接作業のブリーフィング

電線が近くにある現場では、ブリーフィングで電線の位置、種類、MADを全員に共有する。電線が作業に与える影響(落下方向の制限、リギングの必要性、使用装備の制限)を明確にする。地上作業者も電線の位置を認識していなければならない。作業前に電気危険チェックリストを実施することを制度化する。チェックリストには、電線の種類と電圧の確認、MADの決定、作業方法の選定、電力会社への連絡の要否、PPEの確認、緊急時対応手順を含める。

14.4.7 電気に関する危険認識の訓練

樹木作業に従事する作業者は、電気危険の認識と対応について訓練を受けなければならない。訓練には、電線の識別、MADの理解、導電経路の認識、電線接触時の対応、停電要請の手順が含まれる。電気は「知識」でしか防げない危険である。

14.4.8 電気事故における原則

  • レスキュー技術より危険認識
  • 救助より安全確保
  • 電源遮断確認が最優先

14.4.9 通電線樹木作業のレベル区分

通電線の近傍で行う樹木作業は、対象電圧及び実施主体により、次の4つのレベルに区分する。

電力会社の委託によらない作業

低圧付近で行う樹木作業を「レベル1低圧通電線樹木作業」

高圧付近で行う樹木作業を「レベル2高圧通電線樹木作業」

電力会社の委託による作業

特別高圧(154,000V 未満)付近で行う樹木作業を「レベル3特別高圧通電線樹木作業」

特別高圧(154,000V 以上)付近で行う樹木作業を「レベル4特別高圧通電線樹木作業」

と定義する。

レベル1低圧通電線樹木作業は、家庭や事業所で使う100V、200Vを対象とする。

レベル2高圧通電線樹木作業は、街路樹や公園の高木の樹冠頂部付近にある6,600Vを対象とする。ただし工場や、ビルなどに配電設備が付随している場合、電線から配電設備までの引込線が低い箇所を通過している場合があるので、注意が必要。

14.5 電力会社との連携

電線近接作業では、電力会社との事前連絡が不可欠である。停電の要請、電線の種類と電圧の確認、作業方法の協議、緊急時の連絡先を事前に確立する。加えて電力会社やNTTなどの通信事業者への連絡が必要になる場合がある。「連絡しなくても大丈夫だろう」という判断は、感電事故や電力供給障害のリスクを生む。

14.6 最小接近距離(MAD)

通電している電線に対して、作業者の体、工具、クライミングロープ、リギングロープ、スローライン、樹木の部分、梯子・高所作業車(絶縁式を含む)が維持すべき最小距離が定められている。MADは電圧によって異なる。樹木作業のMADは、一般的な電気安全基準よりも保守的に設定されている。その理由は、樹木作業には導電性のある材料(湿った木材、金属工具、ワイヤーロープ)と予測できない動き(枝の落下、ロープの揺れ、体の移動)が伴うからである。MADは「余裕」ではなく「生存のための最低限」である。MADを維持できない場合、作業を中止し感電リスクを軽減する措置を講じなければならない。

14.6.1 電圧別のMAD値

通電線樹木作業の区分(レベル)

通電線の近傍で行う樹木作業は、対象となる電圧によって次の4つのレベルに区分する。レベルが上がるほど、必要な離隔距離が大きくなる。

この距離は、作業者の体だけでなく、保持する工具、扱う材料、操作する機械のすべての部分に適用される。「自分の手が届かないから安全」ではなく、「何もかも届かない」状態でなければ安全ではない。

作業区分電圧離隔距離備考
レベル1 低圧通電線樹木作業100V・200V2.0m 以上通達最低値1m、電力会社推奨値2m
レベル2 高圧通電線樹木作業6,600V2.0m 以上通達最低値1.2m、電力会社推奨値2m
レベル3 特別高圧通電線樹木作業22,000V・66,000V3.0m・4.0m 以上電力会社推奨値に従う
レベル4 特別高圧通電線樹木作業154,000V 以上5.0m 以上事前に電力会社と協議のうえ確認した値に従う

※ レベル3・4(特別高圧)は電力会社推奨値に従う。レベル4(154,000V以上)は、事前に電力会社と協議・確認した値に従うこと。

※通達:昭和50年12月17日付け基発第759号「移動式クレーン等の送配電線類への接触による感電防止災害防止対策について」

※電力会社推奨値:関西電力送配電「配電線(電柱)の近くでのクレーン作業や足場の組み立て」

懸垂がいしの個数による電圧判別

電圧懸垂がいし
(目安)
通達
最低値
電力会社
推奨値
備考
6,600V(高圧)ピンがいし1.2m2.0m一般電柱(電力会社配電線)の大半がこの電圧
22,000V2〜4個2.0m3.0m―
66,000V5〜8個2.2m4.0m鉄道用鉄塔では2個の場合あり。要確認
154,000V10〜14個4.0m5.0m―
275,000V17〜24個6.4m7.0m―
500,000V35個程度10.8m11.0m長幹がいしの場合もあり。要電力会社確認

※ 鉄道用鉄塔など、上表と個数が異なる場合がある。判別に迷うときは電力会社・鉄道会社へ確認する。

※通達:昭和50年12月17日付け基発第759号「移動式クレーン等の送配電線類への接触による感電防止災害防止対策について」

※電力会社推奨値:関西電力送配電「配電線(電柱)の近くでのクレーン作業や足場の組み立て」

がいしの種類

がいしの種類を示す図。低圧用がいし(使用電圧600V以下)、高圧用がいし(使用電圧6,600V)、特別高圧用がいし(使用電圧22,000V以上)の3種類を、電柱に取り付けられた実物写真で並べたもの。

14.6.2 電線は動くことを前提にする

電線近くで作業する有資格者は、電線が固定物ではないことを理解していなければならない。

  • 風で揺れる。
  • 着雪・着氷の荷重でたわみ、位置が変わる。
  • 夏場の高温時には、伸びて下がる。

樹木自体も風で揺れるため、電線と樹木の両方が動くことを前提にMADを評価しなければならない。そのため、離隔距離は静止して見えるときの見た目よりも大きくとる。

14.6.3 高地でのMAD標高補正

高地(標高の高い場所)では、空気の絶縁性能(絶縁耐力)が低下する。このため、標高に応じてMADを補正し、離隔距離を平地よりも大きくとる必要がある。

14.6.4 最小接近距離(MAD)が確保できない場合

作業のどの局面でも最小接近距離(MAD)を保持できない場合は作業を停止し、感電リスクを軽減する措置を講じなければならない。距離をとれない状態で作業を続けてはならない。

14.7 電線接触時の対応

樹木の一部や装備が電線に接触した場合、作業者はその樹木や装備から離れ、電力会社に直ちに通報しなければならない。電線の損傷を隠したり、報告を怠ったりすることは、後続の作業者や一般市民を危険にさらす。連絡は法的義務であると同時に、プロフェッショナルとしての責任である。電線に接触している樹木や装備に触れてはならない。地面に落ちた電線にも近づいてはならない(歩行電圧による感電のリスク)。感電者がいる場合、救助者は自分が感電しないよう注意しながら救助する。「助けに行った人も感電する」二次災害を防がなければならない。

14.7.1 樹木と電線の接触

樹木の枝が既に電線に接触している場合、その樹木全体が帯電している可能性がある。湿った幹や枝は導電性が高く、感電のリスクがある。電線に接触した樹木には、停電が確認されるまで絶対に登ってはならない。「木は絶縁体」という誤解があるが、生木は導電体である。

14.7.2 切断した枝の電線への接触

剪定や伐採時に切断した枝や幹が落下して電線に接触するリスクを常に考慮する。落下物の軌道上に電線がある場合、枝幹の制御降下(リギング)または落下方向の変更が必要である。枝が電線に接触すると、電線を損傷させ、停電や電線の落下を引き起こす可能性がある。

14.7.3 車両と電線の接触

クレーン、高所作業車、トラックのブームなど、車両の可動部分が電線に接触するリスクを評価する。車両が電線に接触した場合、車両全体が帯電し、地面との間で感電が発生する。車両のオペレーターは、キャビン内に留まり、電力会社の到着を待つ。降りる必要がある場合は、両足を揃えて飛び降り、歩幅で電圧差が生じないようにする。

14.8 電線付近作業

14.8.1 慣れへの警戒

電気事故の最大の原因は、技術不足ではなく「慣れ」である。経験を積むほど、電線の存在に対する警戒心が薄れる。特に低圧線(引込線、二次側線)に対して「たいしたことない」と油断する傾向があるが、実際には低圧線による死亡事故も発生している。「電気は経験や意図を問わない」という認識を常に更新し続ける。繰り返し作業による自動操縦状態(オートパイロット状態)と言われる「意識的に集中しなくても無意識のうちに物事をこなしている心理状態」を回避するため、定期的な休憩と意識的な集中力の回復を行う。

14.8.2 通電線に向き合う原則

電線近接作業では、常に電線を視界に入れて作業する。電線に背を向けた状態での作業は、MAD侵入に気づかないリスクを高める。切断作業は正面で行い、背後側では行わない。MADでの枝幹切断は、実行前に頭の中で複数回リハーサルしてから行う。これは「危険を正面から見据えることが安全の基本」であるという原則である。

14.8.3 停電要請

電線に近接した樹木作業を行う場合、可能な限り電力会社に停電を要請する。停電が最も確実な安全対策である。停電が不可能な場合は、電線の種類と電圧に応じた適切な作業方法を選択する。停電後は、接地が行われていることを確認する。「停電した」と言われても、停電箇所・範囲・停電期間が明確でない場合は、通電状態として扱う。

つまり「停電=接触してよい」ではなく、停電後も通電設備と同様の警戒を維持することが基本原則である。

手順:停電 → 試験(検電) →ボンディング→ 接地 → 作業 → 作業完了確認 → 再通電

重要な点は次のとおりである。

• アーボリスト自身が「停電した」と判断しない。

• 電力会社の有資格者から正式な通知を受ける。

• 接地の設置を目視で確認する。

• 再通電後は、即座に活線(通電中)として扱う。

14.8.4 ボンディングと接地

電線作業では、適切なボンディングと接地が安全の基本である。

ボンディング(Bonding)とは、複数の金属部分を導体で接続し、電流を地面へ逃がすのではなく、「電位差をなくす」ことを目的とする。同じ電位にすることである。仮に電圧がかかっても、作業者が同時に触れている部分同士の電位差が小さくなるため感電リスクが下がる。

接地(Grounding)とは、機器や設備を大地と接続することである。漏電や落雷などで異常電流が発生した際に、電流を安全に地面へ流す、過電圧を抑える、ブレーカーや保護装置を確実に動作させる、ために行う。

配電線の活線近接作業では、「まずボンディングし、その後に接地する」という考え方が重要である。理由は、接地線を接続する際に電位差があるとアークが発生する可能性があるためである。樹木作業者は通常、接地作業を行う立場ではないが、

  • 接地された設備だから安全とは限らない
  • 金属同士の電位差が感電を生む
  • 同時接触(simultaneous contact)が危険

という意識が大切である。

14.8.5 複数の電線がある場合

電柱には複数の電線(送電線、配電線、引込線、通信線)が架かっていることが多い。それぞれの電線の電圧と位置を認識し、最も危険な電線に対するMADを基準とする。

MAD(最小接近距離)は、近くに見える電線ではなく、作業範囲内に存在する「最も高い電圧」を基準に決める。

  • 1本の電柱や同じ電線路に、低圧・高圧・特別高圧が混在していることが多い。
  • どの電線が何ボルトかは、地上からの外見だけでは判別できない。
  • 枝やロープは、最も近い線ではなく、より高い電圧の線へ向かって落下・振れることがある。

電圧が判別できない場合は、最も高い電圧とみなして離隔をとる。一つの電線を避けても、別の電線に接近する可能性を常に意識する。不明なときは作業を進めず、電力会社へ確認する。

14.8.6 電線の付属装置

電柱には、変圧器、ヒューズ、開閉器、支線などの付属装置がある。これらにも電気的危険があり、接触してはならない。支線(ガイワイヤー)は通常接地されているが、電線の事故時には帯電する可能性がある。電柱の付属装置は、電力会社の許可なく触れてはならない。

14.8.7 悪天候時の作業中止

悪天候時は、通電中の電線近傍での作業を中止する。労働安全衛生規則では、悪天候の定義が次のように示されている。

区分定義
強風10分間の平均風速が毎秒10m以上
暴風瞬間風速が毎秒30mを超える
大雨1回の降雨量が50mm以上
大雪1回の降雪量が25cm以上
地震中震(震度4)以上

根拠:労働安全衛生規則 第522条、解釈例規(昭和34年2月18日 基発第101号)。「悪天候のため」には、気象注意報・警報が発せられ悪天候が予想される場合を含む。

雨天、霧、高湿度の状況では、電気の危険性が増大する。水分が導電経路を形成し、アーク放電の距離も延びる。湿ったロープ、湿った木材は導電性が高まる。悪天候時の電線近接作業は、晴天時よりも大きなMADを確保するか、作業を中止する判断が必要である。

14.8.8 暴風雨・災害時の特別規定

暴風雨や災害時の電線が関与する樹木作業は、電力会社の正式な指名業者のみが行うものとする。災害時は通常と異なる配線構成や損傷した電線が存在し、すべてのインフラが通電している可能性があるとみなす。

14.8.9 PPE(個人用保護具)

電線近接作業時のPPEは、電気危険に対応したものでなければならない。ただし、PPEは電気危険に対する主たる防護手段ではなく、MADの維持が最も重要な安全対策である。線路保守作業者には、電圧に応じた等級の絶縁手袋、絶縁スリーブ、電気対応のヘルメットなどが要求される。PPEは使用前に点検し、絶縁性能が維持されていることを確認する。絶縁手袋には穴があいていないことを、エアテストで確認する。
活線接近警報器(高所作業車など、無意識に高圧電線へ近づいてしまうことによる感電事故を防ぐための装置)の装着も有効に活用すること。

14.8.10 被覆線への過信

電線の被覆は、必ずしも絶縁体ではない。配電線の被覆は主に風雨からの保護を目的としており、人体の接触に対する完全な絶縁を保証するものではない。特に劣化した被覆、樹木の枝等と摩擦により損傷した被覆は、絶縁性能が失われている可能性がある。「被覆があるから安全」という思い込みは、最も危険な誤解の一つである。すべての電線は被覆の有無にかかわらず、充電されているものとして扱う。

14.8.11 保護具・絶縁カバーへの過信

電線に絶縁カバー、ブランケット、ホース、スリーブその他の場合でも、MADは維持しなければならない。絶縁カバーは電線への接触を防ぐためのものではなく、風雨等から電線を保護するためのものである。「カバーがあるから安全」という認識は許されない。

  • 市販のゴム手袋・ゴム長靴には絶縁機能が明確ではないため、感電防止用保護具には含まない。「着けているから安全」ではない。安全の基本は、あくまでMAD(最小接近距離)を守ることである。
  • 電線近傍で作業する場合は、絶縁カバーを取り付けたうえで作業する。ただし、絶縁カバーがあってもMADは変わらない。
  • 植生が、通電中の電線・電気施設に接触している、又はMADの範囲内にある場合は、乾燥した絶縁道具以外を使用してはならない。

14.8.12 電気的危険がある場所での器具選択

  • 電気的危険がある場所では、非導電性のハシゴを使用する。
  • 電線の近くで使用するポールツール(ポールソー、ポールプルーナー等)は、FRP(繊維強化プラスチック)または木製のものでなければならない。金属製のポールは導電体であり、電線接触時に感電の危険がある。
  • ワイヤコア・ランヤード(金属芯入りランヤード)は、通電線・通電電力施設・送電線の近傍で使用してはならない。

14.8.13 グラウンドワーカーによるMADの監視(スポッターの配置)

通電線・電気施設での作業には、専任のスポッター(監視員)を配置し、距離を監視する。スポッターは、高所作業車のブームやバケットがMADに侵入する可能性がある場合に、全地上作業員(装備オペレーター含む)に警告し、車両および付属装備から離れるよう指示する。MADが視覚的に確認され通信されるまで、作業を再開してはならない。

  • MADが侵害されるおそれがある場合、スポッターは、機器操作者・地上作業員を含むすべての作業員に、それぞれの機器から離れるよう警告する。
  • バケットの操縦者が進行方向の視界を遮られている場合は、スポッターが見えない部分を補佐する。
  • バケット操作時の移動経路は事前に決定し、操縦者・スポッター・グラウンドワーカーの全員に周知する。

14.8.14 樹上作業での接近回避(クライミング)

  • クライミングルートは電線から離れた側に設定する。電線の位置を確認しながら、電線に正対して登攀することが望ましい。
  • アンカーポイントは電線から離れた上方に設置する。スイングバック(振り戻し)が発生しても、電線に向かってスイングしない位置とする。
  • 切り落とした枝などを、電線の上に落としてはならない。

14.8.15 樹上作業での接近回避(リギング)

電線近くでのリギングは、最も危険な組み合わせの一つである。セクションの落下経路、ロープの振れ、振り子運動のすべてが電線接触のリスクとなる。制御降下の経路を電線から十分に離し、必要に応じて停電を要請する。

14.8.16 チェンソーの使用

電線近くでのチェンソー使用には、特有のリスクがある。チェンソーの金属部分が電線に接触すると、作業者に電気が流れる。切断時のチェンソーの動き、切断された枝の動き、キックバックによる予想外の動きが電線への接触を引き起こす可能性がある。電線近くでは、小さな切断を繰り返す慎重なアプローチが必要である。

14.8.17 高所作業車の電気的安全条件

絶縁ブームの高所作業車の使用が推奨。絶縁ブーム式高所作業車は、一般の高所作業車の構造規格に加え、電気絶縁性能を維持するための耐電圧試験が求められる。高所作業車そのものの構造要件は「高所作業車構造規格」で定められているが、絶縁性能については主に電力業界規格やメーカー基準により管理されている。「絶縁ブーム車だから高圧線に触れても安全」ではない。絶縁性能は、ブーム表面の汚れ、雨水、樹液、薬剤散布液、FRPの劣化などによって大きく低下する。絶縁ブームは一次保護ではなく、最低離隔距離(MAD)を維持するための補助保護手段として扱う。

絶縁ブームの高所作業車の所有状況は多くはなく、また、レンタルにも絶縁ブームの高所作業車の配置は、種類・数量が限定されることが多いのが現状である。その場合、最低離隔距離(MAD)を含めた感電対策をしっかり行い、作業員の安全を確保すること。

日本で一般的に採用される絶縁性能

電力配電線(6.6kV)作業用の絶縁ブーム車では、一般的に次のレベルの耐電圧性能が採用される。

項目一般的な基準
定格使用電圧6.6kV配電線
絶縁ブーム耐電圧約20kV~50kV
FRPブーム絶縁抵抗数百MΩ以上
定期耐電圧試験年次または特定自主検査時

実務上は「6.6kV線路に接近して作業できる絶縁性能」を確保するため、使用電圧の数倍の試験電圧で確認される。

14.8.18 高所作業車のバケット内への電気ケーブル持ち込み禁止

電線の近くで作業する際、車両または他の電源からバケット内へ電気ケーブルやコードを引き込んではならない。電気ケーブルは、絶縁ブームの絶縁性能を無効化する導電経路となる。照明器具、電動工具のコードも同様である。

14.8.19 高所作業車での接近回避

高所作業車(バケット車等)を通電線の近傍で用いる場合は、次による。

  • ブーム・バケットなど高所作業装置のいずれの部分も、通電中の電力線・電柱・類似の導電性物体に接触したり、MAD(最小接近距離)を侵害したりしてはならない。
  • 高所作業装置と通電中の電力線との距離がMAD未満になった場合、地上作業員は高所作業車などの車両から離れ、MADが再び確保されるまで近づいてはならない。
  • MADの侵害や接触があった場合、グラウンドワーカー・周辺作業員・操縦者は、歩行電圧(Step Potential)・接触電圧(Touch Potential)による感電を防ぐため、車両などの感電要因から離れる。
  • バケットに搭乗していても、樹木を介した支柱との接触、リギングロープとの接触、相間接触(phase-to-phase contact)が起こり得る。その経路により死亡・重症となることがある。
  • 高所作業車は移動中も、地盤の傾斜と、電線までの距離を評価する。
  • バケット内の作業者及び地上配置のスポッター(監視員)を配置し電線との距離を常時監視。

14.9 感電事故発生

感電事故が発生した際には、「助けようとして二次災害を起こさないこと」が最も重要である。特に樹木作業や電線近接作業では、救助者が感電する事故が少なくない。

手順:停電要請 → 試験(検電) →ボンディング→ 接地 →救助

「停電確認までは被災者に触らない、近づかない、停電確認まで救助できない。」

14.9.1 感電事故発生時禁止事項

被災者を素手で引き離そうとする。被災者の身体を通じて電流が流れている可能性があり、救助者も感電する。

電力会社や設備管理者の確認前に接近する。高圧線や特別高圧線では、

  • スイッチを切ったと思っても逆送電がある
  • 自家発電設備が接続されている
  • 自動再閉路装置が作動する

場合がある。

地絡点へ走って近づく。電線が地面に接触すると周囲に電圧勾配が生じる。このとき発生するのが、接触電圧・歩行電圧である。近づく必要がある場合は、電気事業者や訓練を受けた者を除き、原則として近寄らないことが重要である。

特に樹上作業で感電事故が発生した場合、樹木全体が帯電している可能性があるため以下のことは禁止とする。

  • 樹上作業者をすぐにロープで降ろそうとしない。
  • 樹木に登って救助しようとしない。
  • クライミングロープや、リギングロープを引っ張らない。
  • 高所作業車で接近しない。

特に高圧配電線(6.6kV)では、枝葉を介して通電していることがあり、樹木に触れただけで感電する危険がある。

14.9.2 感電事故発生時の基本行動

1. 作業停止、接近しない

2. 周囲への危険周知、立入禁止にする

3. 電力会社へ通報、電源遮断、停電要請

4. 119番通報、指示を仰ぐ

5. 準備(交通整理、AED手配、被災者の状況確認、救急セット確認など)

6. 安全確認後に救助

7. 必要に応じてCPR(心肺蘇生法)、AED(自動体外式除細動器)による緊急措置開始

参考文献

・ 労働安全衛生規則(ロープ高所作業関連・平成28年改正、墜落防止関連・平成31年改正)

・ 墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン(平成30年6月22日付け基発0622第2号)

・ JIS T 8165:2018(墜落制止用器具)から一部引用

・ ISO 22846 Part 1・Part 2(個人用墜落防止装備 / ロープアクセスシステム)

・ ANSI Z133(Arboricultural Operations – Safety Requirements)参照

・ ISA Best Management Practices: Tree Risk Assessment

・ 資料3 個人用保護システムの分類例

・ 昭和50年12月17日付け基発第759号「移動式クレーン等の送配電線類への接触による感電防止災害防止対策について」

・ 関西電力送配電「配電線(電柱)の近くでのクレーン作業や足場の組み立て」

特記事項

1 樹木作業における安全プロトコルへの準拠と免責

樹木作業における安全プロトコルへの準拠は、すべての状況下における安全を保証するものではない。本プロトコル作成者である(一社)Tree Care Safety Associationは、発生する可能性のある、いかなる事故においても責任を負わない。

2 著作・使用条件

本プロトコルの著作は(一社)Tree Care Safety Associationに帰属する。全内容を採用する必要はなく、必要な箇所のみの採用・使用も可とする。但し、その採用から発生するいかなる損害・事故について(一社)Tree Care Safety Associationは、責任を負わない。内容変更し採用する場合は変更内容の事前許可が必要。

連絡先:tcsa-dendro@outlook.com

使用の際は「樹木作業における安全プロトコル:(一社)Tree Care Safety Association」を明記すること。

3 改訂

本プロトコルは適宜改訂されるため、作業前に最新改訂版を確認すること。

改訂履歴

改訂日内容
2026年7月1日初版
2026年9月21日改訂
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Full Text / 2026年9月改訂版

移動式クレーンによる専用の搭乗設備使用(樹木作業)ガイドライン

原則禁止 事業者は、移動式クレーンにより、労働者を運搬し、又は労働者をつり上げて作業させてはならないことが原則です。本ガイドラインは、作業の性質上やむを得ない場合等に、有識者の判断のもとで例外的に搭乗設備を使用する際の安全要件を定めるものです。
利用届不要 本ガイドラインの使用は自由です。利用届の提出は必要ありません。会社・団体・個人を問わず、どなたでもそのままご活用いただけます(内容を変更して使用する場合のみ事前許可が必要です)。

TCSAでは、本ガイドラインに基づく「移動式クレーンによる専用の搭乗設備使用(樹木作業)セミナー」を開催しています。適用条件の判断、危険を防止するための措置、ワークポジショニング併用時の注意などを、実務に即して体系的に学べます。セミナーの詳細はこちら →

(一社)Tree Care Safety Association((一社)樹木作業安全協会)

第1 趣旨

原則事業者は、移動式クレーンにより、労働者を運搬し、又は労働者をつり上げて作業させてはならない。これが原則である。

ただし、作業の性質上やむを得ない場合又は安全な作業の遂行上必要な場合は、移動式クレーンのつり具に専用の搭乗設備を設けて当該搭乗設備に労働者を乗せることができる。

本ガイドラインは、移動式クレーンのつり具に専用の搭乗設備を設けて労働者を乗せる作業における一層の安全対策の推進を図るために、重要な事項を一体的に示すことを目的とし作成したものである。

事業者は、本ガイドラインに記載された事項を的確に実施することに加え、より現場の実態に即した安全対策を講ずるよう努めるものとする。

第2 適用範囲

本ガイドラインは、移動式クレーンを使用して、労働者を運搬し、又はつり上げて行う樹木作業について適用する。

第3 適用条件

適用は、作業の性質上やむを得ない場合又は安全な作業の遂行上必要な場合に限られる。具体的には次のような場合が挙げられる。

  • 臨時に小規模かつ短時間であり、代替の方法が確立されていない作業を行う場合。
  • 目的とする作業の種類、場所、時間等から見て、その他の方法が現実的に著しく離反している場合。
  • より安全な作業の遂行が期待できる場合。

実際の樹木作業における具体例として、高所作業用車両の使用が難しい場合や、高所作業用車両を使用するより安全性が高いと判断される場合が、主な適用条件となる。

  • 高所作業用車両のバケット部分の大きさが支障となり、必要な樹冠内の作業ができない場合。
  • 高所作業用車両のブーム長さが対象樹木に届かない場合。
  • 枝折れや掛かり木等、下方からのアクセス(高所作業用車両使用)に危険を伴う場合。
  • 高架橋付近等、地面より低い箇所の剪定や伐採作業を行う場合。
  • 樹木に登攀するより安全であると判断される場合。(高齢労働者の安全と健康確保のための疲労の軽減も含まれる。)

第4 有識者による適用条件の判断

適用条件の判断は、樹木の知識と専用の搭乗設備を用いた作業方法について専門の知識を有する有識者によって行われる。

樹木の状態・周辺環境等、総合的な要因を考慮し、作業を実行するため、または木にアクセスするために移動式クレーンが最も安全であり、実行可能な方法であると判断した場合にのみ、作業員を運搬し、又はつり上げるための移動式クレーン使用が可能となる。

第5 用語

1 専用の搭乗設備

クレーンのジブの先端に取り付けられるもの及びワイヤーロープ等により吊り下げて労働者を搭乗させて運搬、又は作業させるための専用の搬器または専用の作業床を示す。

2 クレーンのジブの先端に取り付けられるもの

形状により、手すりに囲まれた作業床の中で使用するもの、ロープの張力を用いて使用するもの、座位で使用するもの等がある。

3 クレーンのワイヤーロープ等により吊り下げられるもの

形状により、手すりに囲まれた作業床の中で使用するもの、ロープの張力を用いて使用するもの等がある。

第6 専用の搭乗設備の使用

1 作業システムの分類・使用

専用の搭乗設備に応じて、仕様に基づく最も安全性の高い作業システムを選択もしくは併用すること。作業システムには、ワークポジショニングシステム、ロープアクセスシステム、レストレイントシステム、フォールアレストシステムがある。

2 危険を防止するための措置

  1. バックアップ措置 ── ワイヤーロープ等により吊り下げて使用する専用の搭乗設備は、クレーンのフック等からワイヤーロープが外れる、または切断等しても墜落を防止するためのバックアップ措置が講じられていること。バックアップ措置は、クレーンの同一のフック以外に設置すること。設置には閉じてロックできるタイプのものを使用すること。
  2. クレーン機能阻害禁止 ── クレーンのフック以外に専用の搭乗設備を取り付け、又はバックアップ措置を講じる際は、クレーンの構成部品の機能を妨げないこと。加えて、専用の搭乗設備の取り付け、バックアップ措置は、専用の器具を使用すること。例として、クレーンのワイヤーロープに直接器具を取り付け、ワイヤーロープの撚り戻しのための回転を阻害することがあってはならない。
  3. 専用の搭乗設備及び専用取り付け器具の使用 ── 専用の搭乗設備を使用する。また、専用の搭乗設備の取り付け器具、及びバックアップ取り付け器具は専用の器具を使用する。作業床を用いない、もしくは枝等の体重を乗せられる足場がない場合、専用の搭乗設備使用の目的は樹上までの短時間移動に限定し、作業床を用いない(ぶら下がった)状態で樹上作業は行わない。
  4. 合図 ── 専用の搭乗設備の搭乗者自らクレーンの操作をする場合を除き、クレーンの運転士と搭乗者の連絡を確実にするため、ハンズフリーの双方向の無線等、目視確認が困難な場合に備えた合図によること。
  5. 識別 ── 搭乗者の位置の識別を容易にするため、搭乗者はハイビズ(Hi-Vis:高視認性安全服)を着用すること。加えて、朝夕・夜間時には、照明に加えてLED誘導灯やストロボ警告灯の併用も有効であること。
  6. 搭乗の制限 ── 専用の搭乗設備に搭乗する労働者は、専用の搭乗設備に応じた安全教育を修了した者でなければ搭乗させることはできない。
  7. 移動式クレーンの制限 ── クレーン構造規格、クレーン等安全規則等を準拠した国内で使用可能な移動式クレーンとし、製造元の仕様に基づき設置する。
  8. 移動式クレーン運転の制限 ── 移動式クレーン運転士免許もしくは小型移動式クレーン運転技能講習を修了し、加えて専用の搭乗設備に応じた安全教育を修了した者。
  9. 運転位置から離れる場合の措置 ── 移動式クレーンの運転者は、専用の搭乗設備に搭乗させたまま運転位置から離れてはならない。
  10. 通電導体からの離隔距離 ── 電線を含むあらゆる通電導体から安全な離隔距離を保たなければならない。移動式クレーン等の機体・ワイヤーロープ・搭乗設備・作業員の身体等は、充電電路の充電部との離隔距離を、昭和50年12月17日基発第759号通達に定める値(低圧:1m以上、高圧:1.2m以上、特別高圧:2m以上+電圧加算分)以上とすること。ただし電力会社の管理目標値が別途定められている場合はそれに従うこと。なお、国際標準(ANSI Z133等)では非資格者に対し10 ft(約3.05 m)以上の確保を求めており、より安全な作業環境の構築のために参考とすること。
  11. 通電導体からの離隔距離確保のための措置 ── 目測上の誤差等により離隔距離内に入ることを防止するために、移動式クレーンの行動範囲を規制するための木柵や、ジブ等の行動範囲を制限するためのゲート等を設けることが望ましいが、樹木作業ではこうした物理的な接近防止措置が困難なケースが多いため、電力会社推奨値を実務上の最低基準とすることが望ましい。加えて、電子制御によりクレーン操作範囲制限が可能なクレーンの使用等、感電防止措置を徹底すること。
  12. 安全帯等の使用 ── 作業員は要求性能墜落制止用器具等を使用すること。
  13. 重量制限 ── 作業開始前に、専用の搭乗設備・作業員・機械・器具を含めた総重量を確認すること。総重量が変化する度に毎回実施し、それらを含めた総重量の1.3倍に相当する重量に500㎏を加えた値が、当該移動式クレーンの定格荷重を超えないこと。
  14. クレーン操作の速さ ── クレーン操作による搭乗設備の上昇・下降の速さは、0.5m/sを超えてはならない。また、クレーンの動力を用いない自由落下は禁止とする。
  15. 走行の禁止 ── 移動式クレーンは、専用の搭乗設備に作業員を搭乗させている間は、いかなる場合も走行してはならない。
  16. 監視員の配置 ── 専用の搭乗設備に作業員を搭乗させて作業をしている間、監視員を配置し、クレーンの運転士と常時連絡が取れる状態を維持すること。
  17. 作業内容の周知 ── 作業前に有識者・監督員・クレーン運転士・合図者・作業員がミーティングに参加し、作業内容・ハザード・リスク管理・コミュニケーション手段等の周知を行う。
  18. 併行作業の禁止 ── 作業員を運搬し、又はつり上げて行う作業中、同時に枝幹を吊り下げる作業を行ってはならない。
  19. 枝幹部分重量の目測 ── 樹上作業者が樹冠内でクレーンによって吊出される枝幹を切り離す際は、第4の有識者が、枝幹を切り離す前に切り離す部分の重量及び重心の目測を行う。目測重量はクレーン運転士に伝え、幹切り離し後に実際の枝幹重量を比較し有識者に伝える。吊り下げる枝幹重量は、最初はクレーンの定格荷重の50%を超えない重量とし、次回からは定格荷重の75%を超えない重量とする。

第7 ワークポジショニングシステムを採用する場合の注意事項

第6の作業システムの分類・使用において、ワークポジショニングシステムを採用し、かつロープを使用して吊り上げられる場合は、以下の事項に注意すること。

  • クレーンのフックを含めた、2箇所以上の異なるアンカーポイントにロープ等を使用し墜落を防止する。
  • クライミングライン(移動用ロープ。以下クライミングラインと表記)は、クレーンの構成部品の機能を妨げない。
  • クレーンのいかなる部分も、クライミングライン及びクライミングシステムの全ての構成要素を危険にさらしてはいけない。
  • 樹冠内作業はワークポジショング(樹上作業)ガイドラインによる。クライミングラインのアンカーポイントは木の股の場合とクレーンに設置された専用の搭乗設備となる場合がある。クレーンのフックは、クライミングラインのアンカーポイントとして使用してはならない。
  • ロープは手許にまとめた状態とし、不意に落下・飛び出さない対策を講じること。
  • クレーンのワイヤーロープは常時テンションがかかった状態を維持すること。
  • 人を吊り下げた状態で、電気設備の上を越えないこと。

第8 点検・保守・保管

クレーン、専用の搭乗設備、接続器具等の点検・保守及び保管は、責任者を定める等により確実に行い、管理台帳等にそれらの結果や管理上必要な事項を記録しておくこと。

1 点検

点検は、日常点検のほかに一定期間ごとに定期点検を行うものとし、次に揚げる事項について作成した点検基準によって行うこと。定期点検の間隔は半年を超えないこと。点検時には、取扱説明書に記載されている安全上必要な部品が全て揃っていることを確認すること。

  1. ベルトの摩耗、傷、ねじれ、燃料・オイルによる変色・硬化・溶解、紫外線による経年劣化。
  2. 縫糸の摩耗、切断、ほつれ。
  3. 金具類の摩耗、亀裂、変形、錆、腐食、樹脂コーティングの劣化、回転部や摺動部の状態、リベットやバネの状態。
  4. ロープの摩耗、素線切れ、傷、やけこげ、キンクや撚りもどり等による変形、燃料等による変色・硬化・溶解、紫外線による劣化、経年劣化、アイ加工部の状態。

各部品の損傷の程度による使用限界については、部品の材質・寸法・構造及び使用条件を考慮して設定することが必要である。ロープ等の摩耗の進行は早いため、少なくとも1年以上使用しているものについては、短い期間で定期的に目視チェックが必要である。また、工具ホルダー等を取り付けている場合には、これによるベルトの摩耗が発生するので、定期的にホルダー等で隠れる部分の摩耗の確認が必要である。

2 保守

保守は、定期的及び必要に応じて行うこと。保守に当たって、交換する部品は製造者が推奨する仕様・強度が保証された器具を使用すること。

  1. ベルト・ロープ類の汚れは、ぬるま湯を使って洗い、落ちにくい場合は中性洗剤を使って洗った後、よくすすぎ、直射日光に当たらない風通しのよいところで自然乾燥させること。
  2. 金具類が水等に濡れた場合は、乾燥した布でよくふきとった後、直射日光に当たらない風通しのよいところで自然乾燥させること。
  3. 金具類の回転部・摺動部は製造者の仕様に従い注油等を行うこと。その際、ベルト・ロープ類に付着しないよう配慮すること。砂や泥等がついている場合はよく清掃して取り除くこと。

3 保管

次のような場所に保管すること。

  1. 直射日光に当たらないところ。
  2. 風通しがよく、湿気のない所。
  3. 火気、放熱体等が近くにない所。
  4. 腐食性物質が近くにない所。
  5. ほこりが散りにくい所。
  6. 小動物等の入らない所。

第9 廃棄基準

  1. 一度でも落下時の衝撃がかかったものは使用しないこと。
  2. 点検の結果、異常があったもの、摩耗・傷等の劣化が激しいものは使用しないこと。
  3. 誤使用防止のため使用できない状態にした後、破棄すること。

第10 除外規定

第6の2(3)専用の搭乗設備及び専用取り付け器具の使用の除外条件を以下に定める。

  1. サスペンショントラウマを防止するための処置(例:バットストラップ使用)を行う。
  2. 作業時間が可能な限り短時間となるよう作業計画を作成する。
  3. 作業中、作業員の足のしびれ等の体調の変化を、地上作業員が常時確認する。
  4. クレーンのフックに加え、フック以外にも墜落を防止するためのバックアップ措置を講じる。
  5. 使用する作業システムに応じた必要な安全措置を講じる。
  6. 地上に降下した際、足のしびれ等がないか確認し、ある場合は対応策を講じる。

第6の2(18)併行作業の禁止の除外条件を以下に定める。

  1. 有効な代替措置が無く、樹冠内に樹上作業者を配置することが、作業員と枝幹を共に吊上げているリスクより大きくなると判断された場合、作業員を運搬し、又はつり上げて行う作業中、同時に枝幹を吊り下げる作業を行うことができる。
  2. 専用の搭乗設備・作業員・機械・器具・撤去した枝幹を含めた総重量の1.3倍に相当する重量に500㎏を加えた値が、当該移動式クレーンの定格荷重を超えないこと。もしくは、それらを含めた総重量が、クレーンの定格荷重の50%を超えないこと。
  3. 枝幹が木から切り離され安全が確保されたら、直ちに地上へ降下し吊荷の下から退避しなければならない。
  4. クライミングラインを使用して地上へ降下し退避した場合、クライミングロープはクレーン操作の支障とならない様まとめられた状態、もしくはクレーンから回収すること。
  5. クレーンの親フック・子フック(主巻・補巻)を用いる場合、作業員の近くをクレーンのワイヤーロープが通過する作業は避けること。
  6. クレーンの親フック・子フックにロワリングデバイス(フリクションコントロールデバイス)を使用したリギング(枝幹の吊降ろし)システムにて枝幹を降下させる場合、リギングシステムによっては、取り付けたフックに静荷重でも最大2倍の荷重が掛かることを考慮して重量の目測を行うこと。
合意要件除外規定の判断は、有識者・専用の搭乗設備に搭乗する労働者・クレーン運転士、全員の合意によること。

参考文献

  • クレーン等安全規則 第72条・第73条
  • 昭和46年9月7日 基発第621号
  • 労働安全規則 つり足場に関する規定(第574条1項8号の規定を除く)
  • 平成27年8月5日 基発0805第1号
  • 令和2年3月16日公表 高齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)
  • 墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン(平成30年6月22日付け基発0622第2号)及び JIS T 8165:2018 から一部引用
  • ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン (一社)Tree Care Safety Association
  • 資料3 個人用保護システムの分類例から一部引用
  • 労働安全衛生規則(昭和50年基発第759号通達に基づく移動式クレーン等の送配電線離隔距離)
  • ANSI Z133-2017 Section 4 の最小接近距離(MAD)— 非資格者(Table 1)/インシデンタル資格者(Table 2)
  • 架空電線との最小離隔距離(東京電力パワーグリッド推奨値、関西電力送配電推奨値)

改訂履歴

改訂日内容
2019年3月11日初版
2020年6月26日改訂
2022年1月1日改訂
2023年12月2日改訂
2024年8月17日改訂
2025年11月11日改訂
2026年3月18日改訂
2026年9月28日改訂

特記事項

1 ガイドラインの準拠

本ガイドラインの準拠は、全ての状況下における安全を保証するものではない。本ガイドライン作成者である(一社)Tree Care Safety Associationは、発生する可能性のある、いかなる事故においても責任を負わない。

2 ガイドラインの使用

本ガイドラインの著作は(一社)Tree Care Safety Associationに帰属する。本ガイドラインの使用は自由とする。但し使用に関する条件を以下とする。

  • 本ガイドラインの使用は自由であり、(一社)Tree Care Safety Association への利用届の提出は必要としない。会社・団体・個人を問わず、どなたでもそのままご活用いただける。
  • 本ガイドラインに変更を加える際は、(一社)Tree Care Safety Associationに記載内容変更の連絡・許可を必要とする。連絡により変更された記載内容は、特記事項に追加記載した後使用すること。変更された記載事項の著作は(一社)Tree Care Safety Associationに帰属する。
  • 連絡先:tcsa-dendro@outlook.com
  • 本ガイドライン使用の際は「移動式クレーンによる専用の搭乗設備使用(樹木作業)ガイドライン:(一社)Tree Care Safety Association」を明記すること。
  • (一社)Tree Care Safety Associationは、本ガイドライン使用から生ずるいかなる事案に関しても責任を負わない。

3 改訂

本ガイドラインは適宜改訂されるため、作業前に最新改訂版を確認すること。

補記

1 充電電路からの離隔距離(参考)

移動式クレーンの機体・ワイヤーロープ・搭乗設備・作業員の身体等は、架空電線等の充電電路から以下の離隔距離(参考):

  1. 低圧(100 V・200 V):2 m 以上(通達最低値1 m、電力会社推奨値2 m)
  2. 高圧(6,600 V):2 m 以上(通達最低値1.2 m、電力会社推奨値2 m)
  3. 特別高圧(22,000 V・66,000 V):3〜4 m 以上(電力会社推奨値に従うこと)
  4. 特別高圧(154,000 V 以上):5 m 以上(事前に電力会社と協議のうえ確認した値に従うこと)

なお、送電線の電圧が不明な場合は、作業前に電力会社・鉄道会社に必ず確認すること。懸垂がいしの個数を電圧判別の参考とすることができる。各離隔距離の数値が変わることがあるため、作業前に各自確認すること。

2 懸垂がいしの個数による現場での電圧判別(参考)

電圧懸垂がいし
(目安)
通達
最低値
電力会社
推奨値
備考
500,000V35個程度10.8m11.0m長幹がいしの場合も有。要電力会社確認
275,000V17〜24個6.4m7.0m—
154,000V10〜14個4.0m5.0m—
66,000V5〜8個2.2m4.0m鉄道用鉄塔では2個の場合有。要確認
22,000V2〜4個2.0m3.0m—
6,600V(高圧)ピンがいし1.2m2.0m一般電柱(電力会社配電線)の大半がこの電圧
100・200V(低圧)なし1.0m2.0m電柱最下段の引込線等

ガイドラインの導入をご検討ですか?

本ガイドラインは利用届なしで、どなたでもご活用いただけます。原則禁止の例外的運用にあたっての判断や、安全要件の整え方についてのご相談も承ります。

Consulting & Accreditation

企業認定プログラム
- Corporate Accreditation Program -

そして、安全を重視する団体が、
正当な社会的評価を受けられるまで。

ガイドラインは、作って終わりではありません。TCSAは、貴社・貴団体の状況に合わせて、安全体制の構築から現場定着までを伴走支援します。一人親方から事業者まで、規模に応じた進め方をご提案します。

For Sole Proprietors

一人親方にも、
届く支援を。

大きな組織だけでなく、一人で現場に立つ親方にこそ安全を。すべての文書・基準を「理想」と「最低限」の二段階で用意し、無理なく始められる形でご提供します。

進め方
  • 1現状把握 ── 作業内容・体制・既存の安全対策をヒアリングします。
  • 2ご提案 ── ガイドラインに沿った最適な体制と、必要な文書をご提示します。
  • 3導入・定着 ── 文書整備、教育、点検体制づくりを伴走支援します。
Subcontractor Vetting

下請業者の適格性確認の必要性

樹上作業を外部委託する元請・発注者には、委託先の安全管理体制・技術力・法令遵守を事前に確認する強い根拠があります。これは望ましい慣行を超えた、法的・倫理的な責務といえます。

なぜ事前確認が必要か

委託先の安全水準を確認しないまま発注することは、最前線で危険な作業に従事する現場作業員を危険にさらすことにつながります。確認の根拠は、大きく三つの側面から整理できます。

  • 社会的責務 ── 労働安全衛生法第3条第3項が定める発注者の配慮義務。安全を担保できない業者への発注は、その趣旨に反します。CSR・ESGの観点からも重要性が増しています。
  • 法的・行政的根拠 ── 安衛法第29条(関係請負人への指導義務)、建設業法第24条の8(不適格業者の排除)、基発第267号の2(安全管理能力のない業者への発注禁止)など。
  • 統計的危険性 ── 樹上作業の災害率は全産業中で突出して高く、高リスク作業の外部委託には事前確認が不可欠です。
法的根拠の対応
根拠適格性確認との関係
安衛法 第3条第3項発注者の安全配慮義務 ─ 業者選定に直結
安衛法 第29条関係請負人への指導義務 ─ 事前把握が前提
建設業法 第24条の8施工体制台帳制度=不適格業者排除を明示
基発第267号の2安全管理能力のない業者への発注を禁止
ISO 45001 第8.1.4条外部委託の管理・統制を規格要件として明示(国際共通)
OSHA Multi-Employer Policy元請けの下請け安全管理義務(米国)

樹上作業の統計的危険性

樹上作業(アーボリスト)の危険性は、国内外の統計が明確に示しています。日本の林業の死傷年千人率は約25.5で、全産業平均(約2.3)の約11倍、建設業(約4.5)の約6倍にのぼります。さらに、事故の致死性も際立って高く、全産業では死亡1件に対し非致死事故が約350件であるのに対し、アーボリストでは約14件にとどまります。これは、発生した事故が高い確率で致命傷に至ることを意味します。

業種死傷年千人率(休業4日以上)
全産業平均約2.3(基準)
建設業約4.5(全産業比 約2倍)
農業約5.2(全産業比 約2.3倍)
木材・木製品製造業約10.5(全産業比 約4.6倍)
林業(樹上作業含む)約25.5(全産業比 約11倍・建設業比 約6倍)

出典:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」、林野庁「林業労働災害の現況」(令和2年)ほか。米国ISA研究(Ball et al., 2020)では、アーボリストの死亡率は建設業の約3.3倍と報告されています。上の表は日本の統計(死傷年千人率)です。トップページの米国の死亡率とは、対象・指標が異なります。

第三者評価の活用をおすすめします

適格性の確認には、樹上作業に関する専門知識が必要です。元請が自社のみで評価する場合、評価の主観性、取引関係に起因する利益相反、評価能力の限界といった構造的な問題が生じがちです。専門の外部機関による第三者評価を活用することで、評価の客観性・一貫性・公平性が確保され、ISO 45001 やOSHAが求める「外部委託の管理」要件を実践的に満たすことができます。TCSAは、施工業者の安全性評価を主要な業務とし、評価にとどまらず具体的な助言・指導まで行っています。

Company Accreditation

TCSA
企業認定プログラム

個々の作業者の技術・資格に加え、企業としての安全管理体制を第三者として評価・認定する制度です。安全で信頼される樹木作業企業を「見える化」し、業界全体の安全水準の向上を目指します。

準備中 TCSA企業認定プログラムは2028年から運用予定です。関心をお持ちの方は、お問い合わせよりご連絡ください。
3つの役割
  • ✓消費者(施主)が、安全で信頼できる企業を選ぶための判断基準に。
  • ✓元請企業が、下請企業の安全管理能力を検証する業界基準に。
  • ✓自治体等の発注者が、入札・契約時に参照できる安全基準に。

法人・個人事業主・一人親方のいずれも対象とし、小規模事業者にも取得可能な制度設計を目指しています。認定は事業所単位で行います。

認定基準(6つの節)

認定基準は次の6つの節で構成され、各節の評価項目(必須項目・推奨項目)を、文書・記録・現地審査により3段階(適合・要改善・不適合)で評価します。必須項目に1項目でも「不適合」があれば認定はできません。推奨項目は「要改善」でも条件付き認定が可能で、安全文化の成熟度を示す指標として評価されます。

基準
6節すべての基準となる要件
ワークポジショニング(樹上作業)ガイドラインへの適合性
TCSAの中核基準であるワークポジショニング(樹上作業)ガイドラインへの適合性は、独立した審査分野ではなく、6節すべての評価項目の根拠として機能します。第1節では社内規程の内容として、第2節では教育・訓練の内容として、第3節では法令との関係として、第4節では装備・点検の基準として、それぞれガイドラインが参照されます。したがって、ガイドラインの理解と社内文書への反映は、6節すべての基準となる要件です。
ワークポジショニングガイドラインを見る →
01
安全管理体制
組織的な安全管理の仕組み。ガイドラインの社内文書としての採用・周知、文書化された安全管理規程(基本方針、責任者、危険評価、ジョブブリーフィング、緊急行動計画・空中レスキュー計画、事故報告、年間教育計画)、作業中止の判断権限の明確化、記録の保管、ヒヤリハット報告制度の運用を評価します。
02
人員の資格要件
従事者の資格・技能・経験。ワークポジショニング基礎講習・電気危険認識セミナー・樹木評価モジュール等のTCSA教育プログラムの修了、チェーンソー・ロープ高所作業・高所作業車等の特別教育、年1回以上の力量評価と業務範囲の判定を評価します。ISA認定アーボリスト・樹木医等の保有は推奨項目です。
03
法令遵守
関係法令への適合状況。労働安全衛生法・クレーン等安全規則等の遵守、労災保険への加入(一人親方は特別加入)、建設業許可・道路使用許可等(該当時)、法令上必要な資格・免許、過去3年の事故履歴と再発防止策を評価します。法令違反は認定の重大な障害となります。
04
装備と点検
使用器具の管理・点検状況。側部・腹部両アタッチメントを備えた規格適合品の使用(胴ベルト型は不可)、器具管理台帳とライフセーフティ装備の使用履歴、点検ワークブック等に基づく使用前点検・定期整備、廃棄基準の遵守(切断・破壊処分)、救助器具の現場配備を評価します。
05
下請け管理
下請業者・協力業者の管理。安全管理体制・資格者・保険加入の確認、安全管理義務を明記した契約、下請け作業者への作業前ブリーフィングとPPE着用確認、混在作業時の統括安全管理、不適合への改善指導を評価します。下請けを使用しない事業所は、書面での申告により本節は非該当となります。
06
顧客対応と倫理
顧客対応・倫理規程の遵守。作業内容・範囲・料金の書面による説明と同意、樹木学に基づく適切な作業計画(不適切な剪定・過剰伐採の排除)、苦情対応体制、作業後の原状回復と残枝等の適切な処分、TCSA倫理規程の遵守を評価します。

認定の手続き

  • 1申請 ── 企業概要・保有資格・保険加入状況等を記載した申請書を提出。
  • 2自己評価 ── 認定チェックリストで自己評価し、不足項目を改善(TCSAが助言・支援)。
  • 3審査 ── 認定審査員による書類審査・現地審査。
  • 4認定・更新 ── 有効期間は3年。毎年の定期確認と、満了前の更新審査。

認定プロセスは「審査に落とす」ためのものではなく、「基準を満たすための改善を支援する」プロセスです。理解に基づく安全という、TCSAの理念がここにも貫かれています。なお、企業認定プログラム事前準備支援と認定は独立した関係にあり、支援の受講は認定の要件ではなく、受講が認定を確約するものでもありません。

認定のメリット

  • 1TCSAからの紹介・推薦 ── 自治体・元請企業へ、認定企業として紹介。指名・発注先候補として推薦されます。
  • 2認定ロゴの使用 ── TCSA認定ロゴを車両・ヘルメット・名刺・ウェブサイト等に表示できます。
  • 3認定企業一覧への掲載 ── TCSAウェブサイトの認定企業一覧に掲載されます。
  • 4入札・契約における優位性 ── 自治体・大口顧客の入札・契約において有利に働きます。
  • 5下請選定における優位性 ── 元請企業からの下請選定において有利に働きます。
  • 6信頼の向上 ── 消費者からの信頼が高まります。
  • 7組織力の向上 ── 従業員の安全意識と帰属意識が高まります。
TCSA認定企業ロゴ。円形の緑のエンブレムに、より安全に樹木作業を行うことができることを認定します、TCSA認定企業 2027年、TCSA企業認定プログラム、ワークポジショニング(樹上作業)ガイドラインへの適合を認定、一般社団法人 Tree Care Safety Association と記載
TCSA認定企業ロゴ ── 認定企業は車両・ヘルメット・名刺・ウェブサイト等に表示できます
安全は「押し付けられるルール」ではなく「自ら守りたいと思う文化」である。
TCSA企業認定は、その文化を企業として体現する証です。

まずは現状をお聞かせください。

規模や課題に応じて、最適なご支援の形をご提案します。お気軽にご相談ください。

Seminars

学び、身につける。
現場のための講習。

ガイドラインを正しく運用するには、知識と技術の両方が欠かせません。TCSAは、樹木作業の実務に即したセミナー・講習を開催しています。

01
ワークポジショニング基礎講習
中核ガイドラインの考え方と、現場での実践方法を体系的に習得します。
基礎
02
樹木評価モジュール(一次スクリーニング)セミナー
ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン第5・第6に適合する、現場で行う樹木の簡易評価(一次スクリーニング)のセミナーです。
開催日時:2026年8月17日(月)受付終了
実務
03
電気危険認識セミナー
ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン第7(通電導体からの離隔距離・措置)に適合する、通電導体(家庭、会社、街路樹、公園)の近くで行う樹木作業のためのセミナーです。電圧ごとの離隔距離(国内法の最低値・電力各社の推奨値・ANSI Z133)の考え方や、間接接触・アーク・誘導電流などの危険、作業前の危険確認・電力会社への確認手順を学び、安全な距離を保つ判断力を養います。
レベル2高圧通電線樹木作業 開催日時:2026年10月10日(土)
実務
04
移動式クレーンによる専用の搭乗設備使用(樹木作業)セミナー
移動式クレーンの搭乗設備に関する安全要件と、クレーン等安全規則・ANSI Z133 を踏まえた実務知識を学びます。適用条件の判断から危険を防止するための措置まで、ガイドラインに即して体系的に習得します。
開催日程:2026年9月12日(土)受付終了
実務

※ 01の開催日程・会場・受講料は準備中です。最新のご案内をご希望の方は、お問い合わせよりご連絡ください。

セミナーのご案内を希望される方へ。

開催情報や、団体・企業向けの出張講習についてもご相談を承ります。

← ガイドライン概要へ戻る
Full Text / 2026年5月30日施行

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足樹上作業における頭部保護具

樹上作業における頭部の傷害を防止し、作業者の生命及び身体の安全を確保するため、着用すべき頭部保護具の要件を「最低・標準・推奨」の三層で定めたガイドラインです。

利用届不要 本ガイドラインの使用は自由です。利用届の提出は必要ありません。会社・団体・個人を問わず、どなたでもそのままご活用いただけます(内容を変更して使用する場合のみ事前許可が必要です)。

(一社)Tree Care Safety Association((一社)樹木作業安全協会)

第1章 総則

1 目的

このガイドラインは、樹上作業における頭部の傷害を防止し、作業者の生命及び身体の安全を確保するため、樹上作業に従事する者が着用すべき頭部保護具の要件を定めるものである。

2 適用範囲

このガイドラインは、樹木作業に従事する者が着用する頭部保護具について適用する。

3 用語の定義

  1. 樹木作業 樹木の剪定、伐採、修復、保全その他樹木に関する作業をいい、樹上作業及び地上作業を含む。
  2. 樹上作業 樹木作業のうち、樹上に登攀し、又は高所作業車等を用いて樹上において行う作業をいう。
  3. 地上作業 樹木作業のうち、地上において行う補助、リギング、搬出その他の作業をいう。
  4. 頭部保護具 樹木作業中に発生する飛来物、落下物、衝突その他の外力から頭部を保護するために着用するヘルメットその他の保護具をいう。

第2章 頭部保護具の要件

1 最低要件

最低要件樹木作業に従事する者は、労働安全衛生法第四十二条の規定に基づく型式検定に合格した保護帽(「飛来・落下物用 兼 墜落時保護用」に適合するもの)を常時着用しなければならない。あごひもは確実に締結し、作業中これを解いてはならない。

2 標準要件

樹上作業に従事する者は、前項に加えて、次の各号に掲げる要件を満たす頭部保護具の使用を標準とする。

  1. EN 12492:2012 又は ANSI Z89.1 Type II Class C に適合し、側面衝撃保護及び500ニュートン以上のあごひも保持力を有するものであること。
  2. チェーンソー操作時には、ANSI Z87.1 又は JIS T 8147-2 に適合する眼保護具を併用すること。
  3. 騒音レベルが85デシベルを超える環境においては、聴覚保護具を併用すること。

3 推奨要件

前項の標準要件に加え、次の各号に掲げる要件を満たす樹木作業専用ヘルメットの使用を推奨する。

  1. EN 12492 と EN 397(又は ANSI Z89.1 Type II)の両規格に適合するものであること。
  2. 聴覚保護具、眼保護具及び顔面保護具(メッシュバイザー及びクリアフェイスシールド)が一体化され、又は互換取付可能な構造を有するものであること。

該当する製品の例:ア Pfanner Protos Integral Arborist/イ Petzl Vertex/ウ Husqvarna Technical Forest Helmet

4 電気事業関連作業

電線その他の導体の近傍において樹上作業を行う場合は、前各項の要件に加え、次のいずれかに適合する頭部保護具を使用しなければならない。

  1. EN 50365 に適合するもの(交流1,000ボルト以下の絶縁性能を有するもの)。
  2. 厚生労働省告示「保護帽の規格」(昭和五十年労働省告示第六十六号)に定める電気用保護帽(使用電圧7,000ボルト以下のもの)。

5 交換

頭部保護具は、次の各号に定めるところにより、適切に交換するものとする。

  1. 衝撃を受けた保護帽は、外観に異常が認められない場合であっても、速やかに交換しなければならない。
  2. 通常使用下においても、帽体の材質に応じ、熱可塑性樹脂(ABS、ポリカーボネート、ポリエチレン等)製のものは製造後3年以内、熱硬化性樹脂(FRP等)製のものは製造後5年以内に交換するものとする。
  3. 着装体は、おおむね1年ごとに交換することを目安とする。ただし、劣化又は損傷が認められる場合は、直ちに交換しなければならない。

参考文献

  • 法令等:労働安全衛生法/労働安全衛生法施行令/労働安全衛生規則/「保護帽の規格」(昭和五十年九月八日労働省告示第六十六号)
  • 日本産業規格:JIS T 8131:2015(産業用ヘルメット)/JIS T 8147:2016(保護めがね)/JIS T 8161-1:2020(聴覚保護具―イヤマフ)/JIS T 8165:2018(墜落制止用器具)
  • 国際規格:EN 12492:2012/EN 397:2012+A1:2012/EN 50365:2002/ANSI/ISEA Z89.1-2014(R2019)/ANSI Z133-2017/ANSI Z87.1-2020/ISO 3873:1977
  • 業界ガイドライン:AFAG 401 Tree climbing operations(英国)/HSE Guidance, Tree work: a guide for ground workers(英国)/ISA Best Management Practices ─ Tree Climbers' Field Guide(米国)
  • 解説書等:産業安全技術協会『保護帽の型式検定の手引き』/中央労働災害防止協会『保護帽の正しい使い方』/林業・木材製造業労働災害防止協会『林業労働災害防止のための作業指針』

特記事項・附則

1 ガイドラインの準拠と免責

本ガイドラインへの準拠は、すべての状況下における安全を保証するものではない。本ガイドライン作成者である(一社)Tree Care Safety Association は、発生する可能性のある、いかなる事故においても責任を負わない。

2 著作・使用条件

本ガイドラインの著作は(一社)Tree Care Safety Association に帰属する。使用は自由とするが、内容変更時は事前許可が必要。連絡先:tcsa-dendro@outlook.com

使用の際は「ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足-樹上作業における頭部保護具-:(一社)Tree Care Safety Association」を明記すること。

3 改訂

本ガイドラインは適宜改訂されるため、作業前に最新改訂版を確認すること。

附則

  1. このガイドラインは、2026年5月30日から施行する。
  2. このガイドラインは、必要に応じて見直しを行うものとする。
Commentary

解説:頭部保護具ガイドラインの根拠

以下は、本ガイドラインの策定に至った経緯と根拠を整理した解説です。日本国内の規格体系を踏まえ、なぜ三層構造(最低・標準・推奨)の要件を定めたのかを説明しています。ガイドライン本体と併せてご参照ください。

第1章 はじめに

本書は、(一社)樹木作業安全協会(以下「当協会」)が策定した「ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足-樹上作業における頭部保護具-」について、その策定に至った経緯及び根拠を明らかにするものです。

日本国内における保護帽に関する規格体系を整理した上で、樹木作業に固有のリスクを踏まえ、既存規格のみでは樹木作業の安全確保に不十分であることを示し、当協会が三層構造(最低・標準・推奨)の要件を定めるに至った理由を説明します。

第2章 日本国内における保護帽の規格体系

1 JIS T 8131:2015「産業用ヘルメット」

JIS T 8131:2015 は、1977年に第一版が発行された国際規格 ISO 3873 を基礎としつつ、対応国際規格が古く実態に合っていないこと、及び厚生労働省告示「保護帽の規格」との整合性を図る必要があることから、技術的内容を変更して作成された日本産業規格です。ISO規格に対する整合度は MOD(修正)です。

本規格は、旧版 JIS T 8131:2000 を改正・置換するものです。旧版では「保護帽」という名称でしたが、2015年の改正時に「産業用ヘルメット」へ名称が変更されました。ただし、規格本文では「ヘルメット」、労働安全衛生法及び厚生労働省告示では従来どおり「保護帽」という用語が使用されており、同一の対象物を指す呼称が並存する状態となっています。

2 「保護帽の規格」(昭和五十年労働省告示第六十六号)

日本国内における保護帽の法的基準は、JIS規格ではなく、労働安全衛生法及び同法に基づく告示に置かれています。具体的には、次の規定により構成されます。

  1. 労働安全衛生法第四十二条(譲渡等の制限) 厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備したものでなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない旨を規定。
  2. 労働安全衛生法第四十四条の二(型式検定) 保護帽の製造者又は輸入者は、型式ごとに登録型式検定機関の行う型式検定を受けなければならない旨を規定。
  3. 労働安全衛生法施行令第十三条第三項及び第十四条の二第十二号 「保護帽(物体の飛来若しくは落下又は墜落による危険を防止するためのものに限る。)」を、構造規格適用対象及び型式検定対象機械等として指定。
  4. 「保護帽の規格」(昭和五十年九月八日労働省告示第六十六号) 必要な構造、性能等を具体的に定めるもの。平成三年労働省告示第三十九号及び平成十一年労働省告示第百九号により改正。

3 法的強制力の所在

保護帽が市場に流通する前提となる表示は、労検マーク(型式検定合格標章)であって、JISマークではありません。JIS T 8131 は、上記告示と整合しつつ、任意規格として併存する位置付けにあります。すなわち、法的強制力を有するのは厚生労働省告示であり、JIS規格は技術的な整合を担保する補完的な役割を果たすものです。

4 JIS T 8131 と「保護帽の規格」との関係

両者は、同一の対象物(保護帽)を別個の制度により規定する並行関係にあります。主な相違点は次のとおりです。

項目厚労省告示第六十六号JIS T 8131:2015
法的性格強制規格(告示)任意規格
対象保護帽(飛来・落下・墜落用)産業用ヘルメット(飛来物・落下物用、転倒・転落時保護用)
遵守義務有り(譲渡・貸与・使用禁止の前提)無し(任意)
表示労検マーク(型式検定合格標章)JISマーク
国際規格整合なしISO 3873(MOD)

JIS T 8131:2015 は、厚生労働省告示「保護帽の規格」との整合性を図るため技術的内容を変更して作成されたものであり、事実上、告示の内容を JIS として体系化したものという位置付けです。

第3章 JIS T 8131:2015 の骨子

1 種類区分

種類主な用途適用箇条
飛来物・落下物用足場の組立て、港湾荷役等、飛来・落下のおそれがある場所5.1.1 a)、5.1.2 a)
転倒・転落時保護用高所作業等における転倒・転落時の頭部保護5.1.1 b)、5.1.2 b)

両方の要件に適合するヘルメットは併記表示が可能です。市場で「飛来・落下物用 兼 墜落時保護用」と表記されているものが、これに該当します。

2 構造要件(§4)

  1. 飛来物・落下物用 帽体、着装体及びあごひもを最低構成とする。あごひもの必須化は ISO 3873 にはない日本独自の規定であり、EN 397:2012 に準拠したもの。
  2. 転倒・転落時保護用 前号の構成に加え、衝撃吸収ライナー(防護パッド)を必須構成とする。
  3. 着装高さ 85ミリメートル以上。
  4. 内側垂直隙間 25ミリメートル以上。
  5. 水平隙間(前頭部・側頭部) いずれも5ミリメートル以上。
  6. 通気孔合計面積 450平方ミリメートル以下(耐電圧性能を選択する場合は通気孔の設置は禁止)。

3 性能要件(§5)

ア 衝撃吸収性(§5.1.1)

  1. 飛来物・落下物用 人頭模型に伝達される衝撃力 4.9キロニュートン以下。
  2. 転倒・転落時保護用 衝撃力9.8キロニュートン以下、かつ7.35キロニュートン以上が3/1000秒以上継続せず、4.90キロニュートン以上が4.5/1000秒以上継続しないこと。

イ 耐貫通性能(§5.1.2)

  1. 飛来物・落下物用 円すい形ストライカ先端が人頭模型表面に接触しないこと。
  2. 転倒・転落時保護用 頂部リング上端から帽体内面のくぼみ最下降点までの垂直距離が15ミリメートル未満であること。

ウ 衝撃試験条件

  1. 飛来物・落下物用 質量5キログラム、半径48ミリメートルの半球形ストライカを1,000ミリメートルの高さから落下。
  2. 転倒・転落時保護用 質量5キログラム、半径63.5ミリメートルの平面形ストライカを、人頭模型を水平から30度傾斜させた状態で、前頭部及び後頭部の2箇所において実施。

4 選択要件(§5.2)

  1. 超低温性 マイナス20度又はマイナス30度(§5.2.1)。
  2. 耐側圧性(LD) 430ニュートン負荷時の最大側面変形が40ミリメートル以下、かつ残留側面変形が15ミリメートル以下(§5.2.2)。
  3. 難燃性 10秒間の炎暴露後、5秒間以上燃え続けないこと(§5.2.3)。
  4. 耐電圧性 水中20キロボルトに1分間耐え、漏えい電流が10ミリアンペア以下であること。使用電圧7キロボルトまでの保護に対応(§5.2.4)。

5 表示要件(§7)

製品には、規格名称及び規格番号、製造業者名又はその略号、製造年月又はその略号、型式(品番)、種類の表示(「飛来物・落下物用」又は「転倒・転落時保護用」)を表示することとされています。

第4章 樹木作業における特有のリスクと既存規格の限界

1 樹木作業に固有のリスク

樹木作業には、一般の建設現場における保護帽の設計が想定していない固有のリスクが存在します。主なものは次のとおりです。

  1. 多方向からの衝撃 墜落時、樹上作業者の姿勢はしばしば傾斜し又は水平に近くなり、衝撃が頭頂部のみならず側頭部及び後頭部に集中することが多い。
  2. 振り子運動(ペンデュラム) ロープワーク中に制御を喪失した場合、樹幹又は枝への側面衝突が発生するおそれがある。
  3. 上方からの荷重物 リギング作業中の枝又は丸太の落下は、一般建設で想定される飛来・落下物よりも質量が大きく、方向が不規則となる傾向がある。
  4. チェーンソー近接作業 飛散物及びキックバックが、顔面又は側頭部に達するリスクが常時存在する。
  5. 長時間の垂直姿勢 あごひもが外れた場合、墜落時の頭部保護機能が直ちに失われることから、確実な保持が極めて重要となる。

2 既存規格の限界

JIS T 8131:2015 の適用範囲は、飛来物・落下物用及び転倒・転落時保護用に対する産業用ヘルメットの要件を規定するものであり、樹木作業については適用対象として想定されていません。

また、衝撃試験は前頭部及び後頭部の2点においてのみ実施するものとされており、側面衝撃は試験対象外です。あごひもについては必須とされているものの、その保持力は墜落時保護を前提として設計されたものではありません。

一方、国際的には、樹木作業用ヘルメットについては EN 12492(登山・ロープアクセス用ヘルメット規格)準拠が事実上の業界標準とされており、英国アーボリカルチャー及び林業諮問グループ(AFAG)の推奨並びに英国安全衛生庁(HSE)のアーボリスト用個人用保護具ガイドにおいて支持されている構造です。

第5章 参照すべき国際規格の全体像

樹木作業用ヘルメットの要件を整理するに当たり、参照すべき主な規格は次のとおりです。

規格対象樹木作業への適合度
JIS T 8131:2015産業用ヘルメット(飛来・落下/転倒・転落)日本国内法令上のベースライン。側面衝撃は試験対象外
厚労告示第六十六号保護帽(型式検定対象)日本国内市場流通の前提。強制規格
EN 12492:2012登山用ヘルメット(ロープアクセス・高所作業に転用)樹木作業の事実上の国際標準
EN 397:2012産業用ヘルメットJIS T 8131 に近い。樹木作業単独では不十分
EN 50365電気絶縁ヘルメット(交流1,000V以下)ラインクリアランス作業で必要
ANSI Z89.1-2014産業用保護帽(Type I/II、Class G/E/C)米国ベースライン。Type II を推奨
ANSI Z133-2017樹木作業安全要件樹木作業に係る個人用保護具体系の米国標準

第6章 樹木作業用ヘルメットの三層要件

以上の検討を踏まえ、当協会は樹木作業用ヘルメットの要件を、次の三層構造により整理することとしました。

1 推奨要件 ― 理想的な装備

ア 基本性能要件

  1. 二重認証 EN 12492 と EN 397、又は EN 12492 と ANSI Z89.1 Type II の両方に適合すること。
  2. 多方向衝撃保護 EN 12492 に準拠した質量5キログラムの平面形ストライカによる前方・後方・側方の3方向衝撃試験(頭型を30度傾斜)において、伝達衝撃力10キロニュートン以下であること。
  3. クラウン衝撃 EN 12492 の2メートル落下試験(衝撃エネルギー100ジュール相当。EN 397 の49ジュールの約2倍)において、伝達衝撃力10キロニュートン以下であること。
  4. 貫通抵抗 EN 12492(質量3キログラムの尖端ストライカを用い、50ミリメートル半径内で人頭模型に接触しないこと)及び JIS T 8131(転倒・転落時保護用の15ミリメートル未満くぼみ基準)の両方を満たすこと。

イ 保持システム

  1. あごひも保持力 500ニュートンで破断又は伸長しないこと(EN 12492 の要求事項)。
  2. 4点保持 頭頂部方向及び後頭部方向から2点ずつによる保持構造により、いかなる姿勢においてもずれを生じないこと。
  3. あごひも幅 顎及び頸部への食い込みを防止する設計(ベルト・パッド構造)であること。
  4. 切替式あごひも 二重認証機種(EN 397 モードでは150〜250ニュートンで解放、EN 12492 モードでは500ニュートンで保持)を採用し、地上作業と樹上作業を一台で対応可能とすること。

ウ 付属保護具(一体型又は互換型)

  1. 聴覚保護 ANSI S3.19、EN 352-1 又は EN 352-3 に適合するイヤマフを一体化すること。遮音性能(NRR)は過剰保護を避け、25デシベル程度を目安とする。樹木の亀裂音・警告音等を聞き取る必要があるため、適切かつ過剰でない水準を選定することが重要。
  2. 眼保護 ANSI Z87.1 又は EN 166 に適合するセーフティグラス(ヘルメット内蔵型が望ましい)を併用すること。
  3. 顔面保護 メッシュバイザー(木屑遮断用)及びクリアフェイスシールド(飛散物遮断用)を切替え可能な構造とすること。メッシュシールド単独では微細粒子を遮断できないため、ANSI Z87.1 附属書ではメッシュフェイスシールドの下に眼鏡を併用することが推奨されている。
  4. 頸部保護 紫外線遮蔽ネックシェードを併用することにより、夏季の樹上作業における熱中症を予防すること。

エ 快適性及び操作性

  1. 通気孔による換気機能を有すること(耐電圧性能を選択する場合の通気孔禁止規定との整合に留意)。
  2. 重量は600グラム以下を目安とし、付属品装着時においても800グラム程度までに収めること。
  3. 手袋を装着した状態でも片手で調整可能なダイヤル式ヘッドバンドを備えること。
  4. ヘッドランプ、ウェアラブルカメラ等のアクセサリー取付スロット(業界標準2.5ミリメートル×33ミリメートル)を備えること。
  5. 地上クルーからの視認性を確保するため、蛍光オレンジ・蛍光イエロー等の高視認色を採用することが望ましい。

2 標準要件 ― 通常運用における必須水準

ア 認証

  1. EN 12492:2012 又は ANSI Z89.1 Type II Class C のいずれかに適合すること。
  2. 日本国内においては、これに併せて、厚生労働省告示第六十六号に基づく型式検定合格品(労検マーク「飛来・落下物用 兼 墜落時保護用」)であること。

イ 構造

  1. あごひもを常時着用するものとし、脱落を防止する構造であること。
  2. あごひもの保持力は500ニュートン以上(EN 12492 基準)であること。
  3. 衝撃吸収ライナーを内蔵すること(JIS T 8131 の転倒・転落時保護用要件と整合)。
  4. 前頭部及び後頭部の衝撃吸収性能が確認されているものであること。

ウ 付属保護具(分離型可)

  1. 眼保護 ANSI Z133-2017 §3.3.6 において、ANSI Z87.1 適合の眼保護具を樹木作業従事中に着用することが義務付けられている。
  2. 聴覚保護 ANSI Z133-2017 §3.3.5 において、雇用主が聴覚保護具を提供し、8時間時間加重平均で85デシベルを超える環境において着用することが義務付けられている。
  3. 聴覚保護具及びメッシュバイザーは、ヘルメットに互換取付可能なものであること。

エ 電気作業用途

  1. ラインクリアランス作業においては、EN 50365 適合品(交流1,000ボルト以下の絶縁)又は ANSI Z89.1 Class E(20,000ボルト耐圧)を追加要件とすること。
  2. 日本国内においては、厚生労働省告示第六十六号に基づく電気用保護帽(使用電圧7,000ボルト級)適合品を使用すること。

3 最低要件 ― 下回ることが許されない水準

ア 法令適合(日本国内における絶対的基準)

  1. 労働安全衛生法第四十二条に基づく型式検定合格品(労検マーク付き)であること。
  2. 「飛来・落下物用 兼 墜落時保護用」の表示があること。
  3. 製造後、熱可塑性樹脂(ABS、ポリカーボネート、ポリエチレン)製は3年以内、熱硬化性樹脂(FRP)製は5年以内であること(製造業者が定める交換目安に準拠)。

イ 保持

  1. あごひもを常時着用すること。
  2. あごひもの幅は10ミリメートル以上であり、負荷時に脱落しないこと(JIS T 8131 §4.8)。

ウ 付属保護具

  1. 眼保護具(ANSI Z87.1 又は JIS T 8147 適合品)を着用すること。
  2. チェーンソー操作時には、聴覚保護具(イヤマフ又は耳栓)を着用すること。
  3. 顔面メッシュシールド又はフェイスシールドを着用すること。

エ 点検及び交換

  1. 使用前点検として、亀裂、変色、凹み及びライナーの劣化を目視により確認すること。
  2. 一度でも衝撃を受けた保護帽は、外観に異常が認められない場合であっても、直ちに交換しなければならない。衝撃を受けた保護帽は性能が低下しているため、次の衝撃に対して頭部を十分に保護できないおそれがある。
  3. 着装体は、おおむね1年を目安として交換するものとする。
  4. 有機溶剤、シンナー、塗料等の付着は、帽体材質の劣化原因となるため、これを禁止する。

第7章 結語

一般に「どのようなヘルメットを着用すればよいのか」との問いに対しては、「飛来物・落下物用」の表示があるもの、さらに「電気用」の表示があればなお望ましい、との回答が広く知られています。

しかしながら、樹上作業において想定される事故は、振り子運動による衝突(スイングバック)及び落下物による打撃(ストラックバイ)が中心となります。したがって、樹木作業においては、側頭部への衝撃に対応したヘルメットが望ましく、また、あごひもも墜落時保護を前提として設計されたものが望ましいと考えられます。

加えて、近年の夏季の高温化を踏まえると、通気性についても、熱中症予防の観点から安全に直結する要素と位置付けるべきです。

当協会は、これらの観点を踏まえ、樹木作業に従事する者が、自らの作業実態に即した適切な頭部保護具を選定できるよう、最低・標準・推奨の三層からなる要件を「ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足-樹上作業における頭部保護具-」として取りまとめました。本書は、その策定に至る背景及び根拠を整理したものであり、ガイドライン本体と併せて活用されることを期待するものです。

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Code of Ethics / 2026年4月制定

倫理規程

本規程の対象者が共有すべき、基本的な価値観と行動規範を定めたものです。TCSAのすべての活動の基盤となります。

前文

一般社団法人樹木作業安全協会(以下「TCSA」という。)は、樹木作業に従事するすべての者の安全と健康を守り、もって社会に貢献することを使命とする。

TCSAは、安全とは外部から押し付けられるコンプライアンスではなく、作業者一人ひとりが「自分の安全のために自発的に内在化する」ものでなければならないと信じる。この理念は、個人の安全意識にとどまらず、企業の安全文化、そして業界全体の安全水準の向上へと拡がるものである。

本倫理規程は、第2条に定める対象者が共有すべき基本的な価値観と行動規範を定めるものであり、TCSAのすべての活動の基盤となるものである。

第1章 総則

第1条目的

本規程は、第2条に定める対象者が遵守すべき倫理上の基本原則を定め、樹木作業の安全性、専門性および社会的信頼性の向上を図ることを目的とする。

第2条適用範囲

本規程は、次の者(以下「対象者」という。)に適用する。

  1. TCSAが策定するガイドラインを採用し、または利用する個人および法人
  2. TCSA認定企業
  3. TCSA認定講習の修了者
  4. TCSAの役員および職員
第3条基本理念

本規程の基本理念は、次のとおりとする。

  1. すべての作業者の生命と健康は、いかなる業務上の利益にも優先する。
  2. 安全は、外部からの強制ではなく、自発的な理解と実践によって達成される。
  3. 専門的な知識と技術の継続的な向上は、プロフェッショナルの責務である。
  4. 誠実さと透明性は、信頼の基盤である。

第2章 生命と安全の尊重

第4条安全の最優先

対象者は、作業の効率性、経済性その他のいかなる理由があっても、安全を犠牲にしてはならない。安全でないと判断した作業は、中止する勇気を持たなければならない。

第5条作業停止権の尊重

対象者は、すべての作業者が安全でないと判断した作業を拒否する権利を有することを認め、これを尊重しなければならない。安全上の懸念を表明した者に対して、不利益な取扱いをしてはならない。

第6条危険の共有

対象者は、自ら発見した危険を直ちに関係者に共有しなければならない。危険の隠蔽は、自らの安全のみならず、同僚および第三者の生命を脅かす行為である。

第7条救助能力の維持

空中作業を行う対象者は、緊急時に仲間を救助する能力を維持するよう努めなければならない。レスキュー計画の策定と定期的な訓練の実施は、空中作業における最低限の義務である。

第8条心身の健康管理

対象者は、自己の心身の状態が安全な作業の遂行に適した状態にあることを確認してから作業に臨まなければならない。疲労、体調不良、精神的な動揺がある場合は、無理をせず、その旨を関係者に伝えなければならない。

第3章 専門性と技術の向上

第9条継続的な学習

対象者は、樹木作業に関する知識と技術の向上に継続的に取り組まなければならない。安全基準、作業技術、装備の進歩は日々変化しており、学びを止めることは後退を意味する。

第10条能力の限界の認識

対象者は、自己の知識と技術の限界を正直に認識し、能力を超える作業を引き受けてはならない。必要に応じて、より高い能力を有する者に助言を求め、または作業を委ねる判断をしなければならない。

第11条知識と経験の共有

対象者は、自らの知識と経験を惜しみなく共有し、後進の育成に努めなければならない。安全に関する知識の独占は、業界全体の安全水準の向上を妨げる行為である。

第12条科学的根拠に基づく実践

対象者は、樹木学、力学、安全工学その他の科学的知見に基づいた作業を実践しなければならない。慣習や経験のみに頼る作業は、検証されていないリスクを内包する。

第4章 誠実な事業活動

第13条法令の遵守

対象者は、労働安全衛生法、道路交通法、農薬取締法その他の関連法令を遵守しなければならない。法令の遵守は最低限の義務であり、TCSAの基準はこれを上回る水準を目指すものである。

第14条公正な取引

対象者は、取引先、元請業者、下請業者、顧客との関係において、公正かつ誠実な取引を行わなければならない。不当に低い価格による受注は、安全への投資を削る結果を招き、業界全体の安全水準を低下させる。

第15条顧客に対する誠実さ

対象者は、顧客に対して、作業内容、リスク、費用について正確かつ誠実な説明をしなければならない。不必要な作業の推奨、過大な見積り、作業内容の不十分な説明は、信頼を損なう行為である。

第16条樹木に対する責任

対象者は、樹木学の知見に基づき、樹木の健全性を損なう不適切な作業(過度の剪定、不適切な切断位置、樹皮の不必要な損傷等)を行ってはならない。樹木は生きた存在であり、その管理には専門的な知識に基づく判断が求められる。

第5章 元請業者・下請業者の関係

第17条下請業者の安全に対する元請の責任

元請業者である対象者は、下請業者の作業者の安全についても責任を負うことを認識しなければならない。下請業者の選定にあたっては、当該業者の安全管理能力を確認し、安全管理能力が不十分な業者に作業を委託してはならない。

第18条安全管理体制の確認

元請業者である対象者は、下請業者に対して次の事項を確認しなければならない。

  1. 適切な安全教育を受けた作業者が配置されていること
  2. 作業に必要な資格および免許を有する者が従事すること
  3. 適切な個人用保護具が支給され使用されていること
  4. 作業に使用する装備が適切に点検・整備されていること
  5. 緊急時の対応計画が策定されていること
  6. 適切な労災保険に加入していること
第19条安全のための費用負担

元請業者である対象者は、安全対策に必要な費用を下請代金に適切に反映させなければならない。安全のための費用を下請業者に転嫁し、または安全対策の省略を暗に求めてはならない。

第20条下請業者の自律性の尊重

元請業者である対象者は、下請業者の安全判断を尊重しなければならない。下請業者が安全上の理由で作業の中止や方法の変更を申し出た場合、これを正当に評価し、不利益な取扱いをしてはならない。

第6章 社会に対する責任

第21条第三者の安全確保

対象者は、作業現場周辺の一般市民、通行人、隣接する住民その他の第三者の安全を確保しなければならない。作業区域の設定、交通規制、落下物の防止は、作業者自身の安全と同等に重要である。

第22条環境への配慮

対象者は、樹木作業が環境に与える影響を最小限にするよう努めなければならない。燃料・油脂類の適正な管理、農薬の適正な使用、廃棄物の適切な処理、騒音への配慮を含む。

第23条地域社会との共生

対象者は、作業現場の周辺住民に対して、作業内容、予定時間、想定される影響について可能な限り事前に説明し、理解と協力を得るよう努めなければならない。

第24条業界の信頼向上への貢献

対象者は、自らの言動が樹木作業業界全体の社会的評価に影響することを認識し、業界の信頼向上に貢献するよう努めなければならない。一人の不誠実な行為が、業界全体の信頼を損なうことを忘れてはならない。

第7章 TCSA認定企業の義務

第25条認定企業の倫理規程遵守義務

TCSA認定を受ける企業は、本倫理規程を遵守しなければならない。認定企業は、本規程の精神を企業活動のすべての場面で実践し、安全文化の模範となるよう努めなければならない。

第26条安全管理体制の構築と維持

認定企業は、次の安全管理体制を構築し、維持しなければならない。

  1. 文書化された安全管理規程の策定と運用
  2. 危険評価および作業前ブリーフィングの実施
  3. 事故およびヒヤリハットの記録・分析・再発防止体制
  4. 緊急行動計画および空中レスキュー計画の策定
  5. TCSA認定講習の修了者の適切な配置
  6. 装備の定期的な点検と整備の記録
第27条従業員の教育と訓練

認定企業は、従業員に対して、TCSA認定講習の受講機会を提供し、継続的な安全教育と技術訓練を実施しなければならない。教育と訓練は費用ではなく、企業の安全と成長への投資である。

第28条下請管理の適正化

認定企業が下請業者を使用する場合は、第17条から第20条に定める義務を履行するとともに、下請業者に対してもTCSA認定の取得を推奨しなければならない。

第29条情報の開示と透明性

認定企業は、TCSAが実施する認定審査および更新審査に誠実に協力し、安全管理体制に関する情報を正確に開示しなければならない。

第8章 違反と措置

第30条違反の報告

対象者は、本規程に対する違反を知った場合、TCSAに報告することができる。報告を行った者に対する不利益な取扱いは禁止される。

第31条措置

TCSAは、本規程に対する重大な違反があった場合、理事会の決議により、次の措置を講じることができる。

  1. 注意勧告
  2. 改善命令
  3. 認定の一時停止
  4. 認定の取消し
第32条弁明の機会

TCSAは、前条の措置を講じるにあたり、当該対象者に対して弁明の機会を与えなければならない。

第9章 雑則

第33条規程の改正

本規程の改正は、理事会の決議による。改正にあたっては、対象者の意見を聴取するよう努めなければならない。

第34条施行期日

本規程は、2026年4月1日から施行する。

附則

この改正は、2026年9月21日から施行する。(改正前の「会員」の呼称は、この施行日をもって「対象者」に統一される。)

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Full Text / 2026年5月30日施行

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足樹上作業におけるポジショニング用ランヤード

樹上作業で用いるポジショニング用ランヤードの長さ・構造・運用上の要件を定めた補足ガイドラインです。樹幹の周長が JIS の3,000mm制限を超えやすい実態を踏まえ、長さの一律上限を設けず、自由落下距離60cm以下で管理する考え方を示します。

利用届不要 本ガイドラインの使用は自由です。利用届の提出は必要ありません。会社・団体・個人を問わず、どなたでもそのままご活用いただけます(内容を変更して使用する場合のみ事前許可が必要です)。

(一社)Tree Care Safety Association((一社)樹木作業安全協会)

第1章 総則

1 目的

このガイドラインは、樹上作業における墜落その他の災害を防止し、作業者の生命及び身体の安全を確保するため、樹上作業に従事する者が使用するポジショニング用ランヤードの長さ、構造及び運用上の要件を定めるものである。

2 適用範囲

このガイドラインは、樹木作業に従事する者が使用するポジショニング用ランヤードについて適用する。

JIS T 8165:2018「墜落制止用器具」第5章第4節においては、ワークポジショニング用ロープの全長を3,000ミリメートル以下とする旨が規定されているが、樹上作業においては樹幹の周長が当該長さを超える場合が多く、当該規定をそのまま適用することは、現場の作業実態と整合しない。本ガイドラインは、こうした樹木作業の特殊性を踏まえ、ポジショニング用ランヤードに関する実務的な取扱いを明確化することを目的とするものである。

3 用語の定義

  1. 樹木作業 樹木の剪定、伐採、修復、保全その他樹木に関する作業をいい、樹上作業及び地上作業を含む。
  2. 樹上作業 樹木作業のうち、樹上に登攀し、又は高所作業車等を用いて樹上において行う作業をいう。
  3. ポジショニング用ランヤード 樹上作業中、作業者の作業位置を保持するために用いる調整可能なロープ又はストラップであって、伸縮調節器、コネクタその他の附属器具を含む一式の用具をいう。一般に「ポジショニングランヤード」「フリップライン」又は「ワークポジショニング用ロープ」とも称される。
  4. 伸縮調節器 ロープ等の有効長を任意に調整するための機構をいう。
  5. 自由落下距離 墜落が始まった時点から、ランヤード又はショックアブソーバが衝撃荷重を受け始めるまでに、作業者が自由に落下する距離をいう。
  6. 抜け止め ロープの末端に施す加工又は装着する器具であって、伸縮調節器その他の附属器具からロープが意図せず抜け落ちることを防止するためのものをいう。

第2章 ポジショニング用ランヤードの要件

1 長さに関する規定

長さの上限を設けない樹上作業において使用するポジショニング用ランヤードについては、その長さに関する一律の上限を設けないものとする。

ただし、その長さは、作業対象である樹木の周長、作業位置及び作業内容に応じて、作業者が常に確実に支持される範囲内において、必要最小限となるよう調整するものとする。

2 構造に関する規定

ポジショニング用ランヤードは、次の各号に掲げる要件を満たすものとする。

  1. 作業者が常に支持される長さに調整できる伸縮式のものを標準とすること。
  2. ロープ又はストラップの末端には、伸縮調節器その他の附属器具から抜け落ちることを防止するため、結節、縫製その他の方法による抜け止め又はこれに準じた措置が施されていること。
  3. ロープ、ストラップ、伸縮調節器及びコネクタの強度については、JIS T 8165:2018第6章第2節に定める基準(ロープ及びストラップは19.0キロニュートン以下の力で破断しないこと、伸縮調節器は8.0キロニュートン以下の力で継続的な滑りを生じないこと等)に適合するものを使用すること。

3 自由落下距離の制限

自由落下距離 60cm以下樹上作業中の自由落下距離は、60センチメートル以下に制限するものとする。

この制限は、米国規格 ANSI Z133-2017 第8章第1節第4項に定める基準と整合するものであり、ポジショニング用ランヤードによる作業位置保持中において、墜落が生じた場合の衝撃荷重を抑制し、作業者の身体への負荷及び器具の損傷を最小限にとどめることを目的とするものである。

作業者は、ポジショニング用ランヤードの長さ及びアンカーポイントの位置を、自由落下距離が常に60センチメートルを超えないように調整しなければならない。

第3章 使用上の留意事項

1 使用前点検

ポジショニング用ランヤードを使用する前には、次の各号に掲げる事項について点検を行うものとする。

  1. ロープ又はストラップに、切断、摩耗、毛羽立ち、熱損傷、化学損傷その他の異常がないこと。
  2. 伸縮調節器が円滑に作動し、かつ、所定の位置で確実に保持される状態にあること。
  3. コネクタの開閉動作が円滑であり、外れ止め装置が正常に機能すること。
  4. 末端の抜け止めが確実に施されており、緩み又は損傷がないこと。

2 アンカーポイントの選定

ポジショニング用ランヤードを掛けるアンカーポイントは、次の各号に掲げる条件を満たすものとする。

  1. 作業者の体重及び想定される衝撃荷重に対して十分な強度を有すること。
  2. 原則として、作業者の腰高さ以上の位置に設定し、自由落下距離が60センチメートルを超えないようにすること。
  3. 枯損枝、亀裂のある枝その他の脆弱な箇所を選定しないこと。

3 墜落制止機能との関係

ダブルプロテクションの原則ポジショニング用ランヤードは、作業位置の保持を目的とするものであり、墜落制止用器具に代えて単独で使用してはならない。

樹上作業においては、ポジショニング用ランヤードに加え、別系統のクライミングシステム(主索及び安全索)を併用し、いずれか一の系統が機能を失った場合においても、他の系統により作業者が確実に保持されるよう構成しなければならない(ダブルプロテクションの原則)。

第4章 関連規格との関係

このガイドラインにおける長さに関する取扱いは、次の規格との関係を整理した上で定めるものである。

  1. JIS T 8165:2018第5章第4節において、ワークポジショニング用ロープの全長は3,000ミリメートル以下とする旨が規定されているが、当該規定は、建設業における鉄塔、電柱等の構造物を対象として策定されたものであり、樹幹の周長が当該長さを超えることが多い樹木作業の実態に対しては、必ずしも適合するものではない。
  2. 欧州規格 EN 358:2018 及び ANSI Z133-2017 は、ワークポジショニング用ランヤードについて、一律の長さ上限を定めず、作業者が常に支持される長さに調整できることを要求している。本ガイドラインの規定は、これと整合するものである。
  3. ANSI Z133-2017 第8章第1節第4項は、樹上作業中の自由落下距離を2フィート(約60センチメートル)以下に制限する旨を規定している。本ガイドラインの自由落下距離に関する規定は、これと整合するものである。

第5章 海外製品の取扱い

EN 358 又は ANSI Z133 に適合するワークポジショニング用ランヤード及びサドル類(以下「海外製品」という。)については、労働安全衛生法第四十二条に基づく譲渡等の制限の対象外であり、「墜落制止用器具の規格」(平成三十一年厚生労働省告示第十一号)への適合義務に直接縛られるものではない。

ただし、海外製品を樹上作業において使用する場合は、次の各号に掲げる条件を満たすものとする。

  1. 事業者の措置義務(適切な器具の選定、リスクアセスメントの実施及び取付設備の安全確保)の枠内において使用すること。
  2. 国内の参照強度と同等以上の性能を有するものであること。

前項各号に掲げる条件を満たす場合に限り、作業位置を保持するための器具として海外製品を採用することができる。

参考文献

  • 法令等:労働安全衛生法/労働安全衛生法施行令/労働安全衛生規則/「墜落制止用器具の規格」(平成三十一年厚生労働省告示第十一号)
  • 日本産業規格:JIS T 8165:2018(墜落制止用器具)
  • 国際規格:EN 354:2010(Lanyards)/EN 355:2002(Energy absorbers)/EN 358:2018(Work positioning)/ANSI Z133-2017(Arboricultural Operations)/ANSI/ASSP Z359(Fall Protection Code)
  • 業界ガイドライン:AFAG 401 Tree climbing operations(英国)/HSE Guidance, Tree work: a guide for ground workers(英国)/ISA Best Management Practices ─ Tree Climbers' Field Guide(米国)
  • 解説書等:厚生労働省『墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン』/中央労働災害防止協会『墜落制止用器具の知識と使い方』/林業・木材製造業労働災害防止協会『林業労働災害防止のための作業指針』

特記事項・附則

1 ガイドラインの準拠と免責

本ガイドラインへの準拠は、すべての状況下における安全を保証するものではない。本ガイドライン作成者である(一社)Tree Care Safety Association は、発生する可能性のある、いかなる事故においても責任を負わない。

2 著作・使用条件

本ガイドラインの著作は(一社)Tree Care Safety Association に帰属する。使用は自由とするが、内容変更時は事前許可が必要。連絡先:tcsa-dendro@outlook.com

使用の際は「ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足-樹上作業におけるポジショニング用ランヤード-:(一社)Tree Care Safety Association」を明記すること。

3 改訂

本ガイドラインは適宜改訂されるため、作業前に最新改訂版を確認すること。

附則

  1. このガイドラインは、2026年5月30日から施行する。
  2. このガイドラインは、必要に応じて見直しを行うものとする。

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Full Text / 2026年6月4日施行

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足版高所作業車のバケット内作業における
レストレイント(接近防止)保護具の使用

高所作業車(垂直昇降式を除く)のバケット内作業における墜落防止用保護具の選択を整理した補足版です。墜落そのものを起こさないレストレイント(接近防止)が、フォールアレスト単独運用より安全であることを、労働安全衛生規則第百九十四条の二十二の趣旨に即して示します。

利用届不要 本ガイドラインの使用は自由です。利用届の提出は必要ありません。会社・団体・個人を問わず、どなたでもそのままご活用いただけます(内容を変更して使用する場合のみ事前許可が必要です)。

(一社)Tree Care Safety Association((一社)樹木作業安全協会)

第1 趣旨

本補足版は、ワークポジショニング(樹上作業)ガイドラインを補完し、高所作業車(垂直昇降式を除く。)のバケット(作業床)内における墜落防止用保護具の選択について、労働安全衛生規則第百九十四条の二十二の趣旨に即した整理を示すものである。

結論高所作業車のバケット内作業においては、墜落そのものを発生させないレストレイントシステムが、フォールアレスト(墜落を捕捉して制止する方式)よりも安全である。

レストレイント用保護具の使用は、第百九十四条の二十二にいう「等」がこれを含むとの行政の見解により可能である。本補足版は、許容される保護具とその使用法を安全性の序列に従って定める。

第2 法令上の出発点

労働安全衛生規則第百九十四条の二十二(要約)

事業者は、高所作業車(作業床が接地面に対し垂直にのみ上昇し、又は下降する構造のものを除く。)を用いて作業を行うときは、当該高所作業車の作業床上の労働者に要求性能墜落制止用器具等を使用させなければならない。

(1)「要求性能墜落制止用器具」とは

「墜落による危険のおそれに応じた性能を有する墜落制止用器具」の略称であり(安衛則第百三十条の五第一項)、その性能は厚生労働大臣告示「墜落制止用器具の規格」及び日本産業規格 JIS T 8165 に適合するものをいう。種類は「胴ベルト型(一本つり)」と「フルハーネス型(一本つり)」の二種であり、作業姿勢を保持するための「胴ベルト型(U字つり)」は墜落制止用器具に含まれない(ワークポジショニング用器具に分類される)。

高所作業車の作業床における運用上は、高さに関係なくフルハーネス型の着用が求められる。したがって本条にいう「要求性能墜落制止用器具」とは、実務上フルハーネス型を指す。

(2)「等」とは

本条は「要求性能墜落制止用器具等を使用させ」と規定する。本協会が厚生労働省に照会したところ(平成31年2月22日付け照会、同年3月4日付け回答)、この「等」はレストレイント用保護具を指すものとされた。すなわち、高所作業車においてレストレイント用保護具を使用することは可能である。

この見解は、墜落防止用保護具の選択に関する厚生労働省の検討会論点整理とも整合する。同整理は、第百九十四条の二十二の作業床を含む「不安定な作業床」における保護具の選択肢として、フォールアレスト(FA)と並べて「接近防止のための命綱(ワークレストレイント/WR)」を明示し、規定の趣旨を、作業者が投げ出される等の危険があるため命綱を使用することとされている、と説明している。

(3)本条が認めるもの

以上から、本条のもとでは、フォールアレスト構成に限らず、レストレイント用保護具を含むレストレイントシステムを用いることができる。いずれの構成を選ぶかは、作業箇所の状況に応じ、安全性を基準として選択すべきものである。本補足版は、バケット内作業においてはレストレイントを優先すべきことを、次条以降で示す。

第3 フォールアレストでバケットから転落した場合のリスク

本条の文言を字義どおり「フルハーネスにショックアブソーバ付きランヤードを接続し、墜落を捕捉する(フォールアレスト)」とのみ運用した場合、バケットからの転落時に次の諸リスクが顕在化する。これらは樹木作業の現場条件において特に重大である。

リスク① クリアランス不足による地面への激突

フォールアレストは「墜落を起こした後に止める」方式であるため、停止までに相応の落下距離(クリアランス)を要する。厚生労働省ガイドラインの計算例(第一種ショックアブソーバ)に基づくと、作業床(足元)からの落下距離は概ね4.0〜4.3メートルに達する。手すり高さを加味しても、作業床高さがおおむね4メートル前後を下回る低所作業では、転落時に身体が地面へ到達(激突)するおそれがある。

樹木作業の高所作業車運用は地上付近〜中低所での作業も多く、「制止するための高さ」が確保できない場面が構造的に存在する。フォールアレスト単独運用は、この場面で保護として機能しない。数値は着用者の体格・製品性能により前後するため、実際の選定は各製品の取扱説明書及び表示クリアランスによること。

リスク② 一人作業における中吊り・救助不能・サスペンショントラウマ

転落して命綱で宙吊り(中吊り)状態になった場合、一人親方・単独作業では速やかな救助者が存在しない。さらに、宙吊りが継続すると、脚部の静脈にうっ血が生じて血液が心臓へ還流しにくくなり、短時間で意識障害・循環不全に至る「サスペンション・トラウマ(宙吊り症候群)」を発症するおそれがある。フォールアレストは「止めた後の救助」を前提とする方式であり、救助体制を確保できない単独作業では前提が成立しない。

リスク③ 通電施設上への転落による感電

樹木作業は電線・変圧器その他の通電施設に近接して行われることが多い。バケットから転落し、命綱で振られた身体が通電部に接触・接近すれば、感電に至る。フォールアレストは墜落後の身体の振れ・到達範囲を許容する方式であり、通電施設上では「止めた位置」自体が新たな致命的危険源となり得る。

リスク④ スイングバック(振り子)による樹木等への激突

取付設備(アンカー)が身体の真上にない場合、転落した身体は振り子状に振られ(スイングバック)、樹幹・枝・構造物に激突する。フォールアレストでは落下を止めても、この水平方向の振れによる二次衝突を防げない。樹木という多数の硬質障害物に囲まれた環境では、振れによる激突リスクが構造的に高い。

第4 「等」の解釈とレストレイント(接近防止)の位置づけ

第3に示したリスク①〜④は、いずれも「墜落が起きること」を前提として初めて発生する。したがって、これらのリスクを根本から低減する最も確実な方法は、墜落そのものを発生させないこと——すなわち接近防止(レストレイント)である。

(1)行政の枠組みにおける位置づけ

厚生労働省の検討会論点整理(安衛則第百九十四条の二十二、クレーン則第二十七条、ゴンドラ則第十七条に共通する「不安定な作業床」を対象とした保護具選択の整理)は、これらの作業床における保護具の選択肢として、フォールアレスト(FA)と並べて「接近防止のための命綱(ワークレストレイント/WR)」を明示している。ワークレストレイントは、作業者が墜落危険箇所へ接近しないよう、命綱のロープの長さや取付設備の位置を設定する方式と定義されている。

(2)本補足版の法令解釈

  1. 本条は労働者にフルハーネス型墜落制止用器具(要求性能墜落制止用器具)の着用を義務づける。レストレイントを採る場合も、フルハーネスは着用する。
  2. 「等」は、フルハーネスに付随する命綱・ランヤード・取付設備(その他の命綱)を含む。
  3. 本条は命綱の接続構成(FA/WR)を指定していない。フルハーネスを着用したうえで、命綱を接近防止(レストレイント)構成で用いることは、本条の要求を満たす。
  4. 第3のリスク①〜④に照らせば、バケット内作業においてレストレイントは、フォールアレスト単独運用に優先して選択されるべき上位の手段である。

すなわちレストレイントは、フルハーネスを着けない口実ではなく、フルハーネスを着けたうえで墜落を起こさない使い方を選ぶ、という積極的・予防的選択である。この考え方は、墜落防止策の優先順位(除去・防止 > 接近防止 > 墜落制止)を重視する国際的実務とも整合する。

第5 使用する保護具とその選択(安全性の序列)

(1)基本方針

バケットへの乗り込み及びバケット内作業においては、墜落してから止めるのではなく、そもそも墜落しないことが最も安全である。よって本補足版は、レストレイントシステムを基本とする。いずれの保護具を用いる場合も、命綱の長さは、作業者がバケットの手すり外(墜落危険箇所)へ到達し得ない短さに調整する。

(2)樹木作業の実態との接続

樹木作業では、高所作業車のバケットが進入できない箇所を作業者が樹上に登って作業する場合が多い。樹上作業者はワークポジショニング用保護具を用いて作業し、その後バケット作業に移行することがある。本補足版は、この移行を妨げず、樹上で用いてきた保護具を、レストレイント機能を備える限り、バケット作業でも継続して使用できることとする。フォールアレスト(ショックアブソーバ)構成への着け替えは要しない。

(3)許容される保護具と推奨順位

次の保護具を、いずれもレストレイント構成(命綱を上記の短さに調整)で用いることができる。番号は安全性の推奨順位を表す。

第一順位要求性能墜落制止用器具(フルハーネス型)── 命綱は、胸部アタッチメント又は背部アタッチメントに接続する。万一レストレイントの幾何が一時的に崩れた場合でも、胸部・背部アタッチメントは衝撃荷重を全身に分散して受け止める荷重経路を有する。
第二順位ワークポジショニング用保護具(レストレイント機能を有するアタッチメントを備えるもの)── 墜落を想定しない設計のため、命綱を墜落しない短さに調整して用いることを前提とする。衝撃荷重を全身で受ける荷重経路を持たない点で安全性の余裕が小さいため、第二順位とする。

(4)第二順位の保護具に関する適合要件

第二順位のワークポジショニング用保護具をレストレイントとして用いる場合、命綱を接続するアタッチメント及び命綱系統は、次の要件にすべて適合するものとする。

ア 強度(JIS T 8165:2018 に適合すること)

  • ワークポジショニング用ロープ及びストラップは、アイ加工部を含め 19.0 kN で破断しないこと(同規格6.2 a)。
  • 命綱を接続するコネクタ(フック・専用カラビナ)は、全長方向に 11.5 kN で破断しないこと(同規格6.2 b)。
  • 身体側のアタッチメント(環:D環・角環など)は、11.5 kN で有害な隙間が発生し、又は破断しないこと(同規格6.3)。環取付部も同じく 11.5 kN を満たすこと。
  • 伸縮調節器は、同規格に定める引張試験に適合すること。

イ 構造

  • 命綱を接続するための専用のアタッチメント(環)であること。装備吊り用のループ等、身体保持を目的としない部位を流用してはならない。
  • 誤接続、不意の外れ、又は回しがけによる強度低下を生じない構造であること。

ウ 機能(レストレイントとしての成立)

  • 命綱長を、作業者がバケットの手すり外(墜落危険箇所)へ到達し得ない短さに調整できる伸縮調節機能を備えること。

エ 限界の明示

上記アの強度適合は、アタッチメント及び命綱系統が破断しないことを担保するにとどまる。ワークポジショニング用保護具は墜落を想定した荷重経路(肩・腰部・腿への分散)を持たないため、万一レストレイントが破れて落下が生じた場合、荷重が腰部・腹部に集中する。これが第二順位を第一順位の下に置く理由であり、強度への適合によってこの順位が逆転するものではない。

(5)用いない保護具

レストレイント機能を有しない単体の胴ベルト(一本つり用の胴ベルト等)は、バケット内作業の保護具として用いない。レストレイントを構成できず、かつ墜落時の身体保護も不十分であり、もはや安全な選択とはいえない。

(6)現状認識と本協会の方針

現状、バケット内でフルハーネス及びショックアブソーバを装着していれば適法・十分と見なされ、ワークポジショニング用保護具やレストレイント構成はかえって不適と見られがちである。しかし、ショックアブソーバを前提とするフォールアレスト単独運用こそ、第3のリスク①〜④を内包する、本来最も避けるべき使用形態である。本協会は、外形的な装着の有無ではなく、墜落を発生させない使用形態(レストレイントシステム)を推奨する。これが作業者の安全を第一とする選択である。

第6 レストレイントが成立するための条件(必須要件)

必須要件レストレイントは、次の条件がすべて満たされる場合に限り、墜落防止として機能する。一つでも欠ければレストレイントは成立せず、その場合は墜落制止(フォールアレスト)性能を確保しなければならない。
  1. 取付設備(アンカー)の位置及び命綱長を、作業者の身体が墜落危険箇所(バケットの手すり外)へ到達し得ない範囲に確実に設定すること。
  2. 作業中の姿勢変化・身を乗り出す動作を見込んでも、上記(1)が維持されること。設定の余裕が乏しい作業では、作業範囲そのものを制限すること。
  3. 取付設備(アンカー)は、レストレイント時の張力に加え、万一レストレイントが破れて墜落制止に至った場合の荷重にも耐えるため、作業者一人あたり 22.2 kN(墜落制止用の取付設備に相当する強度)の静的荷重に耐える強度を有すること。ただし、有資格者の管理の下で安全率2以上をもって設計・設置・使用される墜落保護システムの一部である取付設備は、これと同等とみなす。複数の作業者を一つの取付設備に接続する場合は、人数分を乗じた強度を確保すること。
  4. バケットの転覆・傾斜・急動作(スイング)が生じ得る場合の挙動を作業計画(安衛則第百九十四条の九)で評価し、必要な追加措置を講じること。
  5. 上記の条件が確保できない作業箇所では、レストレイントを成立させ得ないものとして扱い、墜落制止(フルハーネス+適切なショックアブソーバ)構成によること。ただしリスク①の地面到達のおそれがある低所では、作業方法そのものの見直し(作業床高さ・取付設備の確保等)を優先すること。

第7 結論

高所作業車のバケット内作業においては、墜落そのものを発生させないレストレイントシステムが最も安全である。その使用は、第百九十四条の二十二にいう「等」がレストレイント用保護具を含むとの行政の見解により可能である。

許容される保護具は、安全性の序列に従い、第一に要求性能墜落制止用器具(フルハーネス型・胸部又は背部アタッチメント使用)、第二にレストレイント機能を有するアタッチメントを備えるワークポジショニング用保護具とし、いずれも命綱を墜落しない短さに調整する。

レストレイントシステムは、フォールアレスト単独運用が抱える四つのリスク——クリアランス不足による地面激突、単独作業での中吊り・救助不能及びサスペンショントラウマ、通電施設上での感電、スイングバックによる樹木等への激突——を、墜落そのものを発生させないことにより根本から低減する。

ただしレストレイントは、第6の成立条件が確実に管理される場合にのみ機能する。本協会は、各作業箇所においてこの成立条件の確認を作業計画に組み込むことを求める。

出典・根拠/特記事項・附則

出典・根拠の扱い

  • 「等」がレストレイント用保護具を含むとの解釈は、本協会が厚生労働省に対しメールにより行った照会(平成31年2月22日)に対する回答(平成31年3月4日)に基づく。本補足版では、確定した通達・解釈例規ではなく、照会回答による行政の見解として位置づける。なお、当該回答は、厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課によるものである。
  • 第2(2)の検討会論点整理は、上記見解と整合する補強資料として参照する。
  • 第6(3)の取付設備強度 22.2 kN は、墜落制止用取付設備に求められる強度(国際的には5,000 lbf=22.2 kN)に相当する。レストレイントが破れて墜落制止に至る場合に備える趣旨である。

本補足版の方向性は、ANSI Z133 を含む米国の高所作業装置の枠組み(ブーム型での相当な落下距離、フルボディハーネスの要求、レストレイント用途の重視、ANSI Z359.2 によるレストレイントの予防的措置としての推奨)とも整合する。ただし Z133 固有の条項・数値は対訳リファレンスにより確認すること。

特記事項

1 準拠と免責 本補足版への準拠は、すべての状況下における安全を保証するものではない。本ガイドライン作成者である(一社)Tree Care Safety Association は、発生する可能性のある、いかなる事故においても責任を負わない。

2 著作・使用条件 本ガイドラインの著作は(一社)Tree Care Safety Association に帰属する。使用は自由とするが、内容変更時は事前許可が必要。連絡先:tcsa-dendro@outlook.com 使用の際は「ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足版-高所作業車のバケット内作業におけるレストレイント(接近防止)保護具の使用について-:(一社)Tree Care Safety Association」を明記すること。

3 改訂 本補足版は適宜改訂されるため、作業前に最新改訂版を確認すること。

附則

  1. この補足版は、2026年6月4日から施行する。
  2. この補足版は、必要に応じて見直しを行うものとする。

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レストレイントの成立条件や作業計画への組み込みなど、現場の実態に合わせてご案内します。

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Full Text / 2026年6月4日施行

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足樹上作業における
ワークポジショニング用保護具

樹上作業で作業位置を保持するためのワークポジショニング用保護具(胴ベルト・ランヤード・伸縮調節器・コネクタ等)の選定と性能要件を定めた補足ガイドラインです。墜落制止用器具を予定しない理由を整理し、国内外の規格を比較したうえで TCSA 推奨の最低基準を示します。

利用届不要 本ガイドラインの使用は自由です。利用届の提出は必要ありません。会社・団体・個人を問わず、どなたでもそのままご活用いただけます(複製・転載・改変を行う場合のみ事前のご連絡が必要です)。

(一社)Tree Care Safety Association((一社)樹木作業安全協会)

第1 使用する保護具

樹木作業において、作業者が身体の作業位置を保持するために使用する保護具は、ワークポジショニング用保護具(以下「ワークポジショニング用器具」という。)とする。これは、取付設備に回し掛けしたロープ等の張力によって身体を支え、両手を用いた作業を可能にするための器具であり、胴ベルト、ワークポジショニング用ロープ(ランヤード)、伸縮調節器及びコネクタ等で構成される。

使用目的の限定ワークポジショニング用器具は、身体の作業位置を保持することを目的とするものであって、墜落を制止することを目的とするものではない。このため、ワークポジショニング用器具を墜落の制止を目的として使用してはならない。

第2 墜落制止用器具を使用しない理由

本ガイドラインでは、樹木作業において墜落制止用器具(フォールアレスト)を使用することを予定していない。その理由は、次のとおりである。

  1. ロープアクセスに関する国際規格である ISO 22846 は、その適用範囲においてアーボリカルチャー(樹木作業)に適用しない旨を明記している。樹木作業は、ロープアクセスとは異なる独自の技術体系として扱われている。
  2. 墜落制止(フォールアレスト)システムは、ISO 14567(単一支点アンカー機器)に基づき試験によって強度が証明されたアンカー機器に接続されることを前提として成立するものである。しかし、樹木作業における取付設備は生立木の幹又は枝という自然物であり、ISO 14567 に適合する強度の証明されたアンカー機器たり得ず、その強度を人工的に証明することができない。
  3. 以上のことから、本ガイドラインにおいては、墜落制止用器具の設置(セッティング)を予定しないものとする。

第3 ワークポジショニング用器具の性能要件

ワークポジショニング用器具は、「墜落制止用器具の規格」(平成三十一年厚生労働省告示第十一号)に規定する墜落制止用器具に該当せず、同告示の適合義務(労働安全衛生法第四十二条に基づく譲渡等の制限)の対象とならない。また、ロープ高所作業(労働安全衛生規則第五百三十九条の二から第五百三十九条の九まで)におけるメインロープ及びライフラインにも該当しない。このため、ワークポジショニング用器具について、特定の構造規格への適合を強制する国内法令上の規定は存在しない。

その選定に当たっては、次表に掲げる国内外の規格を参考とし、これらと同等以上の性能を有するものを選定するものとする。

部位JIS T 8165:2018EN(欧州)ANSI Z133-2017
(米国・樹木専用)
TCSA推奨
(最低基準)
ワークポジショニング用ロープ(ランヤード)6.2により 19.0kNEN358:静的15kNを3分間保持最小破断強度 24.0kN(5,400 lbf)24.0kN 以上
伸縮調節器6.2により 8.0kN(EN358システムの一部)―8.0kN 以上
胴ベルト・座部支持ベルト5.4・6.2に定める構造及び強度(22.0kN)EN358/EN813:静的15kN(climbing system として規定)15kN 以上
コネクタ(フック・カラビナ)接続具の引張強度に定める値(11.5kN)EN362:15kN自閉自緊式・22.24kN(5,000 lbf)自閉自緊式・22.24kN 以上

TCSA推奨値は、樹木作業の特性(樹上での動的荷重の可能性)を踏まえ、樹木作業専用規格である ANSI Z133-2017 の値を最低基準として採用したものである。

第4 海外製品の取扱い

EN 358 又は ANSI Z133 に適合するワークポジショニング用ランヤード及びサドル類(以下「海外製品」という。)については、労働安全衛生法第四十二条に基づく譲渡等の制限の対象外であり、「墜落制止用器具の規格」(平成三十一年厚生労働省告示第十一号)への適合義務に直接縛られるものではない。

ただし、海外製品を樹上作業において使用する場合は、次の各号に掲げる条件を満たすものとする。

  1. 事業者の措置義務(適切な器具の選定、リスクアセスメントの実施及び取付設備の安全確保)の枠内において使用すること。
  2. 国内の参照強度と同等以上の性能を有するものであること。

前項各号に掲げる条件を満たす場合に限り、作業位置を保持するための器具として海外製品を採用することができる。

参考文献

  • 法令・告示:労働安全衛生法/労働安全衛生規則/「墜落制止用器具の規格」(平成三十一年厚生労働省告示第十一号)/墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン(平成三十年六月二十二日付け基発0622第2号)/ロープ高所作業に係る労働安全衛生規則の改正の施行について(平成二十七年八月五日付け基発0805第1号)
  • 日本産業規格(JIS):JIS T 8165:2018(墜落制止用器具)
  • 国際規格(ISO):ISO 22846(ロープアクセスシステム)/ISO 14567(単一支点アンカー機器)/ISO 10333(シリーズ・墜落制止用器具)
  • 欧州規格(EN):EN 358(ワークポジショニング用ベルト及びランヤード)/EN 813(シットハーネス)/EN 362(コネクタ)
  • 米国規格(ANSI):ANSI Z133-2017(樹木作業の安全要求事項)

特記事項・附則

1 ガイドラインの準拠と免責

本ガイドラインは、ワークポジショニング(樹上作業)ガイドラインを補完するものとして、ワークポジショニング用保護具の選定及び使用に関する事項を定めるものであり、同ガイドラインと一体のものとして適用する。本ガイドラインは、関係法令の遵守を免除するものではなく、実際の作業に当たっては、最新の法令、規格及び製造業者の指示に従うものとする。本ガイドラインに基づく措置の実施により生じた結果について、一般社団法人樹木作業安全協会は責任を負わない。

2 著作及び使用条件

本ガイドラインの著作権は、一般社団法人樹木作業安全協会に帰属する。本ガイドラインの全部又は一部を複製、転載又は改変しようとするときは、あらかじめ当協会に連絡するものとする。連絡先:tcsa-dendro@outlook.com

3 改訂

本ガイドラインは、法令の改正、規格の改訂その他の事由により必要が生じたときは、随時改訂するものとする。

附則

  1. このガイドラインは、令和八年六月四日から施行する。
  2. このガイドラインは、必要に応じて見直しを行うものとする。

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規格の読み方や、TCSA推奨基準に沿った器具の選び方など、現場の実態に合わせてご案内します。

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Full Text / 2026年6月5日施行

ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン補足SRS(Stationary Rope System)
ベストプラクティス

SRS(ステーショナリーロープシステム)に固有の事故を防ぐためのベストプラクティスです。「システムを設計する → 切断・無確保・救助に備える → チームで守る」の3章構成で、各項目は防ぐべき失敗モードを先に示します。

利用届不要 本ガイドラインの使用は自由です。利用届の提出は必要ありません。会社・団体・個人を問わず、どなたでもそのままご活用いただけます(内容を変更して使用する場合のみ事前許可が必要です)。

(一社)Tree Care Safety Association((一社)樹木作業安全協会)

本書の二つの柱

SRSの事故は、次の二つの理解不足から生じることが多い。ここで、理解とは知識と経験からなり、得た知識を現場に当てはめることができることであり、現場から得られた経験が本で書かれた理論と一致するかどうか、その都度確認作業から得られるものを理解とする。知識と経験、足りない方を補い、より深い理解が安全作業につながる。

  • システムの力学:SRS(Stationary Rope System)が MRS(Moving Rope System)とは異なる荷重・衝撃・切断特性を持つことの理解。
  • チームの目:クライマー一人では見えないリスクを、どうしたら減らせるのか。チーム連携、コミュニケーションの重要性の理解。

本書は「システムを設計する(第1章)→ 切断・無確保・救助に備える(第2章)→ チームで守る(第3章)」の順で構成する。各項は、原則として「どの事故・失敗モードを防ぐためか」を先に示す。

第1章 アンカーとシステムの力学(SRS固有)

SRSの事故の多くは、MRSの感覚のままSRSを運用し、荷重・衝撃・切断のいずれも過小評価することから生じる。

1.1 アンカーポイントの荷重を「系として」理解する

失敗モード:ベーサルアンカーとキャノピーアンカーで、アンカーポイントにかかる荷重の大きさ・方向が変化することを理解せず折損させる。SRSはMRSのような「ロープ間に枝を内包させる」制約がないため、より高く細いアンカーポイントを容易に選んでしまい、欠損による落下を招く。

対応策:

  • ベーサル/キャノピーで荷重評価を切り替える。ベーサルアンカーでは頭上分岐がリダイレクトとして働き、登り側とアンカー側の張力の合力がかかる。合力は単純な体重を上回り得る。
  • 「登りやすい高さ」ではなく「荷重に耐える太さ・健全性」で選ぶ。
  • 疑わしければ一段下げ、到達後に上方へ進める。

1.2 ロードトレイル(リダイレクト経路)の荷重方向を予測する

失敗モード:各リダイレクト枝にかかる荷重の方向・大きさを予測できず、枝を折る方向に載荷してしまう。

対応策:

  • 各リダイレクトで、入り角と出し角の二等分線方向に合力がかかることを図示してから設定する。
  • 合力が枝を圧縮する経路を選ぶ。引き剥がし・てこ方向を避ける。
  • 鋭角のリダイレクトを避ける(合力増大・摩擦急増)。

1.3 衝撃荷重(ショックロード)の増大を前提に設計する

失敗モード:SRSは全体重が1本にかかり、ショックロードを吸収するロープ長(アンカー〜接続部)がMRSと比較し、実質半分程度になるため、登攀時の反動や、降下時の急停止にはロープにかかる荷重が大きく、加えてSRSに使用されるロープはMRSで使用するロープに比べ伸縮率が小さいものが多いため、より一層ロープにかかる荷重が大きくなり、アンカーポイント欠損リスクが増す。

対応策:

  • 静的体重ではなく動的荷重を念頭にアンカーの健全性を評価する。
  • たるみ(スラック)を最小化し、有効吸収長を確保する。
  • 登攀開始前に必ず2名分の静荷重を掛ける。及びシステムの制動確認を行う。

1.4 動力を用いたSRSクライミングシステムの使用条件

動力(電動等)を用いたSRSクライミングシステム(動力式アセンダー等)は登攀効率を高め、疲労の軽減に有効である。一方、動力系・制御系の不具合により登攀機能が失われる事態を想定する必要がある。本システムを使用する場合、次の使用条件をすべて満たすこと。

使用条件:

  • クライミングシステムが機能しなくなった場合、直ちに登攀システムとは別の落下防止機能が働くこと。ただしその落下防止機能が作動する際、クライミングシステムに衝撃荷重がかからないこと。
  • クライミングシステムが機能しなくなった場合に備え、登攀システムとは別に降下システムが存在、または携帯していること。
  • 上記の「別の落下防止機能」と「別の降下システム」は、互いに別物(独立した別個の手段)であること。

趣旨:落下防止機能の作動時にクライミングシステムへ衝撃荷重をかけない要件は、不具合を起こした登攀系に二次的な過負荷・破断を生じさせないためである。落下防止と降下を別物とする要件は、一つの手段の不具合が両機能を同時に失わせることを防ぐためである。本条は救助即応性(第2.8節)と一体で運用する。

1.5 最初のアクセスは地上から回収可能な方法を選ぶ

失敗モード:登攀途中で、腐朽・亀裂等の木のハザードや、昆虫・動物の巣等の動植物のハザードが見つかり、それ以上の登攀リスクが高いと判断して登攀を中止する場合、地上からロープを回収できない方式では、クライミングラインを回収できなくなる。

対応策:SRS(Stationary Rope System)を選択する場合、最初の木へのアクセスは、地上からロープの回収が可能な方法を推奨とする。

【参考】MRS・SRS 比較表 ── 支点・フリクション系の荷重およびアンカー方式による相違

MRS(Moving Rope System)とSRS(Stationary Rope System)について、タイインポイント(TIP)に作用する荷重を中心に整理する。SRSはアンカー方式(キャノピー/ベーサル)により力学および運用が変化するため、両方式を分けて並記する。荷重は登攀者の体重を W として表記する。

項目MRSSRS
キャノピーアンカー
SRS
ベーサルアンカー
ロープの状態TIPを通って動く(折り返し)樹上で固定し、単線を登る基部で固定し、TIPを越えて単線を登る
単線の張力約 W/2(2脚で分担)約 W(単線)約 W(単線)
フリクション系の荷重約 W/2約 W約 W
TIP(支点)荷重約 1倍(≒ W)約 1倍(≒ W)約 2倍(≒ 2W)
TIP荷重の分散の容易さ(リダイレクト等)移動機能を阻害する可能性があるため、ダブルプーリーなど摩擦の軽減措置が必要容易。固定アンカーのため、複数支点の荷重分散・リダイレクト構築が可能容易。同上。基部側のため、地上からの調整も可能
荷重方向のコントロール(合力の鉛直成分)限定的。リダイレクトには摩擦軽減が必要となり、加えて複数のリダイレクトは枝幹との摩擦が増えるため、フリクションの操作が困難可能。リダイレクトで上向き成分を加え、枝の鉛直(曲げ)荷重を抑える設計が可能容易(自由度最大)。2脚を独立に方向づけられ、条件次第で鉛直成分を相殺しうる自由度が高い
ロープ使用量往復分(2倍手繰る)回収式=往復分、非回収式=片道分往復分。降下器具(ディッセンダー等)を介し、クライマーを地上まで降下させる目的でロープを設置した場合は3倍分
アンカー位置樹上樹上手元/樹上
点検対象TIPとスタンディング側のロープTIPと回収側のロープTIPとスタンディング側のロープ
グラウンドワーカーによる管理(地上ビレイ)MRSビレイで可能不可ベーサルアンカーにディッセンダーなどの降下器具を介してロープを設置した場合に可能

※ 数値はいずれも静的・理想モデル(2脚が垂直平行、TIP摩擦を無視)における近似値である。実際には脚の開き角、TIPでの摩擦、および墜落・衝撃時の動的荷重によって値は変動し、特に動的ピーク荷重は上記の静的値を大きく上回る。本表は方式間の相対的な傾向を示す基準として用いること。

※ MRSのフリクション系(フリクションヒッチ・フリクションデバイス)にかかる荷重は、TIP(ロープのタイインポイント)での摩擦に加え、枝幹へのロープ接触による摩擦にも大きく影響される。これらの接触摩擦が左右の脚の張力配分を変えるため、実際の保持荷重は上記の理想値(約 W/2)から変動する。一般に接触摩擦は荷重の一部を分担してヒッチ側の張力を下げる一方、ロープの走行抵抗を増す。フリクションセーバー等の使用や枝幹の樹皮状態によって、その影響度は大きく異なる。

第2章 切断・無確保・救助への備え

2.1 ベーサルアンカーは「2本とも命綱」

失敗モード:ベーサルアンカーでは、目の前の登り側ロープの裏に、幹の反対側へ回り込むアンカー側ロープがある。これも命綱だという意識が持てず、クライミングに用いない側のロープを不意に切断したり、リギングにより降下した枝幹がロープに干渉したりする。

対応策:2本のロープはともにライフ(命)がかかった命綱であることを、クライマー・グラウンドワーカーを含めた作業員全員で周知徹底する。作業開始のコール「スタンドクリア」があった場合には、2本のロープの安全性を確認してから、作業開始了承のコール「オールクリア」を行うこと。特にクライマーの視野外の点検に心がける。

2.2 回収可能なキャノピーアンカーは回収側とクライミング側を峻別する

失敗モード:地上からロープを回収できるキャノピーアンカー(リトリーバブル・アンカー)では、クライマーが体重を預けるクライミング側と、地上での回収やシステム解除に用いる回収側の2つの経路が生じる。両者を取り違えると、回収側に体重を預ける、あるいは回収側を不用意に解除・切断する等により墜落に至る。特に樹上でアンカーを乗り移り(再設置・移動)しながら使用する場合、どちらが命を預けてよい側かを的確に判別できないと致命的になる。

対応策:

  • 地上から登攀し、同じロープで降下し作業を終える場合で、ロープを回収可能なキャノピーアンカーを使用する場合、回収側とクライミング側を常に峻別できるようにする。クライマー・グラウンドワーカーの双方が、どちらが荷重を支える側かを明確に共有する。
  • 樹上で乗り移りながら使用する場合は、回収側とクライミング側でロープの種類・色を変える等、より明確に峻別できるようにする。一目で区別できる状態を保つ。
  • 回収機構(リリース・回収用のタグライン等)を、クライミング側の荷重ラインと物理的・色彩的に分離し、誤接続・誤解除・誤切断を防ぐ。
  • 乗り移り(再設置)時は第2.4節(システム切り替え時の無確保防止)と同じく①「ランヤードを先に付けて、最後に外す(ファーストランヤードタイイン、ラストオフ)」の原則に加え、②新しいシステムのアンカーの強度、システムが有効に機能するか確認後、それまで使用していたシステムを取り外すという手順を徹底し、峻別と接続の継続を両立させる。

2.3 単線への荷重集中=切断リスクの増大

失敗モード:全体重が1本にかかるため、刃物接触時の損傷の広がりが大きく・速く、切断に至りやすい。鋭利なエッジ(細径ロープ+鋭い断面の金具)上をロープが走ると、健全な機材でも切断し得る。

対応策:リギングラインや吊り下ろす枝幹の動線とクライミングラインの位置関係を作業前に決め、常時視認する。使用するギア類のエッジ部分とロープ類との干渉がないか点検し、干渉している場合や接近している場合は、ギア類の設置位置の変更等を行う。全体重が1本に集中するSRSでは、刃物・エッジによる損傷をそもそも発生させないことが最優先となる。

2.4 システム切り替え時の「一瞬の無確保」をなくす

失敗モード:MRSからSRSへの移行やアンカー架け替えの際、「ほんの一瞬」無確保になった瞬間に墜落する。無確保とは、命綱が付いていない状態に加え、緩んだ状態も含む。

対応策:切り替え時は新しい系統の接続を確立してから旧系統を解除し(「先に付けてから外す」、「先に外す」を禁止)、無確保の瞬間をつくらない。切り替え手順をグラウンドワーカーと事前に声出し共有する。無確保の時間がどれほど短くても許容しない規範を共有する。

2.5 ベーサルアンカーの基本要件と2つの用途

ベーサルアンカーは、テンションの変動や登攀動作によって緩み・ずり上がりを生じ得るため、保持性能と確認を前提条件とする。

基本要件(用途を問わず):

  • ロープのテンションが張ったり抜けたりを繰り返しても緩まないこと。
  • グラウンドワーカーが、緩み・ずり上がり等を作業中に確認すること。
  • ロープを張る方向によってロープの結束部分がずれないこと。
  • ヒューマンエラー予防の観点から、ノットレス(結び目を用いない方式)が望ましい。

ベーサルアンカーの使用には、大きく2つの用途がある。

(1)レスキューアンカー(降下システムを組み込む)

非常時にクライマーを降下させるシステムをアンカーに組み込んだアンカーを、本書では「レスキューアンカー」と呼ぶ。次の事項が望ましい。

  • ロープと木の摩擦が大きい場合、降下させられないことがあるため作業前に、実際に降下が可能かを確認すること。
  • 誤操作による墜落を防ぐためのバックアップがあること。
  • アンカーポイントに、ロープと木の股との摩擦を軽減する措置(フリクションセーバー等)があること。
  • クライマーを引き上げる機能があること。

降下操作そのものの要件(単純・アクセス可能・可降下)は次節(第2.6節)に示す。

(2)アンカー目的のベーサルアンカー(降下を想定しない)

クライマーの降下を想定せず、純粋にアンカーとしての目的で用いるベーサルアンカー。この用途では降下機構は必須ではないが、上記の基本要件(緩まない・確認・ノットレス)は満たすこと。

2.6 ベーサルアンカー器具は「全員が降下操作できる」こと

失敗モード:高所で吊り下がったクライマーを降ろす必要が生じた際、使用していたデッセンダーが一部の者にしか馴染みがなく、緊急カムがロックして降下操作ができなかった事例がある。

対応策:クライマーの降下機構を組み込むベーサルアンカー(レスキューアンカー、第2.5節)は、次の3要件をすべて満たす。一つでも欠ける構成は採用しない。

  • 単純:全クルー(緊急時に交代し得る者を含む)が動作原理を理解し操作できる。
  • アクセス可能:作動部が背の低い者を含む全員の手の届く位置にある。
  • 降下:救助時に降下させる機構とそのバックアップを組み込む。(本格的でも簡易でもよいが必須)2次災害防止の観点から誤操作による落下防止のため、使用するディセンダーは、自動で停止する「セルフブレーキ」機能があることに加え、パニック時にロープを握りしめても制御された降下が可能な「パニックストップ」機能双方を備えたディセンダーを推奨する。また、降下するに足るロープ長(アンカーまでの距離の少なくとも3倍)を確認すること。

2.7 固定されていないタイインポイントを乗り越えない

失敗モード:ベーサルアンカーでは、樹冠上部のタイインポイント(TIP)はロープが通過しているだけで、幹や枝に固定されているわけではない。このためクライマーがTIPを乗り越えると、ロープがTIPから外れ、墜落に至る危険がある。

対応策:ベーサルアンカーに限らず、TIPが幹又は枝に固定されていない構成では、使用中のTIPを乗り越えることを禁止する。

2.8 救助即応性

対応策:作業前に「このアンカー構成で吊り下がったクライマーをどう降ろすか」を決める。グラウンドワーカーを救助手順・器具操作で訓練する。ロック・取り違え・操作不能は本番ではなく訓練で洗い出す。

第3章 クライマーとグラウンドワーカーのコミュニケーション

クライマー一人では見えない・気づけないリスクを、グラウンドワーカーが「第三の目」として補う。前述の事故の多くは、地上からのチェックで防げた可能性がある。クライミングに用いない側のロープの切断(2.1)、アンカー器具のロック(2.6)、システム切り替え時の無確保(2.4)は、いずれも地上の目と声が機能していれば回避しやすい。

3.1 役割の明確化

  • 各作業前に、クライマー/ベーサルアンカー管理者/指定レスキュアー/ドロップゾーン管理者の役割を割り当てる。
  • 「誰がアンカーの取り付け方法、器具の設置、緩み等の点検を行うのか」「緊急時に誰が降下させるか」を全員が把握する。

3.2 登攀前の独立チェック(バディチェック)

クライマーの自己チェックを、グラウンドワーカーが独立した第二の目で再確認する。地上から確認する項目:

  • アンカー(ベーサル/キャノピー)の設定・結び・器具のセット。
  • ハーネス・ヘルメット・各接続部の確実な装着。
  • ロープ経路、エッジ保護、刃物・チッパーとの干渉の有無。
  • 2名荷重におけるアンカーポイントの健全性の確認と、枝の動きによる荷重方向の確認。
  • クライミングシステムのフリクション制御の有効性。
  • アンカーとなる枝・幹の健全性を地上の別アングルから再確認。

3.3 コマンド&レスポンス(呼称応答)

  • 切断・降下・移動等の重要動作の前に声出し確認し、「○○します」→「○○どうぞ」の応答を確立する。応答が返るまで動作しない。
  • ドロップゾーンを設定し、「退避(スタンドクリア)」「安全(オールクリア)」の合図を統一する。
  • チェンソー等の騒音下を想定し、音声に加え手信号・笛・無線の併用を作業前に取り決める。合図の意味を全員で事前共有する。

3.4 登攀中のモニタリング(グラウンドワーカーが見るべきもの)

クライマーから見えにくいものを地上から継続監視する。

  • ベーサルアンカーのクライミングに用いない側のロープを刃物・リギングライン・落下する枝幹等から守る(→2.1)。
  • ベーサルアンカーに緩みはないか。ロープの引張方向の変化により緩みが想定できないか(→2.5)。
  • 回収可能なキャノピーアンカーでは、回収側とクライミング側が峻別され、誤接続・誤切断がないか(→2.2)。
  • 地上にクライミングラインが2m以上残っているか。
  • 地上から2m以上の箇所にストパーノットが作られているか
  • タイインポイント上方の枝の挙動・たわみ・破断予兆。
  • ロープの擦れ・エッジ接触、損傷の兆候(→2.3)。
  • システム切り替え時に接続が途切れていないか(「先に付けてから外す」)の確認(→2.4)。
  • クライマーの異常(疲労・体調不良・反応低下)。

3.5 救助時の連携

  • アンカー器具をグラウンドワーカーが降下操作できるよう訓練しておく(→2.6)。
  • 救助手順を作業前に共有し、役割(誰が降下、誰が通報、誰がドロップゾーン管理)を決める。
  • 連絡手段を冗長化する(音声+無線+笛)。緊急時は平常時の合図が通じないことを前提にする。

出発前クイックチェックリスト

システムの力学(第1章)

  • ベーサル/キャノピーで荷重評価を切り替えたか。各リダイレクトで合力方向を予測したか。
  • 衝撃荷重の増大を見込み、たるみを最小化し、バウンズテストで2名荷重時のアンカーポイント健全性と荷重方向を確認したか。
  • レスキュー可能なSRSシステムを用いる場合、クライミングシステムとは別の、樹上作業者を降下させるためのシステムが備わっているか。

切断・無確保・救助(第2章)

  • ベーサルアンカーの2本のロープをともに命綱として全員に周知し、スタンドクリア→2本の安全確認→オールクリアの手順(特にクライマー視野外の点検)を徹底したか。
  • 回収可能なキャノピーアンカーでは、回収側とクライミング側を色・種類で峻別したか(特に樹上での乗り移り時)。
  • リギングライン・吊り下ろす枝幹の動線とロープの位置関係、ギア類とロープの干渉を確認したか。
  • 切り替え時は「先に付けてから外す(ファーストランヤードタイイン、ラストオフ)」とし、新システムのアンカー強度・機能を確認後に旧システムを外せるか(無確保=未接続に加え緩んだ状態も含む)。
  • ベーサルアンカーは、テンションの張り・抜けでも緩まず(ノットレスが望ましい)、グラウンドワーカーが緩み・ずり上がりを確認したか。
  • レスキューベーサルアンカーでは、作業前に降下可能か確認し、誤操作対策のバックアップ・摩擦軽減措置・引き上げ機能を備えたか。
  • 降下機構を組み込むベーサルアンカー(レスキューベーサルアンカー)は、単純・アクセス可能・可降下の3要件を満たすか。

チームで守る(第3章)

  • 役割(クライマー/アンカー管理/レスキュアー/ドロップゾーン)を割り当てたか。
  • グラウンドワーカーによる登攀前の独立チェックを行ったか。
  • コマンド&レスポンス(スタンドクリア→オールクリア)と合図(音声・手信号・笛・無線)を取り決めたか。
  • 登攀中に地上から監視すべき項目(クライミングに用いない側のロープを刃物・リギングライン・落下枝幹から保護、上方の枝、擦れ、切り替え時の接続継続)を共有したか。
  • 今日のアンカー構成での救助手順を共有し、グラウンドワーカーが降下操作を訓練済みか。

特記事項・附則

1 ガイドラインの準拠と免責

樹上作業におけるSRS(Stationary Rope System)ベストプラクティスへの準拠は、すべての状況下における安全を保証するものではない。本ガイドライン作成者である(一社)Tree Care Safety Association は、発生する可能性のある、いかなる事故においても責任を負わない。

2 著作・使用条件

本ガイドラインの著作は(一社)Tree Care Safety Association に帰属する。使用は自由とするが、内容変更時は事前許可が必要。連絡先:tcsa-dendro@outlook.com

使用の際は「樹上作業におけるSRS(Stationary Rope System)ベストプラクティス:(一社)Tree Care Safety Association」を明記すること。

3 改訂

本ガイドラインは適宜改訂されるため、作業前に最新改訂版を確認すること。

附則

  1. このガイドラインは、2026年6月5日から施行する。
  2. このガイドラインは、必要に応じて見直しを行うものとする。
  3. 本書はSRS(ステーショナリーロープシステム)に固有の事項を対象とする。その他MRS(ムービングロープシステム)と共通する事項は除く。

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移動式クレーンによる専用の搭乗設備使用(樹木作業)セミナー

本セミナーは受付を終了しました。
多数のお申し込みをいただき、ありがとうございました。次回開催が決まりましたら、当ホームページにてご案内いたします。
開催日程2026年9月12日(土)
概要概要は下記の通り(詳細はお申し込み後に主催者よりご連絡します。)
会場岐阜県高山市 地内
時間8:00 集合 / 9:00 開始 / 17:00 終了予定
内容座学 ガイドラインに基づく搭乗設備の作業方法、注意事項等実技 搭乗設備の点検、セッティング、使用方法等
定員4人
受講料48,000円/人(今年度 35,000円)
受講条件「ワークポジショニング(樹上作業)ガイドライン」を採用していること。MRS によるクライミングが可能であること。マイギア(PPE を含む)を持参できること。

お申し込みには、下記の「セミナー参加同意書」の内容にご同意いただく必要があります。全文をお読みのうえ、ページ下部の同意チェックにチェックを入れると、お申し込みフォームに進めます。

ご不明な点はありますか?

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電気危険認識セミナー:レベル2高圧通電線樹木作業

開催日時2026年10月10日(土)
概要概要は下記の通り(詳細はお申し込み後に主催者よりご連絡します。)
会場岐阜県高山市
時間8:30 集合 / 9:00 開始 / 17:00 終了
内容座学 電気の基礎知識、離隔距離、樹木作業と電気の危険、緊急時の対応など実技 電柱設備の見分け方/電柱を見て何kV・幹線・分岐・引込線の判別
定員15名
受講料20,000円/人
受講条件なし

お申し込みには、下記の「セミナー参加同意書」の内容にご同意いただく必要があります。全文をお読みのうえ、ページ下部の同意チェックにチェックを入れると、お申し込みフォームに進めます。

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Usage Notification / 2026年5月版

ガイドライン利用届制度

TCSAが策定するガイドラインを業務に採用する組織は、TCSAに「利用届」を提出することで、正規の利用者として登録されます。届出料は無料です。

対象 会社・団体での利用(発注者・施工業者・業界団体・教育機関)には利用届の提出が必要です。個人で利用される方の届出は必要ありません。
※ ガイドラインを使用するだけであれば個人の届出は不要ですが、認定プログラム(TCSA企業認定、2028年から運用予定)の申請には、個人であっても利用届の提出が必要になる予定です。
Purpose

制度の趣旨・目的

本ガイドラインは、樹木に関わる高所作業における安全管理の基準文書であり、その著作権はTCSAに帰属します。発注者が安全な施工業者を選定し、施工業者が適切な安全管理体制を構築するための、業界横断的な基準として複数の組織に採用されています。

利用届制度は、本ガイドラインを業務に採用する組織が利用届を提出することにより、正規の利用者として登録される仕組みです。登録者には、主に次のような対応・支援を行います。

  • ガイドラインに関する技術的な問い合わせへの対応
  • 発注者支援(仕様書への反映方法、業者選定基準等のコンサルティング)
  • 正規利用者であることの証明(利用証の発行)

加えて、同じ安全基準で各業者(元請け業者、下請け業者、工事発注者)が繋がり、より安全へ向かう可能性を持っています。

Eligibility

対象者

区分対象
発注者樹木に関わる作業を外部委託する企業・団体(自治体、造園団体、電力会社、鉄道会社等)
施工業者樹木に関わる作業を受託し実施する企業
業界団体本ガイドラインを採用する団体
教育機関ガイドラインを教育・研修に使用する機関
Process

利用届の手続き

STEP 1
利用届の提出
利用希望者が所定の「利用届」をTCSAに提出します。下のフォームから送信できます。
STEP 2
受理・確認
TCSAが届出内容を確認し、受理通知を発行します。
STEP 3
利用証の発行
正規利用者として「ガイドライン利用証」を発行します。利用証には利用者名・利用開始日・利用区分を記載します。
STEP 4
利用開始
ガイドラインを業務に適用し、正規利用者として登録されます。加えて、ガイドラインに適合した作業を行える業者であることの認定審査を受けることができます。
Services

利用区分と提供サービス

提供サービス発注者施工業者業界団体教育機関
ガイドライン本文の提供○○○○
技術的問い合わせ対応○○○○
利用証の発行○○○○
仕様書反映支援○−−−
業者選定基準策定支援○−○−
安全管理体制構築支援−○○−
教材利用の許諾−−−○
Terms

利用条件

第1条(著作権の帰属)

本ガイドラインの著作権はTCSAに帰属する。利用届の提出により、利用者に著作権が移転することはない。

第2条(利用の範囲)

利用者は、利用届に記載した目的の範囲内で本ガイドラインを利用することができる。

2 利用者は、本ガイドラインの内容を自社の安全基準・仕様書・教育資料等に引用し、又は参照することができる。ただし、引用の際はTCSAを出典として明記しなければならない。

第3条(禁止事項)

利用者は以下の行為を行ってはならない。

  1. 本ガイドラインの全部又は一部を、TCSAの許諾なく第三者に譲渡・販売・又は再配布すること。
  2. 本ガイドラインの内容を改変し、TCSAの著作物として流布すること。
  3. TCSAの名称又は本ガイドラインの名称を利用して、TCSAの承認を受けていない製品又はサービスを宣伝すること。
第4条(利用届の届出料)

利用届の届出料は無料とする。ただし、個別のコンサルティング・セミナー・出張指導・ガイドライン適合業者認定業務等については、別途TCSAが定める料金を適用する。

第5条(利用登録の有効期間)

利用登録の有効期間は、登録日から翌年度の3月末日までとする。

2 利用者は、毎年度末に改訂内容を確認することにより、登録を更新することができる。

第6条(改訂への対応)

TCSAは本ガイドラインを必要に応じて改訂する。主な改訂は年度末(3月末日)とする。登録利用者はその都度改訂内容を確認する。

2 利用者は、合理的な期間内に改訂版への移行に努めるものとする。

第7条(利用者名称の公表)

利用登録された団体・企業の名称は、このホームページ内で公表することができる。

第8条(登録の取消し)

TCSAは、利用者が第3条の禁止事項に違反した場合、利用登録を取り消すことができる。

Submit

利用届の提出

下記のとおり、ガイドラインの利用届を提出いただけます。送信内容を確認後、メールソフトからTCSA事務局(tcsa-dendro@outlook.com)宛に送信されます。

入力ありがとうございます

下記のボタンからメールソフトを開いて、TCSA事務局宛に送信いただけます。受理後、担当者より受理通知・利用証についてご連絡いたします。

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提出先・お問い合わせ

Email
tcsa-dendro@outlook.com
Tel
0577-33-0361

届出料は無料です。記入用の様式(Word/PDF)での提出をご希望の場合も、上記までお問い合わせください。

Contact

お問い合わせ

ガイドラインの導入、コンサルティング、セミナーなど、どんなことでもお気軽にご相談ください。内容を確認のうえ、担当者よりご連絡いたします。

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岐阜県高山市 地内
受付
平日 9:00 – 17:00